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第44話 再捜索開始

 教室の後方で、朔夜達は酒呑童子から天邪鬼の話を聞いていた。全員で円になるように立った状態での情報交換だ。

 朔夜の左右にそれぞれ酒呑童子とコウが、酒呑童子の反対の隣に、ゆう、翔という順番だ。

 翔は少しだけ居心地の悪さを覚える。そして、予想通り話している内容のほとんどが理解できなかった。


『千年前のあいつか!?』


 隣でゆうが目を見開いている。どうやら、ゆうとも因縁があるようだ。酒呑童子は頷く。


「ああ、本人がそう言っていた。千年前の恨みを晴らすために、朔夜を、管理人を狙ったようだ。逃走時は千年前の管理人の姿だった」

「千年前っていうと……道実(みちざね)か!」

『ああ、そういやコウも会ったことがあったか。しかし、よく覚えてたな』

「いや、あいつ隠世にかなり入り浸ってただろ。知らないやつの方が少ねぇんじゃねぇか?」


 少し懐かしむようにゆうとコウが話す。


「そうだな、俺もそれで顔は知ってた。変な人間が管理人になったもんだとな。興味を持つまではいかなかったがな」


 酒呑童子はそう言いながら、朔夜を見る。彼女は何かを考えるように俯いている。

 そんな朔夜を気にせずに、酒呑童子は朔夜の肩を組んだ。


「そうだ、朔夜。白澤からのプレゼントだ」


 酒呑童子は懐から小さなポーチを取り出して、朔夜に渡す。朔夜は受け取るとすぐに中身の確認をしていた。そして、首を傾げる。


「ねぇ、天童。この腕輪は?」

「ああ、それはゆう用だそうだ」

『おっ、頼んでたのは間に合ったか。後で使うからさや、持ってて』

「わかったけど、何に使うの?」


 朔夜がゆうを訝しげに見る。ゆうは笑って指を立てる。何かを企んでいるような笑顔に翔は嫌な予感を感じる。


『ちょっとなー。最初は保険のつもりだったけど、天邪鬼が千年前と同一個体だとわかったなら話は別だ。これは俺の因縁でもあるからな』


 いつもと同じような話し方、笑顔だ。しかし、何か違和感を翔は覚えた。どこか瞳の奥にドス黒いものを感じた気がした。

 だが、確信は持てない。話が横道に逸れてる気はしたが、翔は会話に入らずに見守る事にした。


 自分には何が出来るかと考えながら、ぼんやりと4人を見つめる。千年前の話が出てきてから、翔は話がさらにわからなくなった。とりあえず、真面目な顔をしてわかったフリをすることしか今の翔には出来ないのだから。


「嫌な予感がするんだけど?」


 朔夜が嫌そうな顔でゆうを見るもすぐに諦めたように目を伏せた。


「とりあえず、今は天邪鬼が優先。過去の因縁もあるかもしれないけど、それは全て余計なことだから」


 朔夜はそういうと、酒呑童子とコウを見た。そして、少し考えてからゆうも見る。翔のことは見ようともせず、少し寂しい気持ちになった。


「狙いが管理人なら僕を囮にするのが1番だ。あとはこれからどう動くか、過去を懐かしむのは後回し。僕にとって重要なのは境界の安寧。それを阻もうとする天邪鬼をどうにかすること。過去も因縁も関係ない」


 朔夜はブレずにただ淡々と事実だけを告げる。ゆう、コウ、酒呑童子の3人は朔夜から一斉に視線を逸らした。

 全員脱線させてた自覚はあったんだと翔は少しだけ呆れた。


『あっ、さや。少しだけコウ借りて別行動してもいいか?』


 今後の方針を話し合おうとした瞬間、ゆうが口を開いた。


「なにするの?」

『それは、秘密! あっ、久遠から預かった腕輪だけど、コウに預けてもらってもいいか?』

「おい、勝手に話を進めてるんじゃねぇよ」

「だから、なにするの?」


 ゆうに朔夜とコウが詰め寄る。しかし、ゆうは気にする様子もなく、頭の後ろで腕組みをして宙を浮く。

 さっき、朔夜が締めた空気が一瞬で緩んだ。


「ほぉ、俺が行ってもいいぞ? 神獣より役に立つと思うぜ?」


 楽しそうに酒呑童子が参戦する。翔はまた話が脱線するんじゃないかとハラハラする。しかし、下手に口を挟めない。翔は変わらずに状況を見守ることしかできず、思わず朔夜を見る。

 朔夜は面倒そうな顔を隠しもせずに、3人を見ていた。


 そして、徐に先ほど酒呑童子から預かったポーチの中を探り、1枚のお札を取り出した。


「ねぇ、揉めて仲間割れとか1番面倒だから、それ以上騒ぐなら、誰か1人をこの騒動が落ち着くまで封印するよ?」


 お札をちらつかせながら当たり前のように幽霊、神獣、鬼を脅しにかかる。朔夜って実はかなり短気なのか? そして怖いもの知らずかと翔は初めて少し恐ろしく感じた。


「おいおい、落ち着けって、朔夜。面倒だからって安易に封印って」

『俺が悪かったから、ごめんなさい』


 朔夜の脅しに酒呑童子とゆうがすぐに下手にでる。コウだけはめんどくさそうにため息をついていた。そして、コウはゆうを見る。


「何を企んでやがる?」

『……おい、お前も謝れよ! それに俺は何も企んでないぞ』


 なんとも言えない表情で朔夜はそれを眺めている。


「もういい、このやり取りが時間の無駄。とりあえず、コウ。僕も不服だけどゆうと一緒に行動して」


 朔夜は諦めたようにため息をつくと、コウに腕輪を手渡しした。二人とも不服そうなのが顔に書いてある。

 意外とこの二人は似たもの同士なのか? と翔は考えた。


 そして、朔夜と翔と酒呑童子、ゆうとコウの二手に別れて行動する事になった。

 5人は教室を出た。そして、朔夜達は天邪鬼の逃げた外へ、ゆう達は何故か体育館へ向かうとのことで、一緒に1階に降りてから別れる。


 翔は拳銃を握りしめて朔夜と酒呑童子の後を追った。

 


 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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