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Dreaming Maker Memories  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
17/33

十六話 たった一人のマネージャー

マネージャー慰労の会と称されたパーティを遂行した。世奈は皆の気遣いに感謝しつつも疲れ果てていた。帰りの公園で思い切り泣きじゃくると、凰太のお母さんが心配した様子で世奈から話を聞いた。

ポカンとする私に構わず皆「さあさあ食べて!食べて嫌なこと忘れちゃって!」と料理を目の前に突き出す。

「パーティ開いたら、疲れ気味のマネージャーの慰労もできるし、俺たちも腹いっぱいで楽しいし、一石二鳥だな!」と織くん。なるほどそういう魂胆か。いや、正直に言うと、こんなことされると余計に疲れるんだけど…でも、皆私のこと気遣ってやるべきことをやろうとしてるんだ。ありがたい。疲れを顔に出しちゃいけない。笑顔、笑顔。

「ちょっとちょっと皆、マネージャーさんこんなに食べれないわよ!ねぇ?」「…いえ!今日は食べて全部水に流します!残さず腹いっぱいになりますから!」お母さんにも心配されたが、もう細かいことを考えるのをやめて食べて忘れて、皆と和気あいあい楽しむ気持ちになろうとした。皆私を怒らせないように顔色伺い気を使いつつも、大騒ぎしてパーティの時間が過ぎていった。

「俺そろそろ帰らなきゃ…」いつのまにか9時が近づいていた。花咲くんを早く家に帰してあげなきゃ。

「ここでお開きにするかい?」「うん、そうだな。」「マネージャー、楽しんだか?」次々飛び交う言葉に頭がいっぱいになりつつも、「楽しかった、明日から頑張れそうです。」と答えた。自分の心の底を覗きたくなかった。このパーティで疲れているとしたら、せっかく企ててくれた皆に失礼すぎる。疲れなのかなんだか涙がこみ上げてきたが、笑顔を取り繕う。

「それじゃあ、バイバイ!」皆久瀬くんの家を出た。私も最後に「お騒がせしました。」とお辞儀して帰路に着いた。

「マネージャー、今日はゆっくり寝てね。」久瀬くんの声を背に歩き出し、すぐ近くの公園のベンチに腰掛けた。腰掛けた途端、大粒の涙が出てきた。この間泣いたばかりなのに、情けない。そのまま嗚咽を漏らし、うつむき泣いていると、足音が近づいてきた。顔を上げると、久瀬くんのお母さんがこちらを心配そうに見つめていた。

「お隣、いいかしら?」


「差し支えなかったら、何があったのか教えてくれるかしら?」その問いに言えることを全て伝えた。全て伝えると、無言で抱きしめられた。こんなに暖かく抱きしめられるなんて久々で、また情けないことに涙が止まらなかった。

「うんうん、情けなくなんかない、人間なら、困って泣いて、人に相談するのは当たり前よ。」心の声を読まれているようだ。この人になら、少し心を預けてもいいのかな。

「ちょっと昔話してもいい?凰太が小さい頃のお話。」懐かしむ顔で、お母さんは空を見上げた。

「私今はWEBデザイナーをしているんだけど、若い頃は漫画家を目指していたの。毎日締め切りと葛藤していたわね。」「へぇ…。」「何をやっても鳴かず飛ばずだった。私の元同級生、同じく漫画家志望の子がいたけど、その子は編集部からも絶賛されて今有名雑誌の表紙を飾っているわ。たくさんファンがいる。私は無力と痛感した。誰かを喜ばせるために描いていた漫画だったけど結局自己満足なんじゃないかって。そのままWEBデザイナーに転向した。でもね…」一旦話を区切って手を胸に当てた。

「私が思っていた以上に私ってすごいことをしていたみたい。ある日凰太が私の部屋を漁って漫画を見つけたの。私はとても怒って漫画を破ろうとした。その時凰太はなんて言ったと思う?『ママの漫画、僕大好きだよ!こっそり持って行って学校の皆に見せたけど、皆面白いって言ってくれたの。だから捨てないで。』って。知らず知らずのうちに、私は誰かを喜ばせていた。現役時代夢見ていた、誰かを笑顔にさせることができていたのよ。」そう言ってもう一度抱きしめてくれた。

「さっき凰太から『マネージャーに伝えてほしいことがある』って聞いたの。『性格もバラバラの俺たちをつなぎとめてくれたのは、実力も様々な俺たちをそばで見つめて親身に育ててくれるのは、俺たちが真っ先にパフォーマンスを届けたいのは、一番愛しているのは、たった一人のマネージャーだ。今日は無理させてごめん。俺たちなりに考えたけどやっぱり無理させちゃったよね。気持ちが元に戻るまで待つ。だからまた俺たちを育ててくれるなら、全力でそれに応える、成長してみせるから、どうか安心して。』…って。あなたが思っている以上に、あなたって彼らを作り上げているのよ。」その言葉にホッと安堵し、笑顔が戻ってきた。

「ありがとう、そう思ってくれるなら、私頑張れる!もう憂いに浸ってなんかいられない!また次に君たちに会う日が楽しみになってきちゃった!」立ち上がって空を見上げた。都会の濁った夜空だったが、雲一つなく月が輝いていた。

「母さんどこ行ったんだ〜?」お母さんを探していたらしい久瀬くんが呼びかけながら歩いてきた。

「これでいいかしら?気をつけて帰ってね!」「はい!今日はありがとうございました!さようなら!…ねぇ久瀬くん。」帰り際、久瀬くんの前に立つ。

「私を救ってくれてありがとう。」はっきりと感謝を述べた。久瀬くんは照れくさそうな、嬉しそうな顔で頭を掻いた。

「夜道には気をつけるんだよ!」その声を背に歩き出した。

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