髪か櫛?
「で?」
仁王立ちをする和也に、翔は無意識に1歩後ろに後ずさった。
少女の手を引き、校門まで行くとすでに和也はそこで待っていたが、翔と一緒に歩いている涙目の少女に気付き目を丸くした。
和也にカバンを渡しながら、今に至るまでの経緯を話し始めた。そして話を全て聞き終え、話は冒頭に至る。
「いや、助けてあげたいの思ってさ」
「それは、いい。俺が聞きたいのはその先だ」
「だよなー」
苦笑しながらふざけたように言うが、和也にギロリの睨まれ、乾いた笑いに変わる。
「あはは、いやぁー、カズにも手伝ってほしいなぁーって……」
「はぁーー」
翔の言葉を聞いて、和也は大きくため息をつき、「やっぱり……」と小さく呟き頭を押さえる。
確かに、翔1人に任せるのはとてつもなく不安だ。
というか今までの経験上、嫌な予感以外しない。
「とりあえずお前の説明だけじゃ意味がわからん」
そう言って翔の背中に隠れている少女に目線を合わせる為、屈んで柔和な微笑みを浮かべながら口を開いた。
「はじめまして。俺、藤原和也って言うんだ。君の名前を聞いてもいいかな?」
「……かな。牧野華奈」
「かなちゃんか。よろしくね」
「……うん」
少し落ち着いてきた華奈は赤く腫れた目で和也を見る。
「でさ、かなちゃん。さっきこのお兄さんに話した事を僕にも話してもらっていいかな?」
このお兄さんと翔を指でさしながら、華奈を安心させる為にやわらかい声で尋ねる。
華奈は翔の背中から出てきて、和也の前に立った。
「うん。……今日ね、ひのと森の方で遊んでたの。でね、かなの帽子が風に飛ばされちゃって、帽子を追っかけたの。ひのは待ってるって言ったのに戻ったらひの、いなくなってたの。家にも帰ってないって!!どーしよう。ひろ姉が最近この辺りで"かみかくし"?が起きてるから気をつけてって言ってたのに……。ひの、消えちゃった……」
また思い出したのか、後半は涙ぐみながらも、泣くのを堪えて教えてくれた。
(……神隠しねぇ)
華奈の言葉に和也は「うーん」と唸った。
この田舎町ーー葦原村はある意味で神霊地として有名だった。いや、正確には霊的な不確かなものをほとんどの住民が信じていた。そういう霊的なものを否定する住人の方がこの村には少ない。
その数少ない1人である和也は"神隠し"という単語に引っかかりを感じながらも、今はそれを心の奥へと押し込める。
「髪か櫛?お前の友達がいなくなったのと関係あるのか!?」
「……ごめん、翔。お前は少し黙ってろ。お前の勘違いを正すような余裕はないから」
変な事というか頓珍漢な事を言い出した翔を軽く睨みつけて黙らせる。
「ねぇ、かなちゃん。友達と最後に居た場所に僕らを案内してくれないかな?」
「……うん。お兄ちゃん、ひのは見つかる?」
小さく呟くと華奈は2人を見上げながら不安そうに尋ねる。
「おう、俺達に任せときな!!」
そう自信満々に答えたのは、和也ではなく翔だった。
華奈の頭をポンポンと優しく触り、人懐っこい笑みを浮かべる。
今度は和也も文句は言わずに翔に続く。
「大丈夫だから、安心しよ?」
2人の言葉に華奈の瞳から不安が少しだけ取り除かれた。
そして、華奈の後ろを2人で並んでついていった。




