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第15話 現代っ子こぇー


 朝日が窓から差し込む光で翔は自然と目を覚ます。そして昨日の出来事を思い出す。いけすかない女に会ったこと、そして記憶が一瞬飛んだと思ったら幽霊というこの世のものじゃないモノが見えていたことを。


「あれは夢じゃなかったんだよな……?」


 思わず独り言が口から出る。非現実的な事は信じていない。しかし、この目で見たことを信じないのは違う。あの女が言ったように白昼夢でも見たのか? 頭の中でぐるぐると考えながら、翔はベッドから身体を起こそうとした。

 その瞬間、自分しかいないはずの自室から他の声が聞こえた。


『おっ、少年起きたか』


 翔は思わず、飛び起きて辺りを見回す。しかし、誰もいない。背筋に嫌な汗をかく。自分はまだ寝ているのか? 寝起きの頭が状況を上手く把握させてくれない。指先が冷たくなるのを感じた。


『おーい、少年。上だぞー』


 そんな声と共に、顔の前に逆さの顔が飛び出てきた。体は微かに透けて後ろのものが見える。

 ヒュッと喉が鳴る。翔は声にならない叫び声を上げる。


「ーーっ!!」


 しかし謎の半透明の何かは気にした様子もなく話しかける。


『目が合ってるってことはやっぱり見えてるよなー。昨日ぶりだけど、初めまして! 俺は幽霊だ。ゆうって呼んでくれ』


 自分を幽霊と名乗ったゆうはそういうと、くるりと宙返りをして地面に降り立った。


『昨日、俺が取り憑いちゃって色々と影響が出てる可能性があるから、今日の放課後付き合ってくれな』


 そして翔が混乱していることなど知ったことかというように語り続ける。


『久遠って知り合いがこういう分野が得意でさ。霊障とか受けてたら大変だからさー。まぁ俺のせいなんだけど……って聞いてる少年?』


 ゆうはそこで翔が固まっていることに気づく。不思議そうに宙を浮き翔に近づく。翔は逃げるように一歩ゆうから離れる。

 その様子を見て『ああ』と左手のひらに右拳を乗せる。


『さや相手に慣れていたけど、見えるようになったばかりはこの状況が理解できないのか。俺の生前の時代は妖とか普通に見えてるやつが多かったから忘れてたわ』

「……」


 無言の翔の前にゆうは降り立つと『よっこいしょ』と掛け声を出す。すると半透明に透けていた体が実態を持つ。


『これで少しは話せるか? ちなみに霊感のない奴には俺の姿見えないから叫んでも不審者に思われるだけだからな』


 不敵に笑うゆうに翔はやっと現実に戻る。ゆうを指さしながら、口をパクパクとさせる。


「おっ、お前は昨日の! 幽霊だったのか!?」

『あー、そこからだった』


 ゆうはそういや昨日途中で消えたなーと言いながら翔を見る。


『そっ、俺は幽霊で何千年も前に死んでる。で、昨日ひょんなことからお前に取り憑いちゃって、なんか少年が霊見えるようになっちゃったんだよなー』


 あっははーと笑いながらゆうは言う。ゆうの説明を聞きながら、翔は一つ気になることができた。その瞳からは恐怖が消え、真っ直ぐにゆうを見据える。


「って言うことは幽霊はいるんだな! あとはあのいけすかない女に存在を証明できれば俺の勝ちってことか!」

『えっ、ごめん、なにをどうやったらそんな話になるんだ?』


 翔の突然の発言にゆうは目を白黒させる。今の話からその結論が出ることがわからないと表情は語っている。


「そう言う話だろ! あの女、幽霊はいないだの白昼夢だの散々馬鹿にしてくれたからなぁ」


 怒りを思い出したのか拳を握りしめて震え始める。しかし、すぐに拳をガッツポーズのように身体の横から前に出す。


「今、あんたと喋ってるってことは現実って事だろ! 見えるものは見える。理屈は知らん。あとはあの女に幽霊が存在する事を認めさせるだけだ、吠え面かかせてやる!」

『……えー、自分がいきなり霊感体質になったのに反応がそうなるの? 現代っ子こぇー』

「おい、今すぐ見えるようになるならあの女にすぐに取り憑け!」

『いやいやいや、取り憑くのも今回偶然できただけで、意図してできないからな』


 翔の圧にゆうはしどろもどろになる。そしてまた現代っ子怖いと小さく呟く。翔は今の情報を咀嚼して頷く。


「わかった。それじゃ、他の方法を考える。それよりもゆうだっけ? なんでここにきたんだ」

『あっ、やっと本題に入れるのか』


 ゆうは嬉しそうに笑う。翔は学校に行く為に制服に着替えながら話を聞く。だいぶ時間をロスした為、顔を洗うのは後回しだ。


『さっきもちらっと言ったけどさ、俺が取り憑いた事により身体に影響が出てる可能性があるから、放課後に専門家に診てもらおうって話。あと、何かあるといけないから今日は俺が()から見張ってるから安心しろ』

「マジか。まぁ何もなければ存在無視しておけばいいんだな!」

『少年、物分かりが良すぎて逆に怖いんだけど』


 ゆうが怯えるのを無視し、翔は制服に着替え終わると鞄を持ち、部屋を出て行ってしまう。


『いや、もう存在無視されるの!?』


 翔の部屋に誰にも聞かれることのないゆうの絶叫が響いた。

 それが翔が幽霊を見えるようになった翌日朝の出来事だった。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、火曜日の20時に更新予定です。


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