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第33話 異変

 翌日、翔は今日の放課後にもう一度久遠の空間に行き、道具を頼む事にした。学校に登校するとすでに朔夜が登校していた。


「よっ、チカおはよう」

「……おはようございます」


 いつものように嫌そうな顔はするがちゃんと挨拶を返してくれる。だから翔は朔夜を素直じゃないクラスメイトの枠の中に入れていた。しかし、今日の朔夜はいつもと違って覇気がない気がする。心配になり、いつもは挨拶だけで終わるが、声をかけてみる。


「なんか元気ないけど大丈夫か? 昨日あの後なんかあったのか?」

「付き合いの短い君でさえ、元気なく見えてるんですか……」


 心配したら何故か肩を落として落ち込まれた。翔は意味がわからなかった。首を捻りながらさらに声をかけようとすると、ガバッと後ろから誰かが肩に腕を回してきた。


「翔、不知火さんが困ってるだろ、やめなさい」

「ただ、挨拶して心配しただけじゃねーか!」


 和也はそう言って、抗議する翔を無視して先まで引きずっていく。そして朔夜から十分距離ができたかを確認すると翔の頭に拳骨を落とす。


「ーーっ!! 何すんだよ、カズ!!」


 突然の痛みに、翔は涙目で頭を抑えながら叫ぶ。


「お前は毎日毎日不知火さんに迷惑かけて!」

「迷惑かけてねぇぞ!?」

「迷惑がってるの見りゃわかんだろう!」


 抗議する和也に翔は反論するも正論で和也に殴られる。何を言っても怒られる未来しか見えなくて、翔は諦めた。

 内心では納得していないが、とりあえず席に着く。


 そして、チラリと朔夜の方を盗み見る。毎日朝の挨拶などで絡みまくっているおかげで、ある程度無表情の中にも微かに感情が読み取れるようになっていた。

 だから気になった。明らかに顔色が少し悪かった。何かあったのは明確だ。しかし、また近づいても和也に物理的に離されるだけだ。

 後ろ髪を引かれる思いで、翔は休み時間の間、何度もチラチラと朔夜を確認した。


『どうした? チラチラと見て気があるのか?』


 揶揄うようなゆうの声は無視しながら、翔は和也の目を盗んで朔夜に話しかけようと決意した。


 そして、放課後になる。

 翔は、和也が教師に呼ばれて教室を出たタイミングで、今だ! と朔夜の席に向かう。

 朔夜はすでに帰り支度をしていた。


「チカ!」

「……何?」


 教室から出ようとした朔夜は不機嫌そうな顔で翔を見た。少し急いでいる様子があり、悪かったなと思う。しかし、やはり顔色がいつもより若干悪い。用事があるにしても今日は大人しく帰った方がいいように思える。


「顔色悪いけど、大丈夫か?」

「別に大丈夫だけど、何?」


 不機嫌オーラ全開で朔夜は返してくるが翔は気にしない。何か話そうとした瞬間、視界が一瞬ホワイトアウトした。


「はっ?」

「えっ?」


 すぐに視界は戻るがどこか赤みがかって見える。窓の外を覗くと空の色が赤い。まだ日が沈むまで時間はある。さらに先ほどまでは青空が確かに広がっていた。そして空の色は夕日よりもどす黒い赤だ。

 翔と朔夜が同時に驚きの声を上げる。教室に残っていた生徒も突然の異変に少しパニックになってる。


 朔夜が窓際に走って行った。気になり、翔も後に続く。そして、窓の外を見て驚く。

 外は赤黒く染まっている。そして校門から先、道や森が見えるはずなのに何もない。まるで学校だけ空間が切り取られてしまったようだ。


「……まさか、天邪鬼?」


 隣にいた朔夜が驚愕したように呟き、どこかに向かって走り出した。


「待て、チカ! 1人で行動するのは危険だ!」


 翔はそう叫ぶと朔夜の後に続く。


『ちょっ、お前ら待ってって』


 走り出す翔の耳に普段と違い焦った様子のゆうの声が追いかけてきた。ゆうがきてるなら何とかなると翔は思った。

 そして後は何も考えずに朔夜を追いかける。朔夜はそのまま、一つの空き教室に入っていくのが見えた。

 翔も続いて教室にはいる。そして、目を見開く。

 そこにいたのはーー。




♢♢♢♢




 朔夜はいつもの空き教室に向かい走りながら、焦っていた。突然の世界の一変。境界にいるような感覚に、何かの空間に学校ごと引きづり込まれたのを感じた。


(コウ! リン! 聞こえる!? )


 朔夜は念話でコウ達に話しかける。外界と完全に隔離されているか確かめたかった。


《聞こえています、主様》

《聞こえている。何があった。近くで見てたが急に学校が何かの空間に引き込まれたみてぇだが》


 すぐに朔夜の脳内に返答がある。異変はコウ達も気づいているようだ。


(なんとなく、天邪鬼なんじゃないかと思う。学校の敷地内には入れる? )


《今、入った。いつもの教室に行けばいいのか? 》

《主様、中には入れるようですが、外には出れないようです》


 コウ達が敷地内に入れた事にまず安心するが、外に出れないという新たな情報に焦る。出られないという事は生徒達を逃すことができない。考えながらも、コウに返事をする。


(状況の共有をしたい。来れるなら来て、僕はもう着く)


《わかった》

《わかりました》


 とりあえずコウ達との合流を目指し、朔夜はいつもの空き教室に入ると迷わずに眼鏡を外し、他に異変がないか確認しながら窓を開ける。

 神獣の姿の2匹が教室に飛び込んできて人型をとる。


「状況は!?」

「わからない」

 

 コウと情報共有しようとしたその時に、後ろから声が聞こえた。


「は? チカ……? ってかあのいけすかねぇ女!?」


 空き教室の入り口には唖然とした表情の翔とあちゃーと頭を抑えているゆうがいた。


 


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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