表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/107

第二十六話

 七柱と聞いてイメージするのはなんだろうか。

 ゲームの中でよく使われるモチーフは、七つの大罪といったところか。

 ベルフェゴールはそのど真ん中の名前、バエルはベルゼブブの別名。もしそれがかかっているのだとしたら、他の七柱も全員それの系譜の可能性が高い。


 ヒカルは宿のベッドに寝転び、不服そうに息を吐く。

 村の外から聞こえるのは、いまだにやまないプレイヤーたちの声だった。


 あのあと屋敷からは魔物が消え去っていた。ベルの姿もなく、正面玄関からも出れた。どうやら、一旦は撤退したようだ。彼女とはまたどこかで会う可能性もある。


 それから戻った村のプレイヤーたちは混乱していた。なぜなら最後の一文が他のプレイヤーにも伝わってしまったからだ。


 誰かがこの世界の物語を動かした。それはきっと攻略勢の目にもとまり、トップを走っていたつもりの人間たちも目の色を変えるだろう。


 ここで予想できるプレイヤーの動きは、一つ目は七柱について調べ始めること。二つ目がこの物語のトリガーを誰が引いたか確認すること。三つ目がより安全な地帯にこもり始めること。

 いずれにしても競争が必至な世界になってしまった。プレイヤー間の戦争は、もっと激化していくだろう。


「あークソが。迂闊だった」


 開発者は待っていたのだ。誰かが引き金を引く瞬間を。

 そのための三ライフ制という猶予だ。最初から、お互いを争わせるように設計されていたのだ。


 まず多くのプレイヤーが探し始めるのは、ヒカルの存在だ。当然、こちらから言わなければバレるようなことはないだろうが。もしもということがある。


 もしバレてしまったらどうなるか……。


 保護という名目で囲い込みが始まる?

 プレイヤーキルをちらつかせてでも、情報を取りに行く?

 最悪愉快犯から真相とともに葬られる可能性すらある。


 非常にまずいことになったとため息をつかざるを得ない。


 幸い、パーティーメンバーのミサキは状況がわかるのか口を滑らせることはない。むしろ彼女は言わないだろう。サクラも自分が怖い目に遭う選択はしないだろう。


 それでも、やりきれない気持ちが、心の中を渦巻いていた。


 とりあえず落ち着くかと、ベッドの上にあぐらをかいた。後頭部をかいて肩を大きく落とす。自分はリラックスしてると言い聞かせる。

 そんな彼女の尻尾は、忙しなく左右に動いていた。


 所持品を開いて、手に入れた剣を選択する。


『茨の剱。夫婦の盲信ともとれる愛は遅効性の毒となる。これに刺されたものは、少しずつだが確実に死に至らしめることができる』


 つまるところ、毒効果を付与できる剣ということだ。傷ついただけでも、致命傷になり得るユニーク武器といったところだろう。

 続く説明にはこう書かれている。


『第七の柱の喉元に喰らいつくための剣。唯一の弱点になり得る。ただし、今の状態では弱すぎて使えない』


 つまるところ、設計者はこう言っている。

 特攻武器をお前にやるから、これを強化していけと。実に上から目線で腹立たしいことだ。


 しかし、何も手がかりがないよりはマシかと割り切るしかない。いずれにせよ、情報のアドバンテージがなくなった今、他のプレイヤーと違って有利な点はこの剣の存在しかないのだから。


 ノックの音が聞こえて、ヒカルは剱を所持品にしまった。


 返事をすると入ってきたのはミサキとサクラだった。彼女たちには外の様子を見てきてもらっていたのだ。


「それでどうだった?」


 あれから数時間は経っている。それなりの変化は起こっているだろう。


「見知らぬ人が何人かいたっすね。見覚えのある旗を掲げてはいたっす」

「け、剣を重ねたような紋章です」

「多分あれは攻略勢の中で今一番人を集めているチームっすね」


 そりゃそうなるだろうなと大きくため息をつく。


 人がいるところはまず人海戦術に打って出る。今行けるすべての街や村に人を派遣することだろう。

 この初心者村にまで派遣してきたということは、そのチームはかなり大規模なものになる。


「プレイヤーキラーに攻略勢……。気分は四面楚歌だな」

「あはは、まさしく言い得て妙って奴っすね」

「笑えねぇよ」


 本当に笑えない。心の中で大きくため息をつく。


 この村から出るのも難しくなったといったところだ。今動き出せば、目立つことは間違いない。今この初心者村から出ようとする人間なんて、何かを知っていると思われる。

 しかしだからといって、停滞している時間もないと来たものである。


 まさしく手詰まり。そう考えた時に、まだ所持品に残っているあるものが目に入った。

 それは下水道に入るための鍵だ。そう言えばこの鍵を持っているのは、自分だけだったことを思い出す。


「なぁサクラ」

「は、はいです?」

「下水道ってまだ隅々まで調べてないよな?」

「は、はいです。あのときはネズミの大群に追われてましたです」


その言葉を聞いて、行ってみる価値はあるかと考える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ