第10話 婚姻届の添付書類が難しすぎる
俺達は婚姻届を出しに行かないと、新婚夫婦とは言えないらしい。
そこで、婚姻届を出しに行こうと思うんだが……。
それ、どこにあるんだ?
婚姻届ってなんだよ。
そんなものいるのか?
結婚して、それで良くないか?
子どもも作ったら、さらにいいな。
家族だ。
……リシェとの子どもか。
夢が膨らむ。
絶対にかわいいぞ。
リシェに似た子どもか。
俺に似た子どもかもしれない。
どっちでもいいな。
リシェだって、子ども欲しいって言ってたし。
子どもができたら、子ども部屋が必要だな。
それはそれでいいな。
魔道具作りながら、子育てか。
最高。
……しかし。
その前に、色々する必要があるんだろうが。
まさか、その証明が必要あるのか?
例えば、プロポーズ証明書添付とか?
どんな言葉を言ったか。
あ……俺の場合、これか。
『お前、俺の嫁な』
添付できるな。
いや、そもそもそんなもの添付する必要があるのだろうか。
婚姻届というものが必要だって、昔ゼクスが言っていたから知っていただけだ。
他に考えられる添付書類。
一緒に住んでいるとか?
いや、住んでなくてもいいのか?
じゃあ、何だ。
難しいぞ。
キスしたか、してないか。
これか。
写真でも添付するのか?
いや、さすがに……魔界でもそれはないな。
だいたい、他人のキスなんて見たいか?
変わってるな。
そもそも婚姻届、本当にそんなものが必要なのかは知らないが。
人間界、違うな。
プロポーズの時間とか、ログを取っておかないといけなかったとかあるのか?
――盲点。
時間、測ってない。
その時のログも取ってない。
くそっ。
もう一度やり直しか?
「リシェ、どうしよう」
「どうしたの?」
「プロポーズの時間、測るの忘れた」
「え!?」
「プロポーズって時間計測が必要だったの?」
「そういうものなの? 魔界って」
「いや、人間界だ」
「え? 人間界でも、それが常識だったの?」
リシェが驚いた。
「私が知らなかっただけなのかしら」
「やっぱり勇者してると、わからないことばかりで……」
「人間界の常識、抜けてるみたい」
「誰か詳しい人、いないかしら」
「どこで聞いたの?」
「ゼクスだ」
「その人、呼べばいいんじゃない?」
俺は通信端末を手に取った。
「ゼクス、今すぐ来い」
「とにかく、すぐにだ」
「秒で」
「わかりました」
これは、魔界に何かあるに違いない。
「ガルディア、グレイン、緊急招集だ」
「行くぞ!」
ピンポーン。
秒だった。
「魔界に何か……!」
「お前ら、婚姻届の添付書類のプロポーズ証明なんだが、どうするんだ?」
「……」
「……はい?」
「プロポーズ証明なんて、聞いたことがありません」
「何!?」
「ゼクス、婚姻届が必要って言ったじゃないか」
「いや、添付書類までは……」
グレインが口を開いた。
「役所に行って、届の書類を取ってきます」
「ああ、頼む」
「その間、俺達はお茶でも飲んでいよう」
緊急招集だったはずだが、なぜかお茶会になった。
「プロポーズ証明以外に、何か必要なものはありませんよね?」
「例えば?」
「キスの証拠とか?」
「それくらいしかないよな?」
「そう思いますけど」
考えることは同じだった。
「でも、見たくありませんよね」
「ああ」
「いや、でも人間ですから……結婚前の浄化証明とか?」
「そんなのがあるのか?」
「清めてからって、聞いたことがあります」
「「何!?」」
「リシェ、人間は清めるのか?」
「わからない」
「私、勇者だったし、世間に疎いの」
「でもさ……魔王が清めるって、あり得ないよな」
「無理でしょ」
「やめよう」
「私も、その方がいいと思う」
「なんかヴェイって、そういう感じじゃないし」
「だよな」
満場一致だった。
「無駄に悪役よね」
「そうかな」
ヴェイルは少し照れていた。
「でも、ヴェイは格好いいわ」
「……ありがとう」
我々は、何を見せられているんだろう。
ガルディア達は思っていた。
早く帰ってこい、グレイン。
今回は婚姻届回でした。
普通は婚姻届を取りに行く話になると思うのですが、うちの元魔王は違いました。
まず制度を疑い、次に添付書類を疑い、最後はプロポーズ証明とキスの証拠を提出するものだと思っていました。
そして秒で集まる魔王軍。
なお、緊急招集の内容は婚姻届でした。
ガルディア達は真面目に対応していますが、多分途中から「役所に行ってくれたグレインが一番平和だったのでは」と思っていた気がします。
あと、ヴェイルが子ども部屋まで考えていたので、本人の中ではかなり先まで人生設計できているようです。
次回、無事に婚姻届へたどり着けるのか。
よろしくお願いします。




