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Dreaming Maker Memories  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
26/33

二十五話 どこまでも輝かせてよね

Rock'in Heartの二人の出演したCMが大反響。皆頭からCMが離れなくなっていた。世奈もDreaming Makerのメンバーたちに負けずに頑張ってもらいたいと仕事を受けてもらうことにしたが、内容に難色を示すメンバーも。

「あーさどれフレッシュやーさいだーよっ♪こーくさん玉ねぎドババのバー♪朝採れドレッシング♪はいっキューティー♪」

「あーさ…」

「そこまでー!」

この謎めいたフレーズが頭から離れない現象、街でも起きているようだ。レッスン室でもメンバー皆その歌を歌っていた。ドレッシングのCMの歌、そう、Rock'in Heartの出演したCMの歌が皆の頭から離れなくなっているのだ。

「俺はCMを見てドレッシングを買いました。あの歌を聴くと購買意欲も湧きますよね。発売元、キューティーの株を見ていたら右肩上がりでしたよ。」

と千鶴くんが言う。癖になるCMソングを聴くと確かに購買意欲も増すのが分かる。そしてそれに関連した、二人の出演するイベントも行われるそうだ。私もこっそり覗きに行こうかと考えている。


イベントの日は私のオフの日だった。キューティー株式会社のお偉いさんとのトークショーだそうだ。私も後ろの方から見守ることにした。…この時点で私は彼女たちを取り巻く環境の変化に気づいていた。結成当初は大地から聞いた話だが、段ボールの上で歌うような人気の無さ、彼女たちが歩けばたちまちシャッター街、という不名誉な肩書きさえ事務所内で囁かれていたくらいだったらしい。それが今はどうだ。最前列に如何にもなアイドルオタクの風貌をした中年男性がぎゅうぎゅう詰めになって座っていた。手にはうちわとか、アイドルオタクらしいグッズが握られていた。あのCMでこんなに彼女たちを取り巻く環境が変わっていった。彼女たちは折れたり曲がったりせずに、きっとこれからもまっすぐ突き進んでくれると思うが。


しばらくして彼女たちがステージに登場すると、拍手と歓声が会場を包んだ。彼女たちの表情を見ていると、おっかなびっくりといった感じに強張っていた。流石の灯ちゃんもこんなに大勢に歓迎されると緊張もしてしまうのだろう。カチコチな動きになりながらもステージ中央の椅子に腰かけた。

「今日はよろしくお願いします。」

「よ、よろしくなー!」

二人は徐々に調子を取り戻し、トークに熱が入っていった。大手メーカーのイベントだからか、カメラもたくさん回っていた。これは明日の朝にニュースのエンタメコーナーで取り上げられるだろう。


イベント終了後、私は会場裏で大地と久し振りに顔を合わせた。大地も満足そうな顔をしていた。

「二人のこと、もう我が子のように可愛がっていて。愛しい子供達がステージでこんなに輝いてくれて、感無量です。」

「私たちもライバル、そして友達として応援させてもらうよ!負けない気持ちで頑張るからね!」

そう言って大地と拳を突き合わせた。




そんな楽しいイベントの余韻に浸っている間も無く、私たちも準備に追われていた。雪室くんや花咲くんの必死の説得で明石くんも渋々頷いた。ミステリー冒険バラエティの番組への出演が決定した。収録リハーサルも日に日に近づいてきていた。明石くん、ここ最近いつにも増して不機嫌そうだ。

「明石くん、そんなに不機嫌そうな顔をしないで。どの辺が気にくわないんですか?」

私の問いかけに明石くんは台本を指差した。

「ここ、つい昨日訂正されたところだよ。朝採れドレッシングのフレーズ使われてんの。なんで他事務所のアイドルの真似しなきゃいけないわけ?」

野菜の着ぐるみを着て登場するシーン、セリフに朝採れドレッシングのフレーズが使われていた。これは昨日番組プロデューサーからの指示で変更された部分だ。確かに私も少し引っかかってはいた。

「まぁ流行りに乗っておいていいんじゃないですかね。私たちもその内CMくらい…」

そう言いかけたところで明石くんが立ち上がってこちらに背を向けた。そして肩をすくめ、一度こちらを振り返った。

「屈辱的だし大人たちに不信感も覚えている。俺たちはあいつらのお飾りか、大人たちのおもちゃにしかなれない気がするよ、このままじゃ。」

「…俺も正直少し思っていたよ。これは俺たちの魅力じゃないような、誰がやってもいいような、そんな気がする。仕事は全力で受けたいと思うけど、この台本には難色示しちゃうよ。」

久瀬くんも明石くんの言葉に続けた。

「…あの、私が番組プロデューサーさんに言いますね、貴方たちの意見。今から大幅に収録内容が変わったとしても貴方たちならできます。だから、なるべくたくさんテレビに映ってください。貴方たちを待っているのは世界にたった一人とかじゃないんです。今はまだ少ないけど、少しずつファンは増えていますから。」

「…よろしく。俺たちをどこまでも輝かせてよね、マネージャー。」

その言葉に私はうんと頷いた。目の前にそびえ立つ壁は、想像以上に厚いものだったが。

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