第15話 誰も城の話をしなくなった
ロメオたちは、魔王の城を改築するべきか、それとも全面的に建て替えるべきか悩んでいた。
「城全部作り替えるなら、違う場所に作り直した方が早くないか?」
「今までの城は俺がもらって、兄上の城は新しく作る」
「それが良いかもしれない」
ガルディアが図面を広げた。
「こんな感じでどうでしょうか」
全員が図面を見て首をかしげた。
「このセンス……よくわからない」
「あまりにも白くてドロドロしてないぞ?」
ゼクスが言った。
「魔界って感じじゃなくて、天界って感じだろう」
ガルディアは静かに答えた。
「……そういうのがいいっておっしゃられているので」
そこに描かれていたのは、完全に天界仕様の城だった。
「とりあえず兄上に聞きに行くしかないな」
「今回は俺も行くから」
そうしてロメオは、ガルディア、ゼクス、グレインを連れてヴェイルのところへ向かった。
しかし転移先を少し外してしまい、結局町を歩くことになった。
すると。
「こんにちは。今日もヴェイルさんのところにお仕事ですか?」
クレアがガルディアに声をかけた。
「はい」
「いつも大変ですね」
「大したことはないです」
いつの間にか、ガルディア達はクレアと顔見知りになっていた。
クレアが言った。
「来るのが大変でしたら、こちらに住めば楽かもしれませんよ」
勧誘された。
四人は思った。
……それ、ありでは?
ロメオが聞いた。
「僕、ヴェイルの弟のロメオです。はじめまして。いつも兄がお世話になっております」
「クレアです。よろしくお願いします」
「少しお聞きしたいんですが、僕、植物を育てるのが好きでして……ここってそういうのできますか?」
「ガーデニングされている方も多いですよ」
「畑を借りて育てている方もいますし、地区で菜園を管理してくださる方も募集しています」
何……。
すごくないか?
魔界だけじゃなく、人間界の植物も試せる?
ポーション作り放題では?
革命だ。
兄上が移住した理由、わかった。
俺も気に入った。
魔界は弟のアベルに任せれば良くないか?
そうしよう。
すると今度は、グレインがおそるおそる聞いた。
「あの、お菓子作りとかもできますか?」
「お菓子教室もありますし、販売されているところもありますよ」
「え?!」
目が輝いた。
グレインの趣味はお菓子作りだった。
しかも人間界のお菓子っておいしい。
教えてもらえる?
ありだ。
俺、ここ住みたい。
さらに聞く。
「パン作り教室もありますか?」
「ありますよ」
「他にも料理教室って……」
「あります」
お菓子。
パン。
料理。
普通じゃないだろ。
料理天国じゃないか。
やっぱり移住する。
ガルディアとゼクスは思った。
……これ、攻略されてないか?
ガルディアが聞いた。
「子育てってどうなんです?」
「学校もありますし、保育園や学童もあります」
「教育水準も高めですし、高校や大学もありますよ」
「習い事も結構ありますし、一通りそろっているので住みやすいと思います」
何?
子育てもいける?
習い事。
色々教えてもらえるってことか?
人間界の教育を受けさせて、留学もありでは?
……ありだ。
ガルディアは少し考えた。
教育。
習い事。
保育。
……これ、普通にかなり良くないか?
魔界は自由だ。
自由だが、ここまで全部まとまってはいない。
選択肢が多いというのは強い。
気づけば少し真剣に考えていた。
移住。
意外と悪くないかもしれない。
すると。
「すみません」
ゼクスが真面目な顔で聞いた。
「俺モテないんですけど……出会いとかありますか?」
一人だけ切実だった。
ゼクスだった。
クレアは普通に答えた。
「街コンや交流イベントもありますし、出会いはあると思いますよ」
「結婚支援もありますし」
「え?」
ゼクスは目を見開いた。
本当に?
彼女ほしい。
移住する。
こうして、誰も城の話をしなくなった。
今回は城の改築会議のはずでした。
気づいたら町を歩いて、菜園を見つけて、お菓子教室を知って、教育環境を聞いて、最後は婚活の話になっていました。
……誰も城の話をしなくなりました。
ヴェイルが移住した理由を皆が理解してしまった回かもしれません。
ロメオは植物、グレインは料理、ガルディアは教育、ゼクスは出会いと、全員ちゃんと刺さる場所が違ったのが面白かったです。
特にゼクスは急に現実的でした。
街コンと結婚支援を聞いただけで移住を決めるのは少し早い気もしますが、本人はかなり真剣です。
なお、まだ兄上には会っていません。
次回、ちゃんと城の話をするのか、それとも別のものに心を奪われるのか。
お付き合いいただきありがとうございました。




