第25話 狭霧神社の御神体?
翔はゆうを引き連れ、この村唯一の図書館に来ていた。
最後に図書館に来たのはいつだったっけ? と思いながら翔は図書館内を歩き、伝承について置いてありそうな棚を探すがなかなか見つからない。
おかしいなと思っていると隣を歩いていたゆうが声をかける。
『少年、伝承について調べるならこっちだ』
ゆうはそういうと翔の前を歩き出した。翔は少し考えて後に続く。
『本は触れないんだけど、好きでさ。ここができた時からよく通ってたんだよなー』
ゆうは楽しそうにそう言いながら、奥の方にある一つの棚へと近づく。そして翔の方を見て笑った。
『ここだぞ、少年』
笑いながらゆうは郷土史の棚の前に立っている。その姿に何故か不気味な物を一瞬感じる。しかし、すぐにゆうだぞと不安を消し去る。
翔は郷土史の棚を見る。流石、信心深い村人が多い場所だとまずは思った。かなりの数の古本が置いてある。
神隠しについてや狭霧神社に関しての本も多数あった。
『古書は少し丁寧に扱えよ、少年』
ゆうが楽しそうに翔の肩越しから話しかけてくる。
とりあえず、狭霧神社についての本をなんとなく開いてみる。
そこには狭霧神社の成り立ちについて書かれていた。
何かヒントになるかもしれないと本を持ち、近くの読書用の椅子に座る。そして本を開き読み始めた。
≪葦原村は昔より神隠しが多く起こった。平安時代の中期に高名な陰陽師が占いのもとこの村を訪れた。その陰陽師は言った。この地は隠世と現世の境界が曖昧になってしまっていると。陰陽師の指示のもと、占い結果で出た方角の山の中腹に神社を建設する。そして、陰陽師から自分の力と魂の一部を込めたお札を授けられた。御神体としてそれを神社に祀る。神社の保護を当時力を持っていた鳴海の一族が、そして境界の管理をする役職に陰陽師が見出した霊感のある少年が選ばれた。陰陽師は言った。隠世の住人は女を攫う傾向にある。管理する者になる場合はかならず男装し、バレないようにするようにと。そして陰陽師は村を去った。以降は神隠しの起こる回数が減り、村人は感謝し、この神社を二つの世界の間として狭霧神社と命名した≫
本に書いてある事を要約するとそんなようなことが書かれていた。翔は以前久遠が言っていたゆうが陰陽師の魂の一部という事を思い出し、首を傾げる。そして小声でゆうに尋ねる。
「なあ、この高名な陰陽師ってのがお前か?」
『ん? そうだぞー。なんか高名って言われると照れるなー』
全く緊張感のない様子のゆうにイラッとする。しかし、ここは図書館だ。大声を出すわけにはいかない。周りを見回して近くに人がいない事を確かめると再度小声で尋ねる。
「という事は、狭霧神社の御神体?」
『おう、本体が死んで幽霊化しちまってるけどな。あと力は札に残ってるから俺は|知識しかないただの幽霊だ』
笑いながらゆうが答える。あまりにも衝撃的な事実に翔は固まった。何千年前とか冗談で言っていると思ってたし、ゆうはこの村の先祖だと思っていた。それが外部から来た者で、この村に縛られてしまっている。思わず可哀想な物を見る目でゆうを見てしまう。それに気づいたゆうが笑いながら翔の頭の上に手を乗せようとする。しかし、霊体であるゆうの手は翔の頭をすり抜ける。
実証して、ゆうが翔に取り憑く意思がある時のみ、翔に取り憑くことができ、それ以外ではゆうは触れることが出来ない。少し悲しそうな顔をしてから、すぐにいつもの軽快な笑顔を作っていた。
『そう憐れむなよ、少年。こう見えて、その本に書かれていた境界の管理人を歴代選んでいるのは俺だからな。そいつらは俺が見えるから今の少年と話すみたいに話せるし、隠世の住人とも仲がいい。同じく長生きの久遠とは茶飲み友達だ。久遠の空間は俺でも飲み食い出来るからな。人生ってか幽生か? 俺は楽しんでるよ』
慰めるようなゆうの言葉に翔は目頭が熱くなるのを感じた。どうしたらそんなに達観できるのだろうか。長生きしているからか? 翔は今まで考えていなかったゆうについてもう少し考えようと思った。
そこまで思ってあれ? と思った。
「……なぁ、お前が俺に入ったのは落ちそうになってるあの女を助けようとしたからだよな?」
『ん? そうだけどどうかしたか?』
「見えている奴には、俺みたいについていたって言ってたよな?」
『そうだけど、どうした?』
不思議そうなゆうを横目に翔は考える。なんであの女の近くにゆうがいたのか。ゆうは今まで管理人の近くにいた。そして管理人は霊が見える。ということは、と考え翔は危うく大声を出しそうになった。
「なぁ、実はあいつ幽霊見えてるのを見えてないふりしてるんじゃねぇか?」
『おっ、珍しくするどっ……じゃなくて、どーだろうな? 俺からはなんとも言えないなぁ』
「いや、答え言ってるだろう」
という事はと翔は考える。見えていない奴に幽霊の存在を証明するのではない、見える奴に見える事を認めさせるのだ。
少し翔は朔夜をギャフンと言わせる自信がついた。やってやると思いながら立ち上がる。
「そういや、狭霧神社は鳴海の一族が管理って書いてあったな。ナル先生関係あるのか月曜学校で聞いてみるか」
独り言を呟きながら、翔はさらに情報を得るため、他の本を探すために本棚へと戻る。
その後ろをゆうは笑いながらついていった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!




