第13話 この子は霊感があるのか
『主様、森の近くに人がいます』
猫又から聞いた境界の穴の場所へ向かっている最中に、森の周辺を見て回っていた神獣の姿に戻ったリンが朔夜に伝える。
「場所は? 万が一巻き込まれたら、めんどくさい事になる」
そして朔夜はリンから聞いた場所に行き、その場には少女が1人と少年が2人いた。朔夜はため息を吐く。
「君達、邪魔なんだけど?」
後ろで1つに束ねていた長い黒髪が風に靡かれる。それすら鬱陶しいと思いながら、不機嫌そうに言い捨てる。
「……は?」
いきなり現れた朔夜に少年は間抜けな声を出した。
数秒間、微妙な気まずい空気が流れる。その空気を破ったのは朔夜だった。
「聞こえなかった? 僕は邪魔って言ったんだけど。とっととどっかに行ってくんない?」
そんな暴言をサラッと言って、早くどっか行けと全身で訴える。
「ふ……ふざけんな!! っんで俺がお前の言う事を聞かないといけねぇーんだよ。俺らは人を探してんだ。どっか行くんならお前がいけよ!!」
「は? 何言ってんの。意味わかんないんだけど。僕はここに用があるの。そして、その用に君らは邪魔」
3人の意見を全く聞き入れるつもりはないと朔夜は吐き捨てるように言う。
『さや、もう少しちゃんと説明してあげろよ。ここは危ないから離れろってさー』
森の方から様子を伺っていたゆうが宙返りをしながら呆れたようにいう。その様子を見て朔夜はため息をついた。
「はぁー、わかった。君らの勝手にすれば良いよ。めんどいし……。ただ一応忠告しとくよ。ここにはしばらく近づくな。好奇心で関わるな、死ぬぞ」
朔夜は低い声でそう言うと、森の中へと入っていく。
「リン、一応さっきの奴らが森に入ったりした様子あったら報告して。コウとゆうは僕と一緒に穴の場所を確認に行くよ」
そして少し歩くと朔夜はそう指示を出して、2手に分かれるのだった。
♢♢♢♢
『主様、先ほどの人間が森に入りました。誰かを探しているようです。追いますか?』
しばらくすると空を飛んで状況をリンが朔夜に報告に来た。
その報告を聞き朔夜の口角がピクリと動く。
『はぁー、場所はどこ? とっとと追い出すよ」
盛大にため息を着き、リンの誘導で森に侵入した人間を探す為、穴探しを一度中断した。
♢♢♢♢
『朔夜いた、すぐそこだ。しかし厄介な事に元凶と思う怪異が近くにいやがる。対処してやるから、早く人の子を森から出せ』
しばらく歩くと、コウが上空から報告する。朔夜は目を凝らし、木の後ろに隠れる少年と少女、そして近くに大きな黒い影が見える。
朔夜は面倒だなとため息をつくと、コウが影の気を引いて離れたのを確認して、2人に近づく。
「君達、こんなところで何してるわけ」
後ろから声をかけると、2人は抱きしめ合い、恐る恐る後ろを振り返った。そして朔夜の姿を認めると少年が声を上げた。
「お前はあの時の……!」
小声でそう叫ばれ、朔夜は嫌そうな顔をする。
「今すぐ隠れろっ! そこに何かいるんだ!」
朔夜に危険を伝えようとしてきたが、馬鹿にしたように笑う。
「何かってなに? 白昼堂々夢でも見てるわけ?」
「お姉ちゃん、さっきあそこにお化けがいたの」
少女は先ほど黒い影が居た場所を指差す。
(なるほど、この子は霊感があるのか)
朔夜はこの少女があの黒い影の獲物だったが、霊感がありみえた事により逃げおおせたと当たりをつける。そして口では思ってもいないことを当たり前のように伝える。
「お化け? そんな物いるわけないよ。幻覚でも見たんじゃないの」
「でも、何もないところで何かが動く音がした!」
「恐怖で風の音を錯覚しただけだろ。それよりもここにいられると邪魔だ。道まで案内する」
早くこの少年たちから離れたいと朔夜は出口に向かい歩き出す。そして2人が後ろからついてくるのを確認した。
数分ほど歩くと、森が開けてガードレールと道、学校の校舎が見えて来た。道案内を終えると朔夜は「邪魔だからもう森に入ってくるな」と吐き捨てて、元きた道に戻って行く。
これでやっと本来の目的が達成できる。そう安堵しながら。その後の出会いをこの時の朔夜はまだ知らなかった。
♢♢♢♢
猫又からの情報の場所を朔夜、ゆう、コウは手分けして穴がないか探す。コウとゆうは空中を、朔夜は地面や木々のウロなどを探していると不意に呼び止める声が聞こえた。
「おい!!」
驚いて振り返り、その姿を確認すると朔夜はあからさまに大きなため息をつく。
「また君? 何しにきたわけ。さっき邪魔って言ったよね」
嫌そうな態度を隠しもせずに朔夜は少年を睨みつける。長い黒髪が風に靡き、揺れていた。
「理由も説明せず、邪魔って何度も言うな! それとさっきは道案内ありがとな、おかげで雛乃が無事に家に帰れる」
怒りながらもお礼を言ってくるが、朔夜は明らかに面倒臭そうにしている。
「邪魔なのもは邪魔なわけ、それに戻ってきてまで邪魔しないでくれない?」
朔夜は無駄な会話はしたくないと吐き捨てる。
「っ! とにかく、ここは何かいる。雛乃がお化けを見てるんだ。そんな場所に1人でいるのは危ないだろ」
朔夜の発言は気に入らない様子がありながらも朔夜を心配する少年を鼻で笑う。
「お化け? 何、幽霊とか信じているわけ?」
「さっきまでは信じてなかった!! でもこの森には何かいる。それは確実だ」
馬鹿にしたように言う朔夜に少年は宣言するように伝えた。
「お前はお化けや幽霊は信じてないんだろうがな、いる可能性がある! 俺が存在を証明してやる」
「証明って、見えないものをどう証明する気だ?」
明らかに馬鹿にしたように朔夜は少年を見る。
「それはまだわからないけど! それでもなんとかして証明してやるさ」
朔夜を指さし少年は宣言する。
「馬鹿らしい。勝手にやる分にはいいけど、僕を巻き込まないでくれ」
本当に嫌そうに朔夜はそう言うと、歩き出した。とりあえず、今はこの場からこの少年を引き離すのが先決だ。
「この森に何かいるのは間違いない。嫌だろうが今日は一緒に行動させてもらうぜ」
「迷惑」
迷惑そうに顔を歪める朔夜だが、少年は気にした様子がない。諦めないと悟ったの朔夜は、少年を無視するように森の出口に足を向ける。
しばらく2人は無言で森の中を歩く。
「?」
不意に朔夜は何かの気配を感じ立ち止まる。そして上空を見た。視線の先では黒い影とコウが争っている。そして黒い影が朔夜に気づき、コウから朔夜に方向転換する。生温かい風が朔夜の体を吹き抜ける。咄嗟に朔夜は黒い影を避ける為に後ろに避ける。そして気付いた、後ろが崖になっている事に。
「危ないっ!!」
『危ないっ!!』
慌てたように朔夜に手を伸ばす少年といつの間にか近くに来ていたゆうの影が重なる。
そしてゆうは少年ーー翔の体に取り憑いたのだった。
今回の話は5〜8話の朔夜視点となります。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、火曜日の20時に更新予定です。
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