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邪魔なんだけど

「おい」


 華奈の後ろを歩きながら翔にだけ聞こえるような小声で和也は話しかけた。


「神隠しの意味がわかってなくても、この状況の悪さはわかってるよな?」

「ああ」


 神妙な顔で翔も小声で返答する。


「最近起きている行方不明事件となんか関係ありそうだって事だろ」

「そうだ、俺達の取り越し苦労ならいいんだけど、可能性がゼロって訳じゃない。とりあえず俺たちも探して見つからなかったら、あまり意味がないかもしれないが警察に連絡するぞ」


 和也は自分の考えを小さく呟く。

 最近この村では主に子供の行方不明者が続出している。

 今までも数年に1度あるかないかで、神霊を信じる住人達によって"神隠し"とされてきた。「神隠しにあってしまったなら仕方がない」なんて片付けられる。

 そして、ほとんどの住人が今回もそうだろうと半ば諦めていた。


 それが和也には信じられなかった。

 子ども達の家族でさえ、自然災害のようなものだからと悲しみながらも片付けてしまっている事に。

 そして翔も同じ思いだった。


「お兄ちゃん達、ここだよ」


 2人して考え事に集中していて、少女の言葉にはっとしたように周りを見た。

 人通りが少なく、横には青々と茂った森がそれぞれ広がっている。

 それこそ人1人いなくなってもわからないような……。

 どこか不気味な雰囲気を醸し出していて、自ら進んで近づきたいとは思えない。


「なんでこんな怪しいところに来たんだ?」


 もっともと言える疑問を翔は聞く。

 華奈はビクッと一瞬肩を揺らした。


「……もうすぐ、ひろ姉の誕生日だからひのと2人で秘密でバレないようにプレゼント作っていたの」


 怒られたと思い、声を震わせながらも説明を続けようと、必死に涙を堪えている。

 拙いながらも話を続けようとする華奈の頭を和也が優しく撫でる。 


「うん。だいたいわかったよ。かなちゃん達は……」


 その続きを口にした瞬間、強風が吹き荒れ、和也の言葉は2人の耳には届かなかった。

 そして3人の前に1人の人物が立っていた。


「君達、邪魔なんだけど?」


 長い黒髪を風に靡かせながら無表情で3人を見ている。しかし瞳は不機嫌さを隠そうともしていない。


「……は?」


 いきなり現れた少女に翔は間抜けな声を出した。和也と華奈も首を傾げている。

 確かに道は狭いが、通ろうと思えば通れる幅は空いている。だから少女の言葉に戸惑いを隠せない。

 数秒間、微妙な気まずい空気が流れる。その空気を破ったのは原因の少女だった。


「聞こえなかった?僕は邪魔って言ったんだけど。とっととどっかに行ってくんない?」


 そんな暴言をサラッと言って、早くどっか行けと全身で訴えている。


「ふ……ふざけんな!!っんで俺がお前の言う事を聞かないといけねぇーんだよ。俺らは人を探してんだ。どっか行くんならお前がいけよ!!」

「は?何言ってんの。意味わかんないんだけど。僕はここに用があるの。そして、その用に君らは邪魔」


 3人の意見を全く聞き入れるつもりはないと少女は言外に告げている。

 少女は不意に森の方へ視線を動かし、ため息をついた。


「はぁー、わかった。君らの勝手にすれば良いよ。めんどいし……。ただ一応忠告しとくよ。ここにはしばらく近づくな。好奇心で関わるな、死ぬぞ」


 少女は低い声でそう言うと、森の中へと消えていった。

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