第27話 幽霊の存在を証明したい奴がいるんだ!
数学準備室に着くと、鳴海は翔が中に入ったのを確認して扉を閉めた。そして、机の前の椅子に座るよに翔に促す。
普段と雰囲気が違う鳴海に戸惑いながらも翔は椅子に座る。すると向かいの席に乱暴に鳴海が座った。
「確かにお前の言うとおり、俺は狭霧神社の管理している一族の人間だ」
鳴海はそう前置きする。そして、少し悩む素振りを見せてから口を開く。
「その本以外も見たのか? どこまで知ってる」
「図書館にある古本は結構読んだぜ。狭霧神社が祀っているのが某陰陽師の魂のカケラだとか、そのカケラが幽霊になってるとか……」
「あー、そこを知っているってことは隠世と現世の境界の事も知ってるか? そこの管理人の話は?」
鳴海が矢継ぎ早に聞いてくる。翔は文献の内容を思い出しながら頷いた。
「現世と隠世の間には境界があって2つの世界は隣り合わせだけどお互いにわからないようにしてるって話だよな? この村はその狭間がすこし曖昧になりやすくて神社ができたって。それで霊の見える人間が管理人になったみたいなのを読んだ」
「そうか」
翔の言葉を聞き、また鳴海は考える素振りを見せた。そして真剣な表情で口を開く。
「その内容は他言無用で頼む。隠世の存在を知っているものは隠世の隠匿に協力しないといけない。隠世と現世は本来交わらないものだ」
「でも、幽霊はいるぞ」
「そうだな、俺も道具を使って見たことあるから知っている」
鳴海の言葉に翔は耳を疑った。今、幽霊を見る道具があると言わなかったか? 翔は勢いよく立ち上がり言う。
「幽霊の存在を証明したい奴がいる! その道具貸してくれないか!?」
「……稲荷、俺の話聞いてたか? 隠世の存在は秘匿する、喋んなっていってんだよ」
鳴海は普段のやる気のなさが嘘のように怒鳴る。普段怒らない人が怒ると怖い。翔はビクッと肩を跳ねさせた。しかし、いい事を聞いたと内心でガッツポーズした。
後で久遠のところに行き、相談しよう。久遠は道具を作っていると言っていた。全く鳴海の言葉が響いてない事を考える。
「なんで、隠匿の必要があるんだ? この村、そういう存在信じている人多いだろ?」
しかし新たな疑問が生まれた為、翔は尋ねる。
「はぁ、多いからだよ。言霊って言うだろ? 信じてる人が普通に言ってみろよ。言霊の影響で隠世と現世のバランスが崩れる可能性がある。だから昔は霊が見える人が多かったんだ」
ため息を吐きながら鳴海が答える。そこには普段のやる気のないめんどくさがりの教師の姿はどこにもない。
「でも、昔例の存在が信じられていたのは科学が進歩していなかったからだろ?」
「それもある。でも、お前は霊はいると確信を持ってる。理由は?」
「……信じられないかもしれないけど、少し前に突然霊に取り憑かれて、幽霊が見えるようになった」
翔は真剣な表情で伝える。霊を見る道具を使って見たと言っていた。鳴海もきっと隠世に片足を突っ込んだ側の人間だと翔の直感は告げる。
「そうか……。それは大変だったな」
鳴海はこの数学準備室に来て初めて優しい表情を見せた。そして続ける。
「なんか悩みがあるか? 俺の祖父が霊が見える人だ。良かったら一度会ってみるか」
「俺以外にもこの村に見える奴がいるのか!?」
「ああ、俺が知ってるのは俺の祖父と……現在の境界の管理人だ」
鳴海は少し迷ったような顔をしてから一つの役職名を口にした。
「境界の管理人……あっ、文献に書いてあった!」
「そうだ。俺達鳴海の一族は、昔から現世を管轄している。霊障とか、神隠しとかの解決や場合によっては隠蔽を」
鳴海は瞳にほのかに薄暗い光を宿した。しかし、すぐにその光は消える。そして続ける。
「そして隠世側を管轄しているのが境界の管理人。隠世と境界の安寧の為に動いている……俺から言わせれば人柱だな」
「……人柱?」
予想外の言葉に翔は首を傾げる。鳴海は少し考えてから頷く。
「現世よりも隠世に重きを置く、それは現世の関係を希薄にする。人生の全てを隠世と境界に捧げる事を定められている。これを俺は人柱以外に表す言葉を知らない」
その言葉には悔しさややるせ無さが篭っていた。現在の境界の管理人は知り合いなのかな? と思いながらも翔の第一目標は変わらない。
あのいけすかない男装した女に幽霊の存在を証明してギャフンと言わせる。
その為に、まず久遠に会う必要がある。翔は静かに次の動きを決めた。
「わかったよ、ナル先生! ナル先生が神社の関係者だって事も伝えないほうがいい?」
「ああ、神社の跡取りってバレたらもっと真面目にやれって怒られるだろ」
「跡取りなのか!?」
それからは穏やかに少し世間話をして解散となった。鳴海が最後に祖父に繋ごうかと提案してきたが、今度でいいと翔は断る。幽霊の存在を証明してから、あの女を連れて話を聞きに行こう。そう決意していた。
「話色々ありがとな、また明日」
「おおー、気をつけて帰れよ」
鳴海に挨拶をして、翔は数学準備室を後にし、教室に鞄をとりに行った。
♢♢♢♢
朔夜は無人の教室で日誌を書きながらも、気が気でなかった。鳴海は翔に何を話すのだろうか? 自分に害はないだろうか? 考え出すとキリがない。
ちらりと翔の席を確認するとまだ鞄が置いてある。あいつが帰ったら鳴海に話を聞きに行こうと、なんとか日誌の記入に集中する。
少しすると、教室の扉が開いた。
「あれ? チカまだ帰ってなかったのか」
その声にため息が自然と溢れる。日誌を書く手を止めて視線を上げる。
「何度も言ってますが、私は不知火です。チカじゃありません」
「別にあだ名でいいだろっていってるだろ、細かいな」
「名前は細かくありません。それに私はあなたと仲良くする気はないです」
「クラスメイトなんだし」
「私はクラスメイトとも関わる気はありません」
これ以上翔と話したくなく、朔夜は日誌を書き殴るように書き終えると立ち上がる。
「それでは私はこれで」
そのまま朔夜は翔の方を振り向かずに教室から出て、鳴海がいると思われる数学準備室に向かった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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