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第24話 なんでこのタイミングでそれを言うんだよ!

 翔は朔夜を指さしながら叫ぶ。心底嫌そうな顔をする彼女に親近感を覚えながらも、朔夜に近づく。


「ここであったが、100年目だ! 見ろ! ここに幽霊がいるぞ!」


 翔はそう言ってゆうを指差す。朔夜は呆れたようにその様子を見てため息を吐く。


「何言ってんの? 何もいないんだけど」


 ゆうのいる方向を見ながらも朔夜はそんな事を言う。翔は「くそぅ」と呟く。自分も数日前までは見えていなかったのだからその反応はわかる。しかし、ここに確実に幽霊がいるのだ。翔は悔しい気持ちに支配される。


「まだ白昼夢でも見てるわけ? そもそもここになんのようできた。神社とか君と縁ないだろ」

「うるせぇ!! 神主さんなら幽霊見えるかもしれないだろ! そこからお前に証明する方法を考えるんだよっ!!」

「僕に証明? バカじゃないの? 僕は君を信じる気はないよ」


 翔の言葉をバカにするように返す朔夜に「ぐぬぬ」と翔は唸る。本当に気に食わない女だ。しかし、幽霊は確実にいる。自分が見えて会話しているのだ。しかし、見えない人間に証明するのは難しい。俺と同じように取り憑かせたらいけるか? という考えは初日にゆうにより無理だと断言されている。

 朔夜を睨みながらも翔は考える。どうしたらこの女をギャフンと言わせられるのかと。


「バカってなんだ! お前俺のこと知らないだろ!」

「人の忠告は無視する、白昼夢を幽霊が見えると騒ぐ、それをバカ以外になんで言えばいいんだ?」


 心底不思議そうに言う朔夜に翔はイライラと苛立ちが募るのを感じた。俺は白昼夢は見ていないと怒鳴ろうとした時に、ふと気づいた。何故こいつはあの日、あの森が危険だって知っていたんだ? 死ぬぞと忠告してこなかったか? 翔の中でわ疑問がどんどん湧いてくる。

 そして翔は気になったらすぐに確認する性格だ。


「なんで、あの日あそこにいたら死ぬって忠告したんだ? 確かにあそこにはなんかやばいのいたけど、お前は見えないんだよな?」


 翔の言葉に初めて朔夜の言葉は詰まった。考え込むように下を向く。またゆうが爆笑している声が頭上より聞こえてくる。

 確認すると宙返りをしながら腹を抱えて笑っている。


『いやぁ、少年。その返しサイコー』


 ゆうの言っている意味はわからないが朔夜を困らせる発言をした事に少し優越感を覚えた。しかし、それはすぐに崩される。


「なんでって、あの辺りで神隠しが最近起きていただろ? 今回の神隠しの行方不明者は見つかったが、見つからなかった場合は死の可能性が高い」

「へぇー、幽霊は信じていないのに神隠しは信じてんだ」

「この村の住民なら数十年に一度行方不明者が続出する事は有名だろ。みんな神隠しって呼んでるんだからその名称で呼んで何が悪い。僕に言わせれば君みたいな馬鹿が迷子になって運悪く森から出られなくなったのがその話の真実だと思うけど」

「なんだと!!」


 確かに翔は森で朔夜に会った時は迷子になっていた。しかし、その言い方はあんまりだ。必死に迷子を探していたのにとミイラ取りがミイラになっている事に気づいていない翔は激怒する。


「事実だろ? あの森は昔迷いの森と言われていたらしい。気 木が茂ってるから慣れていないと迷いやすい」

「お前は慣れてるってのかよ」

「小さい頃からこの神社に世話になってるからね、森は僕の庭みたいなものだ」


 朔夜はどうでもよさそうに吐き捨てる。その様子から翔との会話を早く終わらせたいと言う気持ちがありありと伝わってきた。翔はその態度に腹を立てる。しかし言い返そうとする前に頭上でゆうが納得したように頷いた。


『確かに迷いの森って言われていたな。昔は伝承とかで危険を伝えていたが、現代に近づくにつれ薄れていったのか。興味深い。少年、興味あればこの村の伝承を調べてみるのも面白いぞ』

「このタイミングでなんでそれを言うんだよ!!」


 思わずゆうに怒鳴り返す。そして慌てて朔夜の方を見ると、引いたような瞳で翔を見ていた。


「何もいないところに怒鳴るなんて頭イカれてるの? 病院いけば?」

「だから、ここに幽霊がいるって言ってんだろ!! 今そいつと喋っていただけだ」

「……幻覚と幻聴は流石にまずいんじゃない?」

「幻覚でも、幻聴でもない!! お前と話してるとムカつくな! もういい、帰る」


 翔は頭に血が上り神社に来た本来の目的も忘れ神社の境内を後にする。


『おーい、少年待ってくれよー』


 後ろからゆうが宙を浮きながらついてくる。誰のせいでこうなった! と怒鳴りたい気持ちを抑えながら石造りの階段を降りる。中段ぐらいまで来た時に、はたと思い出して足を止めた。そして周りに誰もいない事を確認するとゆうを見る。


「なぁ、さっきあいつ、この神社に世話になってるって言ってたよな?」

『言ってたな。小さい頃からだって』


 ゆうの肯定を聞き、翔は確信した。


「と言う事は、神社に行けばあいつに会えるって事だな!」


 証明の方法がわかったらすぐに突撃してやると翔は決意する。そして、そのタイミングで思い出した。自分が神社に来た理由を。


「しまった、神主に会う予定だったのに! 今戻ってもあの女がいるし、また今度にするか……」


 翔はそう呟き、ゆうがさっき伝承って言っていたなと図書館に向かう事にした。




 ♢♢♢♢



 翔の後ろ姿を見送って、朔夜はため息をついた。


「やっと行ってくれた」


 心底安堵した様子の朔夜の後ろから声がかけられる。


「やはり、奴を処しますか? 主様!」

「だからテメェは……はぁ、もういい好きにしろ」


 近くで気配を消して様子を見ていたリンとコウだ。

 朔夜はそちらを向いて再度ため息をつく。


「もう関わりなくないから、君らもスルーして。それにしてもゆうの奴……」

「ああ、絶妙に助けたのか、本心で言ったのか微妙だったな」

「あの幽霊です! きっと何も考えていないに決まっています!」

「まぁ、そうだろうね。でも余計な事を言ってくれた。伝承を調べたら確実に境界には触れる。めんどうなことにならない事を祈りたいよ」


 朔夜の大きなため息はそのまま森に吸い込まれていった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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