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 約10分後。


 アンケート集計を終えた和也が担任に結果を書いたプリントを渡しに職員室に行くのを見送り、翔は自分と和也のカバンを持って教室を出る。

 そして、のんびりと歩きながら昇降口に向かっていた。

 特に何事もなく階段に差し掛かった時、翔はなんとなく窓から外を見た。


「……?」


 外の景色は校舎のはずれということもあり、軽く雑木林のようになっている。

 そこはいつもと変わらなかった。

 その雑木林でも特に大きな木の下にしゃがみ込んでいる子どもさえいなければ……。

 その子どもを見て嫌な胸騒ぎを感じ、翔は階段を駆け降りた。


 階段を降り終わると、廊下を走って昇降口に向かう。靴を素早く履き替え、校内のはずれへと全力疾走した。

 軽く息を切らしながらも、先程窓から見下ろした場所に着き、肩で息をしながら周りを見渡す。


(……いた)


 すぐに少女を見つけ、駆け寄った。 


「どうしたんだ?」


 木の幹に背を向けてしゃがみ込んでいる少女の前に行くと、翔は少女の目の高さになるように屈んで少女の顔を正面から覗き込む。


「……ひくっ」


 目を服の袖で擦りながらまだ6歳ぐらいの少女が顔を上げた。

 そして優しい笑みを浮かべている翔を見て、翔舞は大きな瞳からぼろぼろと涙をこぼす。


「……ひくっ……、うっ……おにーちゃん、……うぐっ……助けて……ひくっ……て」


 涙を堪えようと頑張りながら翔にしがみつく。


「……?……どうしたんだ?」


 少女の必死さに翔は安心させるように微笑み、優しい声で問いかけ、少女の話に耳を傾ける。


(なんか、やばそうだ)


 頭の中で、危機的本能が関わらない方がいいと警鐘を鳴らすが、翔はあえて無視する事にした。

 泣いている少女ーしかも助けまで求めているーを見捨てるなんて非情な事はしたくなかったから。


 人としては絶対やってはいけない事だと彼は考えていたからだ。

 だから嫌な予感を心の奥に押し込めて、少年は少女に向き合う。


「俺で良かったら手伝うよ。だから、説明してくれ、な?」


 少女の頭をよしよしと撫でる。

 そして、自分と和也のカバンを片手で持って開いた方の手を少女に差し出す。


「詳しい話は歩きながらしようか?ごめんな、人を多分待たせているんだ」


 職員室に行った和也がそろそろ昇降口に着く頃だろうと思いそう言うと、少女は少しだけ迷ったように雑木林の方をチラリと見た後、こくりと小さく頷き、翔の手を掴んだ。

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