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第12話 堕ちた神獣との契約はごめんだよ

『主様! ただいま戻りました……って猫又! 何故主様の膝の上で喉を撫でてもらっているのですか!?』


 麒麟の姿で嬉しそうに朔夜の元に戻ったリンは、猫又が朔夜の膝の上にいるのを見つけワナワナと震えた。


「落ち着け、リン」


 リンの背中に座っている人型のコウは呆れたようにどうどうとリンの体をあやすように優しく叩く。そして、リンが低空飛行になるとその背から飛び降りて、階段の横にある森の土の上に着地する。するとリンも姿を人型に戻し、階段に座っている朔夜に抱きつく。すぐに朔夜は鬱陶しそうに猫又を撫でるのをやめる。


「思ったよりも早かったね。リンだけなら捕まえられずに帰ってくる可能性も考えていたけど」

『……おーい、なんでリンに頼んだんだ』


 朔夜の言葉に宙に浮いていたゆうが呆れたように言う。しかし、朔夜は気にしない。


「主様! 私は主様のためならなんだってやりますよ!?」

「そうかもしれないけど、捕まえるだけとはいえ、麒麟に頼むことじゃなかったと後から気づいた」

「いえ、私も弱肉強食はわかっています。命を食べないと生きていけない、そんな生物もいる事は理解しているのです」

「だとしても、そこを曲げると麒麟ではいられなくなるんじゃないか? 僕は堕ちた神獣との契約はごめんだよ」

「主様!!」


(頼んどいて、ここまでどうどうと言えるって、本当にさやは大物だなぁ)


 そんな様子を見てゆうは遠い目をする。そして、コウの横に浮いている水球に気付き、近づいていく。


『流石は黄竜様。まさか魚を水に閉じ込めて運んでくるとはな。これは新鮮以外の何物でもない』


 そして感心したように水球を覗き込む。見事な術に感動し、ゆうは水球に指を入れようとする。しかし幽体であるゆうの指は水に触れる事は出来ない。


『流石に術がかかってるとはいえ、水には触れないか』

「何を勝手に実験をしている」


 そう言いながらもコウはゆうの好きなようにさせていた。そして2人は朔夜達を見る。いつの間にか朔夜と少し離れた場所でリンと猫又が縄張り争いのように言い合っている。


「随分と猫又を懐かせたみたいだな。魚は必要なかったんじゃないのか」

『いや、供物は必要だろ? それに猫又も伝える事で危険になる可能性がある。正当な報酬はやるべきだとさやが』

「なるほど、なかなかの大物が穴を破ったか」

「多分今回の境界の穴はその大物が開けた可能性がある。君達は時間の感覚は些細なことかもしれないけど、本来穴が自然と空くまでの期間に数年のずれがある」


 リン達の言い合いを見飽きたのか、朔夜がゆう達に近づいてきていった。


「今、こっちじゃ行方不明事件が起きている。穴に引き摺り込まれて迷子だけならまだいいが、引き摺り込まれて食べられてる可能性も考えないといけない。そしたらあちら(・・・)が汚染されてる可能性があるからさらにめんどくさい事になる」

「人の血は隠世には毒だからなぁ。現世をどんだけ調べても居ないってことは最悪の状況も考えないといけねぇな」

『コウ、隠世では見つけられなかったのか?』


 3人は今起きている事件の最悪のケースを共通認識しながら話を続ける。どこからか生温かい風が吹き抜ける。


「隠世も広い。血の匂いはしなかったからまだ殺してはいねぇだほうが、一刻を争うだろうな。先にこっちに出てきたのを叩いて、巣の位置を聞いた方が手っ取り早い」

『そうなるか、やっぱり』


 真剣に話していると、朔夜は不意に浮いている水球を見て、猫又を見る。


「とりあえず、あの低レベルの喧嘩止めて、情報収集が先だ。ゆう、止めてきて」

『お前、面倒事は全て俺に触ればいいと思っているだろ……』


 ぶつぶつと文句を言いながらゆうはリン達に近づく。


『はーい、ストップ。そろそろ本題に入ろぜ? 猫又希望の新鮮な魚があるんだからさ』


 その言葉が引き金となり、2人の言い争いはぴたりと止まった。リン達はコウの隣を浮いている水球とつまらなそうに階段に座り携帯を弄り始めている朔夜を見てようやく自分達がくだらない事をやっていたと自覚する。

 背筋を伸ばし、2人は朔夜達に近づいた。




 ♢♢♢♢



『久しぶりに美味い魚を食えた。感謝する』


 今更改まったように猫又は言うと、ぴょんっと朔夜の膝の上に乗る。それを見てリンが何かを言いかけるが、先ほどの二の舞になる可能性を考えたのか、クッと拳を握る。


「それで、君は何を知っているの?」


 朔夜の問いに猫又はニヤリと笑う。そして朔夜が欲していた情報を口にする。


『境界の穴の位置だ。偶然小さな穴が大きくなるのを見かけてな、そこから黒い影が出てきた。それが近くにいた人の子を引っ張り穴に引き摺り込んで、穴がまた小さくなった』


 それは行方不明事件の真相に近かった。相手はわからないが、犯行現場と方法がわかった。この情報を探るため、リンは現世を、コウは隠世を探っていたのだ。


「そう、その場所はどこ?」


 それは流星学園近くの森の中の一角だった。話を聞き朔夜は大体の場所を予測する。そして動き出そうとした朔夜をゆうとコウが止める。


「明日にしておけ、もう時期夜になる。闇に紛れてテメェに何かあったほうが損害だ」

『もう遅い! 万全の準備をして明日にしようぜ』


 2人の言葉を聞き、一理あると朔夜は納得する。そして、明日の作戦会議をするとこの場は解散となった。


 いつの間にか太陽は姿を隠し、月が闇よに輝いていた。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、木曜日20時に更新予定です。


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