第2章:大城壁
まえがき
かつて、神々と人間がともに戦った時代がありました。その記憶は、ほとんどの人々の心から失われ、今ではただの伝説として語り継がれているにすぎません。
しかし、石は覚えています。
五千年前に流された血の一滴一滴を、この巨大な城壁は静かに記憶し続けてきたのです。そして今、遥か遠い異界からやってきた一人の少年の手が触れたとき、壁はついに口を開きました。
これは、忘れ去られた戦いの記憶です。
これは、隠された真実の断片です。
そしてこれは、これから始まる長い旅の、最初の一歩に過ぎません。
ようこそ、過去と未来が交差する場所へ。
ようこそ、アスマンへ。
次にヤマトの目に飛び込んできたものは、それまでのすべてよりもさらに理解を超えていた。
それは途方もない高さの城壁であり、見渡すかぎり両方向に伸びていた。その頂上は、どこまでも続くかと思われる空の彼方に消えていた。自然の岩でできた障壁——まるで誰かが山を引き抜き、世界を二つに分けるためにそこに植え付けたかのようだった。
彼はその場に凍りつき、携帯電話が手から滑り落ちた。画面が地面の石にぶつかってひび割れる音が、彼を現実に引き戻した。
彼はその地質学的な怪物から目を離さぬまま、しゃがみ込んでそれを拾い上げた。
彼はゆっくりと近づくことにし、そして実際にそれに触れるまでは、その存在を完全には信じることができなかった。
それは本物だった。石は硬かったが、その感触は不思議なくらい滑らかだった。
そして、まさにその瞬間——彼の指がその石に触れたその刹那——世界は粉々に砕け散った。
何百もの死と破壊のイメージが、始まりと終わりの光景が、なんの前触れもなく彼の精神のなかで炸裂した。
叫び声。灼熱。その残り火はいまだ消えずに燻り続けている。
岩そのものが内側からささやきかけてくるかのように、ヤマトは過去を見た。
そこは同じ場所だった。しかし五千年前の――。
空は粉々に砕け落ち、天蓋が小さな村の上で真っ二つに裂けることを決めたかのようだった。家ほどの大きさの白熱した火球が空を横切り、村に猛烈に襲いかかり、耳をつんざくような轟音を大気中に残し、土と炎の柱を巻き上げていた。
雷は数百にもおよび、病的な紫色の輝きを伴っていた。それらは炎の槍のように垂直に降り注ぎ、樹齢数千年の木々を裂き、藁葺きの家々を瞬時に焼き尽くした。
混乱のただなかで、翼ある影が月を覆い隠した。
それは巨大な生き物だった。その翼はタールのように黒く、羽ばたくたびに黒い炎を撒き散らしていた。
燃え盛る火事の閃光に切り取られたそのシルエットは、さながら空飛ぶ山のようだった。
竜ではなかった。それはもっと古く、もっと邪悪なものだった。
ヤマトはまだトランス状態のまま、立ち尽くし、城壁が彼に見せようとしているものを目の当たりにしていた。
彼は幻視のなかの同じ場所に立っていた。しかし、目にしているものは五千年前に起きたことだった。
一瞬、落ちてくる葉がそっと彼の肌に触れ、その幻視を失わせた。だが、先ほどよりもさらに恐ろしい叫び声が、彼を再びその光景へと引きずり戻した。
筆先から墨の滴が飛び散るかのように、その獣の背から、無数の「存在」が落ち始めた。
鉤爪と無数の歯列を持つ、おぞましい異形の者たち。それらは、まだ倒れずに残っていた家々のなかへと侵入していった。
それは飢えであり、渇きだった。死の末裔であり、決して踏み越えてはならない境界を侵犯した者たちだった。
一瞬の乾いた閃光が、その幻視を白い背景へと変えた。そして、少しずつ村の家々が再び輪郭を取り戻し始めた。
すでに夜は明けており、焼け落ちた屋根からは煙が立ち上り続けていた。
広場の中央には、まるで純粋な月光そのもので形作られたかのような存在が立っていた。その手には獅子の拵えを施した巨大な剣が握られており、刃からは戦いの名残である黒い滴がまだ滴り落ちていた。
その存在は剣を高く掲げ、ケーン中に響き渡る宣言を放った。
「お前たちは守られた。だが、危険は去っていない」
村人たちが呆然と見守るなか、地面から巨大な城壁がせり上がり始めた。
大地を揺るがすその轟音に匹敵するものがあるとすれば、それは村中に鳴り響く大いなる青き鐘の音色だけであった。
その瞬間、ヤマトは我に返った。目を開けると、つい先ほど幻視のなかで誕生したばかりの、あの城壁が眼前にそびえていた。
それは一つの時代の幕開けだった。もっとも、ヤマトにはまだ知る由もなかったが。
そして今、その城壁は五千年の歳月を経ていた。
木々は変わらずそこにあり、あの大虐殺の忠実な目撃者として、五つの時代を経た今も、変わらぬ姿で立ち続けていた。
だが、その戦いの轟きは、そこで消え去ったわけではなかった。幾人かのケーンの民の記憶のなかに、今もなお生き続けている…彼らの心に残る美しい鐘の音とともに。
その朝、十七歳の京都の少年が壁に触れたとき、壁は思い出した。
そして、思い出したがゆえに、消え去った。
ヤマトは、焼けつくような痛みを感じて手を引っ込めた。
まばたきをし、再び目を開けたとき、かつて果てしない岩壁がそびえ立っていた場所には、ただ空が広がっているだけだった。
天まで届くかと思われた壮大な城壁は、消え失せていた。
そこに残されたのは彼だけだった――手を差し伸べ、虚空に触れたまま立ち尽くす彼だけが。
来週の火曜日、第3章公開!お楽しみに!




