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第二十七話

「なんやなんや。ひっさしぶりの招集やっていうのに人全然おらんやん」


 とある円卓。一人の少女が猫耳を動かしながら、つまらなそうに頬杖をついている。

 その好奇心旺盛な茶色の猫目に見つめられる男は、居心地悪そうに眼鏡をかけ直す。


「まぁ、大方のチームは人手が足りてないでしょうから。それよりも、むしろアキさんが参加してることのほうが意外でしたがね」

「うちらのチームは情報を大事にしてるもんでな。リーダーにいけって言われてもうたわ」


 アキと呼ばれた獣人の少女は、身につけている軽鎧に開いた本の紋章が画かれている。一方男の方の白銀の鎧には、剣が交差する紋章が描かれていた。

 彼らは複数ある攻略組のチームのメンバーである。アキは『ブック・リスター』。男──ロッドウィグは『クロス・オーソード』のメンバーであった。


 今日はこのゲームに閉じ込められて初めて送られた全体通知の話題のために、攻略組チームの代表たちの緊急招集があった。しかし、蓋を開けてみればやってきたのはたった二チームだけという。

 

「それでロッドウィグのチームは、各地に新しく現れたダンジョン攻略も進めてはるの?」

「もちろん、もう最深部にまで到達したところもあります。ただ、特筆すべきことはありませんね」

「とか言いながら、なんか隠してんちゃうの?」


 アキの言葉に、ロッドウィグは肩をすくめる。


「隠したいのは山々ですが、本当に何もありませんよ」

「……ま、そういうことにしておいてあげますわ」


 その言葉に、ロッドウィグは苦笑しながら眼鏡をかけ直した。


「むしろそれはこっちのセリフですね。そちらが僕たちよりも情報を知らないわけがないですから」

「まさかまさか。最大チームに勝てるところなんてありませんわ。おかげでうちらも動きづらいったらありゃせん」

「そりゃどうも」

「褒めてないで? 嫌味や」


 二人の仲はどうもあまり良くないらしく、ギクシャクとした空気が流れている。

 そんな空気を一変させるかのように、重い鉄扉が開かれる。入ってきた人間を見てアキは目を見開き、ロッドウィグはあからさまに舌打ちをした。


「……今さら僕たちの前に現れて、なんの用ですか? モルドレルド」


 それは好青年だった。それは笑顔を見せていた。ただ楽しそうに鼻歌を挟みながら、開いてる席に適当につく。

 脚を組み、机のうえでてを揃えた。


「なんの用ってこれでも僕も10の攻略チームリーダーのうちの一人なんだけどもね?」

「お前は出禁になったはずですよ?」

「というかそもそも、プレイヤーキラーを容認しだした奴がぬけぬけと厚かましいなぁ」


 二人のツンケンした態度もどこ吹く風で、モルドレルドは笑顔を見せる。


「プレイヤーキラーこそ、ゲームの醍醐味でしょ? むしろ、それがなければ切磋琢磨が消えて横ばいだよ?」

「普通のゲームならという言葉がわかりませんか? これは、死ねばどうなるか分からないんです」


 アキが瞳を動かしてモルドレルドのプレイヤーマーカーを確認する。それは中立を表す緑色になっていた。


「相変わらず汚れ仕事は下にさせて、お前は高みから見下ろしてるだけかいな」

「リーダーが町に入れなくなったら元も子もないからね。騎士たちも納得してくれてるよ」

「その“アーサーごっこ”をやめーや気色悪い。お前は裏切り者の名前をもじっとるくせに」


 彼──モルドレルドは『ホーリー・ラウンド・ナイツ』のチームリーダーだ。円卓の騎士を現すチームのリーダーの名前が、何故裏切り者のモルドレッドから取られているか。今なら全員が口を揃えて説明できるだろう。

 強者を揃えて、プレイヤーを殺すことに情熱を注いだからだ。


「僕にそんなこと言って良いのかな? 重要な情報を持ってきたっていうのに」

「なんのことや?」

「どうせくだらないことでしょう」


 二人はため息混じりに相手にもしなかった。しかし──


 彼が映像を記録しておく結晶を取り出すと、二人は顔色を変える。


「これは下部チームのPK現場を記録したところなんだけどね」


 映し出されたのは、初心者村の近くにあるダンジョンの出口。


「初心者を出待ちキルかいな。狡いことしとんな」

「まぁまぁ見ててよ」


 出口から出た瞬間、村長らしき人を連れて飛び出した悪魔族の少女が現れた。彼女は教会からもらえる臭いシャツを羽織っている。

 プレイヤーたちの攻撃を躱しながら、村まで走り抜いた。


「いくら弱い奴らを当てたとはいえ、ただの初心者がこんなに綺麗にプレイヤーキラーたちを躱せると思うかい?」


 それも、出てくる前から出待ちを察知していた様子だった。

 彼女の動きに、二人はただ釘付けになる。


「ところで彼女、もうすでに初心者村から抜け出したみたいだね」


 その言葉は、空気の中に沈殿していく。

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