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第3章:二色のウサギ

まえがき


壁は崩れ去り、少年の前には未知なる世界が広がっています。しかし、その第一歩は勇気によって踏み出されるのではなく、道を横切る小さな二色の生き物からそっと贈られる、無言の許しによって踏み出されるのです。


この森は、五千年の眠りから目覚めたばかりの場所。ここには地図も、目印も、安全な道もありません。ただ、古代の木々と、奇妙な毛並みを持つ一羽のウサギがいるだけです。


ようこそ、沈黙の世界へ。

ようこそ、長き旅の本当の始まりへ。

ヤマトはその場に立ち尽くし、虚空を撫でていた。


彼の前には、京都の高層ビルよりも高くそびえる樹々の森が広がっていた。その幹はあまりにも太く、枝は何十メートルも密林の奥深くまで伸びていた。


彼には何も理解できなかった。生々しい幻視にまだ混乱したままの彼の心は、目の前にある現実を受け入れることを拒んでいた。


壁の幻、エレベーター、虚空… 自分はまだ夢を見ているのだろうか?


乾いた枝が彼の顔を打ち、彼を現実に引き戻した。


森はまだそこにあった。そして彼もまた。


それと同時に、かつて城壁があった場所のちょうど反対側では、二人の衛兵が会話を交わしていた。


彼らは若く、城壁監視員の着古した灰色の制服を身に着けていた。


五千年ものあいだ彼らの現実を支え続けてきたものが、いままさに崩れ去ろうとしていることなど露知らず、彼らはのんきに話し込んでいた。


しかも、それは徐々にではなく、一気に崩れ落ちようとしていたのだ。


「…で、そしたらそいつ、俺にホタルを採りに行かないかって言うんだぜ。ホタルだぜ! 今夜の三日月がすごく綺麗だったのによお」と、若い方の衛兵が言った。


「俺は悪くないと思うけどなあ。一晩中、岩の壁を眺めてるよりはマシだろ」ともう一人が答えた。


「お前、頭おかしいんじゃないか? 城壁は俺たちを虚無から隔ててる唯一のものなんだぞ」


「それとも、お前はあの悪魔にでも飲み込まれたいっていうのか……?」


若い衛兵が城壁を指さそうと振り返ったが、その指は虚空を指していた。


いつもの城壁の代わりに、彼の目に飛び込んできたのは、ありえない光景だった。


どこまでも開けた空、巨大な樹々の軍勢、そしてその中心で、空中に手を伸ばしたまま立っている一人の少年。


衛兵は叫ぶことさえできなかった。


彼の目は白目をむき、その場に瞬時に崩れ落ちた。


もう一人の衛兵は、仲間が倒れるのを見て顔を上げた。


彼はヤマトを、森を、そして理解の及ばぬ虚空を見た。


その直後、彼の精神は砕け散った。


「あ、あく……あくま……あくまだ……」震えながら彼はどもった。


ヤマトが何かを言おうとしたが、その衛兵はすでに全力で叫び声をあげながら、恐怖に駆られて走り去っていた。


「悪魔だ! 悪魔だ! 城壁が崩れ、悪魔が解き放たれた!」


ヤマトは一瞬しゃがみ込み、地面に倒れている衛兵の安否を確かめた。


「おい、おい、大丈夫か?」と彼はその男のシャツを掴みながら尋ねた。


返事はなかった。


ヤマトは迷わなかった。彼は反対方向へと駆け出し、ケーンの森のさらに奥深くへと入っていった。


彼はあてもなく走り続けた。ただパニックだけが彼を動かしていた。


枝や茂みが彼の体を傷つけながら、森の茂みの奥へと進んでいった。


全力で走り続けて十分後、心臓が張り裂けそうになった彼は、ケーンにある他のすべての木々と同じく巨大な木の幹の後ろに身を隠した。


彼は荒く息をしたが、その息切れのせいで考えることができなかった。


遠くから、鐘の音が街の喧騒と混ざり合って聞こえてきた。


その時、彼の手がポケットに触れ、携帯電話を感じた。


それを取り出すと、見慣れた輝きを放つ画面が一筋の希望のように灯った。


彼は「電話」をタップし、「自宅」を検索し、電話をかけた。


呼び出し音…そして途切れた。


「圏外」


彼は電話を切り、何度もかけ直した。しかし、何度試しても結果は同じだった。


「圏外」


彼の表情は次第に強張っていった。まだパニックではなかった。それは、理解不能であることへの戸惑いだった。


彼はアプリを閉じ、Googleマップを開いた。


アプリは読み込まれ、地図が表示された。しかし、その地図には何も表示されていなかった。通りも、川も、街もない。ただ、完全な虚無の只中に、小さなカーソルがぽつんとあるだけの、空っぽの格子模様があるだけだった。


ヤマトはどう反応していいかわからず、ただ画面を見つめ続けた。


彼の手は、指の関節が白くなるまで携帯電話を握り締めていた。


何年も経験していなかったあの不安発作が、突然彼を襲った。呼吸は速くなり、こめかみで脈が激しく打つのを感じた。


その時、彼は電話を裏返し、そして彼女を見た。


裏側には、子供っぽいシールで貼られた小さな写真があった。京都の写真シール機で撮った、笑顔のハックの写真だった。


それがもう一つの刃となって彼を貫いた。彼女にも、両親にも、連絡を取る術はなかった。


彼は募る苛立ちとともに携帯をしまい込んだ。しかし、それを投げ捨てはしなかった。


それが彼に残された唯一のものだった。


近くの茂みから物音がして、彼の思考の糸は断ち切られた。


ヤマトは顔を上げた。手は本能的に地面の棒きれを探し求めた。


最悪の事態に備えたのだ。


すると突然、一羽のウサギが茂みから矢のように飛び出し、急停止して彼の前に立った。


その動物は彼を恐れているようには見えなかった。


その毛皮は、ちょうど真ん中で二つに分かれていた。左半分は純白、右半分は鮮やかなピンク色だった。


奇妙な生き物だったが、何の脅威も感じさせなかった。


湿った鼻をひくつかせながら、好奇心に満ちた目でヤマトを見つめていた。


その状況の馬鹿馬鹿しさに気づいたヤマトの緊張は解け、唇が緩んだ。


彼は深く息を吐き、溜め込んだ恐怖の一部を解放した。


棒きれは手から滑り落ち、鈍い音を立てて地面に落ちた。


それを聞いたウサギは、ぴょんと跳ねると、再び森の奥へと姿を消した。


ヤマトは体を起こし、その姿を目で追った。


ウサギの痕跡はもうどこにもなかったが、何かが彼を歩かせた。


彼の姿は、巨大な幹の下で次第に小さくなっていった。


頭上には、新しい世界の色合いに染まり始めた、開かれた空が広がっていた。


世界は広大で、彼は塵のように小さかった。


それでも、彼は歩き続けた。


圏外だった。地図もなかった。引き返す道もなかった。


ただ、奇妙な森と、二色のウサギ… そして、すでに彼を断罪していた街があるだけだった。


幾度もの衝突と転倒を経て、森はついに屈服した。最後の一群のゲーサの木々――白みがかった幹と雲に隠れた梢を持つ木々――が、踏み固められた土の盛り土へと道を譲った。


ありえないイメージで頭が飽和状態になったまま、ヤマトは森の終わりと何か新しいものの始まりのあいだで立ち尽くした。


壁と衛兵たちの記憶は、まだ生々しく彼の心に残っていた。


そして今、これだ。


そこは丘と森のあいだに挟み込まれた街だった。彼が予想していたような、典型的な村ではなかった。


つづく___
















来週の月曜日、『リカバー・ザ・ランド』の第4章をお楽しみいただけます。どうぞお楽しみに!

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