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第16話 変な小芝居して何の用?

予約投稿の日付を間違えており、公開が遅れました。申し訳ありません。

 日が少し傾いた16時過ぎ、葦原学園高等部の教室はHRが終わろうとしていた。

 担任の鳴海(なるみ)隼斗(はやと)は「あっ」と声を上げる。


「話があるから、学級委員の2人は残れ、解散」


 学級名簿でトントンと肩を叩きながら鳴海はやる気がなさそうに言う。

 残れと言われた学級委員長和也と副委員長の朔夜は露骨に嫌そうな顔をする。

 他のクラスメイトが帰り支度をする中、嫌そうな顔を隠しもしない2人が鳴海の元に向かう。


「お前らな、いくら押し付けられたからってそこまで嫌そうな顔するなよ」


 そんな2人の顔を見て鳴海は呆れていた。しかし、2人に鋭い目で見られて口を噤む。


「何か用があるなら早く教えてくれませんか?」

「話ってなんですか?」

「いや、お前ら同時に喋るなよ……」


 和也と朔夜が早く用件を済ませようとほとんど同時に喋る。

 呆れた様にため息をつき、鳴海は用件を言った。


「ちょっと、荷物が多くてさ、この荷物を数学準備室に運ぶのを手伝ってくれ」


 そう目で教師用の机の上に積まれた数学で使うであろう巨大な三角定規や分度器、回収したと思われるノートなどが雑多に置いてある。


「数回に分けてご自分で運ばれては?」

「藤原、お前どんどん俺に対してあけすけになってきてないか?」

「理由はご自分の記憶に聞いてみてください」

「……」


 鳴海はため息をつき、和也から朔夜に視線を移した。


「不知火は手伝ってくれるよな?」

「……」


 しばらく朔夜と鳴海はお互いに視線をずらさず睨み合う。先に折れたのは朔夜だ。


「わかりました」

「不知火さん?」


 それに驚いたのは和也だ。和也は学級委員長として短い期間ながらも朔夜と接する時間は他の人より長かった。だからこそ敬語で優等生風を気取っている朔夜が面倒臭がりだという事を理解していたからだ。


「藤原、私どのみち鳴海先生に用があるのでこちらでやっとくから帰っていいですよ」

「えっ、でも……」


 流石に朔夜だけにやらせてもいいのかと和也が悩んでいる様子を見て鳴海が少し考えてから口を開く。


「1人じゃ持つのが大変なだけだから、軽いのを不知火に持ってもらうか」

「なら、早く済ませたいのでとっとと行きますよ」


 有無を言わさずに指示されたものを持つ朔夜は目で和也に帰っていいと伝えてくる。和也は後ろ髪を引かれるように何度か朔夜を見ながらも自分の席に戻っていく。


「さっさっと行きますよ」


 朔夜は鳴海にそう言い、先に数学準備室に向かって歩き出した。




 ♢♢♢♢



 朔夜は先に数学準備室の前に着く。鍵が掛かっているため、鳴海が鍵を開けるのを待ち、扉を開いて中に入る。ノートを近くの机の上に置くと、空いてるスペースに腰をかけた。


「で? 変な小芝居して何の用?」

「変な小芝居って、目立つの嫌いなの知ってるから気を遣ってやった俺に対してその言い方はどうなんだよ、朔夜」


 すぐに本題に入ろうとする朔夜に鳴海は呆れた様にため息をつく。準備室に入り、扉を閉め、内側から鍵をかける。そして、自分の持っていた荷物も机の上に置く。


「昨日の件だ。いきなり連絡してきて警察煙に巻いとけってもう少し説明あってもいいだろ」

「別に簡単に説明しただろ。他に何を説明すればいい」

「いやな、まずは厄介事に巻き込んだ謝罪と礼だろ。大変だったんだぜ、突然現れた神隠しにあったと思われた人達が出てきた理由をでっちあげるのも警察への説明も」

「そんなの僕の知った事じゃない。そもそも僕の管轄は隠世の住人の憂いを払い、境界の管理をする事。現世の人間の管轄は君達鳴海の一族の仕事だろ?」


 そう、担任である鳴海こそが神隠し事件の際に後処理を頼んだ人間であり、狭霧(さぎり)神社の跡取りでもある。朔夜が境界の管理人に選ばれた時からの付き合いだ。


「それはそうだけど、もう少し俺を敬ってくれても良くないか? 昔はお兄ちゃんって懐いてくれていたのに……」


 泣き真似をする鳴海を怪訝な顔で見ながら朔夜は訂正する。


「そんな記憶はない。勝手に記憶の捏造やめてくれない?」

「本当に可愛げなく育っちまったよな」

「別にいいだろ。管理人としては問題ないはずだ」

「それはそうだけどさ」


 何とも言えない表情の鳴海に朔夜はそう言えばという様に続ける。


「そういえば、同じクラスの稲荷翔。あいつにゆうが取り憑いて霊感に目覚めた。少し気にかけてやってくれ」

「……えっ? はっ? 稲荷? ってか後天的に霊が見える様になるのか!? 道具も使わずに? ってか狭霧様が取り憑いたって、悪霊になってしまったのか?」


 狼狽える鳴海を朔夜はめんどくさそうに見る。


 ゆうは昔から狭霧神社を根城にしていた。その為、鳴海の一族からは狭霧様と呼ばれている。しかし、ゆうと接している朔夜としてはそんな大層な名で呼ぶのが嫌で、幽霊だから"ゆう"と呼んでいた。


「取り憑けたのは利害の一致みたいだ。悪霊にはなっていない」


 必要最低限のことを伝えるも納得していない鳴海の眼光に負け、朔夜はため息をつきながら昨日の一件を説明した。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、木曜日の20時に更新予定です。


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