表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/109

第三十二話

 乱れ狂いの沼。

 森の奥にひっそりとある沼地は、足元が悪い沼の中で魔物を倒していくというダンジョンだ。

 ここで初めて、プレイヤーたちはダンジョンギミックというものに触れることになる。


「うーわ、足元ブニブニっす……」


 ミサキが気持ち悪そうに見つめている。

 沈んでいく感触は、体験したことのないまとわりつきを足元に与えてくる。足を上げるのにも少し時間がかかる。

 サクラもおどおどと足を進めていた。


「ま、ここが最も恐ろしいのは、動きづらいことやないけどなぁ」


 後ろからついてくるアキが慣れたような足つきでついてくる。後頭部で手を組んで、尻尾を左右に揺らしていた。


「何か知ってるって口調だな」

「教えてやってもええで?」

「いや、いい」


 ヒカルのその否定に、再びアキは硬いなぁと苦笑いをする。


「うちに頼るのがそんなに嫌か?」

「今回は違うな」


 足下を確認しながら、しっかりと地につけるところを探し出す。


「先に攻略法を知ったら面白くないだろ?」


 その言葉にアキは目を見開いて、小さく息を吐く。


「はは、そんなこと言えるのは変態だけやな。少なくとも、デスゲームで言えるやつは多くないやろうな」

「いなくはないんだな」

「まぁ、色んな人間がいるからな」


 広がるのはマングローブの森林。奥からは霧のようなものが漂っている。沼ステージに合っていてとても不気味だ。

 動きづらい視界が少し悪い。絶妙に嫌がらせがコンセプトのステージだ。


 そして現れるのは、マングローブを小さくしたような木の化け物だ。


 名前を『ウッドリーパーα』という魔物には、葉っぱがまったくついておらず、恐ろしい顔のような幹が動いている。


──……α?


 その名前の特徴に、ヒカルは眉根を寄せる。大体そのような名前を冠する奴は、同種の魔物が存在するということだ。


 飛んで襲いかかってくるそいつは、ミサキが撃った矢に射抜かれてあっさりと倒される。悲鳴も上げずに消えていく様子に、あまりのあっけなさを感じる。


「ちょろいっすね!」


 ミサキが笑顔でガッツポーズをする。サクラが褒めるように拍手していた。

 アキの方を見ると彼女はニヤニヤしている。その嫌な笑顔に、ヒカルは舌打ちをしたくなった。


「ここでは、魔物が残らないんだな」

「基本的にはαは残らんな」

「αは……ね」


 アキの言い方的にも、やはり同種の魔物がいると考えていいだろう。


 続いて“大きな声を上げながら”、同じような魔物が現れた。

 名前は『ウッドリーパーβ』。先ほどが枯れていたのに対して、今度は木の葉がついている。


「今度もやるっすよ!」


 有無を言わさず、ミサキが弓を番えた。


「ちょっとま──」


 ヒカルが止める前に矢が放たれる。その攻撃は魔物に命中し、一発で絶命させた。倒れるそれは、強烈な絶叫をあげた。


「やってもうたな〜」


 ニヤニヤしながら言うアキの声に反応するように、ヒカルは肩を落とした。


「だろうな……」

「え? 何がっすか?」


 ミサキの行動力は良いところである。そして、悪いところでもある。

 その悪いところが今出たというところだ。


 響き渡る絶叫は森の奥へと浸透していく。周囲から大量の『ウッドリーパーα』が顔を出した。


「う、うげ!?」

「ひ、ひゃあ!」


 二人の声が重なる中、ヒカルは剣を抜いた。


「足元が悪い、視界が悪い。それが重なれば大体やってくるのは敵の大量召喚だろ?」

「正解。ま、乱れ狂いの沼って名前の時点で想像できた光景やな」


 冷静な二人に対して、サクラは涙目で震え上がり、ミサキは手をワタワタとさせていた。


「こ、こここれはどうするっすか!」

「……落ち着け、一体一体はそんな強くない」

「うちならいつでも力を貸すで〜」


 アキの声を無視しながら、襲ってくる魔物たちに剣を振った。



 基本的に湧いてくるのはαである。混ざるβを倒してしまうと、さらなる悲鳴を上げて増援を呼ばれる構図である。

 対処法を悩んでいると、サクラがそれを示してくれた。


 数の多さにヤキモキしていると、突破したβが彼女に飛びついたのだ。まずいと手を伸ばしたときには、サクラが杖から炎魔法を放つ。

 木の葉を全部燃やされたそいつは『焼けたウッドリーパー』へと名前を変えた。そいつを倒してみると、悲鳴を上げなかった。


 なるほどなと、ヒカルは理解すると同時にやらしいなとも思う。


「沼に炎か。普通はこんなの気づかんぞ」

「初期やとたくさんのプレイヤーが文句言ってたな」


 その光景が目に浮かんで、ヒカルは思わずため息をついた。


「とことん、このゲームの設計者はいやらしいな」

「ま、それがゲーム開発者ってもんやないの? 簡単にクリアされてもつまらんってやつや」

「それをデスゲームに組み込むかね?」


 その言葉にアキは曖昧な笑みを返してくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ