二十四話 下積みなんてこんなもん
Rock'in Heartの二人のドレッシングのCM出演がDreamingMakerのメンバーにも伝えられる。メンバーも負けていられないと意気込んだ。仕事はなんでも受けたいと思っていたが、その矢先に舞い込んできた仕事に圭人たちは難色を示す。
後日、Dreaming MakerのメンバーにもRock'in HeartのCM出演の知らせが知れ渡った。
「すげー!お姉ちゃんたちやるじゃん!」
「ドレッシングのCMらしいな、食べ物のCM、俺も出たかったが先を越されたか。」
「親友でありライバルの彼女たちのCM出演、おめでたいです!もちろん私たちも負けてられませんから、仕事はなんでも受けるくらいの気持ちで臨んでくださいね!」
そのドレッシングの販売元は日本ではかなり有名でメジャーなメーカーだ。これは二人の名も広まるだろう。
その日のレッスン後、帰ろうとしていた織くんを捕まえてなんてことない日常の話を聞かせてほしいとお願いした。
「あ?なんだそれ。そんな話して何か楽しいかよ?」
「私が奢るって言ったら着いてきますか?」
「おう!さっさと行くぞ!」
織くんは色々単純で扱いやすい。織くんを捕まえて近くのカフェに立ち寄った。
「お、おい…俺こういうオシャレな雰囲気苦手なんだよ。とんこつラーメンとか天丼とか食いたいんだけど…」
「お財布的にオレンジジュースしか奢れませーん。」
「おいっ、俺がそんなお子ちゃまの飲み物飲むかよ!アイスコーヒーだ!ガムシロも何もいらねぇからな!!」
そう言って出てきたアイスコーヒーを飲んだ織くんは苦いとでも言いたそうな顔をしていたが。
「織くんは元々ダンススクールに通ってたんですよね。」
「おう。小学校入る前から居たな。自分で言うのもなんだけど、俺が一番上手かった。可愛い後輩もいて毎日可愛がってあげてたぜ。それで、俺がDreaming Makerに入ることになって皆行かないで、だの寂しい、だの言ってきたんだ。俺も可愛い後輩との別れには心残りがあったけど、千尋っていうガキが『僕は寂しくない、これから僕がこのダンススクールを引っ張っていくから振り向かないで行っておいでよ!雄大くんらしく活躍してくれたら僕たち嬉しいよ!』って言ってくれたんだ。他の奴とは少し違うところもあって、あいつは将来化けると思ってる。名前覚えても損はないぜ。」
千尋くん、という名前が出てきた。織くんの一番の後輩なのかな。やっぱりこの間のRock'in Heartの二人と話した時と同じで、楽しい話って話す側も聞く側も幸せになれるんだなぁと実感した。織くんも調子付いてアイスコーヒーをストローも使わず飲み干した。一気飲みして噎せていたけど。
それから数日後、Dreaming Makerの八人に一本の依頼が舞い込んだ。シャインエール・プロダクション社内でも話題になっていた。その内容には皆珍奇の瞳を向けていたが。なんでも受ける姿勢、と言ったのだからこれも受けてもらいたいが、皆に伝えたらどんな反応されるのだろう。後日、勇気を出してメンバーに依頼内容を伝えることにした。受けるか否かは皆で重々に相談して決める。
「…というわけです。こんな仕事が舞い込んだわけですが、皆さんどう思いますか?」
メンバーに話を聞かせると、意外にも乗り気なメンバーもいた。いたが、リーダーの明石くんが難色を示していた。こんなに嫌そうな顔の明石くん滅多に見ない。
「俺は断る。アイドルの仕事じゃないでしょこれ。イメージダウン間違いなしだからもっとまともな仕事請け負ってよマネージャー。」
「えー!すげー楽しそうじゃん!それにロキハのお姉ちゃんたちももうCM出るの決まったんだから俺たちも追いつかないと負けちゃうよー!」
「まともな仕事で俺たちは追いつく。とにかく、この仕事は蹴って。」
明石くんの意思は固いようだ。そもそもどんな内容の仕事かというと…
「ミステリー冒険バラエティの『バラエティ』に当たる部分を俺たちにやってほしいってわけだよね。着ぐるみ着たり、ギャグやったり。これは圭人の言う通りアイドルの仕事じゃない。なんかこう、雑誌の仕事とかは無いの?」
「雑誌の仕事も来月のアイドル特集に貴方達八人を推しているところです。それは何事もなければ依頼としてやってもらいます。でもそれも来月の話。今月はこのバラエティ出演以外今のところ予定ないんですよ。下積みなんてこんなもんです。私も長年下積みアイドル見てきましたから。折れる子も羽ばたく子も様々です。」
「長年って、相変わらず年齢不詳ですよね。」
「無駄なところに突っ込まない!…とにかく、早いうちに皆で相談して考えてみてください。あと二日で決めてくださいね。」
またバラバラになりかけている気がするが、彼らに後は任せることにした。そして今日は、Rock'in Heartの二人のCM撮影の日だそうだ。メンバーと一緒に成功を祈っていた。大地には終わったら教えてね、と声をかけていた。
そろそろ二人のCM撮影も終わる頃かな、とメンバーの様子を見ながら携帯を気にしていた。すると携帯が震えた。私は一度レッスン室を後にして電話に出た。
「もしもし、大地?二人もいる?」
『ええ、今CM撮影が終わったところで二人もリラックスしていますよ。電話変わりますね。』
『もっしー世奈マネ!!終わったぜー!やっとこのフリフリワンピから解放される!!ジャージに早く着替えたいぜ!!』
灯ちゃんは相変わらず元気そうだ。フリフリのワンピースを着ているらしい。
『もしもし、マネージャーさん。やはり初めてのCM撮影ですからカットもたくさん入って訂正したりしましたが、手応えはありました。今月中に放映されるので、楽しみにしていて下さいね。』
伶奈ちゃんも満足そうな顔をしているのが電話越しにも伝わった。二人とも手応えはあったようだ。そのCMの放映後、彼女たちがどうなるのかはまだ誰も知り得ないだろう。




