十三話 すっぽんぽんの病人
逃げ出した、というより永遠なりの考え、思惑があったからこその行動だった。メンバーの結束もより深まり、明日からさらにレベルアップに向かっていける…はずだった。朝、雄大と天の前に横たわったのは「すっぽんぽんの病人」だった。
「おいおい、一体何してたんだよあんな山奥で。」「しっかり説明してもらうよ。」皆呆れたようなご立腹のような、そんな様子で声をかける。
「マネージャーさん、泣かないで…」雪室くんが心配そうに声をかける中、私は堪えきれずずっとずっと涙を流していた。
「…決して自分が嫌いだとか、皆が嫌いだとかじゃないんです。自分を応援してくれる人がいるのかは、ずっと不安だったけど。だからこそ考えて、行動を起こそうと思って。」言葉を区切り、蔦屋くんは胸に手を当てた。すっと息を吸い込んだ。
「皆に負けないために、自分を鍛えようと思ってレッスンメニューを考えていたんです。」そう言って蔦屋くんは雨に濡れてぐしゃぐしゃになってしまった紙をポケットから出した。文字もほとんど雨に溶けて消えているが、一番上にデカデカと書いている文字だけが読むことができた。
「皆でチームになるための特訓…?」「最初は、上手くなるための特訓って書いたんですけど、一人で頑張っても限界があるかなって思って、…こんなに迷惑かけて、皆僕に協力してくれるか分からないけど、皆でできる特訓を考えました…」「だからって外に出てまですることじゃねーだろ。」「いや、皆に見られたくなくて…」「それでこんな迷惑かけるような真似してまでレッスンとやらを考えたわけ?本当にもう誰も協力してくれないかもよ?」「…そうだよな…」織くんと久瀬くんに諭され、しゅんとなる蔦屋くん。でも何も間違ったことは言っていない筈だ。
「蔦屋くん、その特訓、教えてよ。皆に。」「マネージャー?もうさっさと帰ろうよ。蔦屋が悪いことしたのは事実だし…」「悪くなんかないよ。これは蔦屋くんなりのやり方なんだ。ありがとう、諦めずに頑張ってくれて。」気がついたら蔦屋くんを抱き寄せていた。自分を見つけてくれて、皆を大切にしてくれてありがとう。その気持ちでずっと抱きしめた。その後特訓の内容を話してくれた。二人組や三人組で行う特訓。二人三脚とか、水中息止めとか、正直意味はよく分からなかったが、きっと何かにつながるような気がした。明日からの特訓、ちょっとメニュー変えさせてもらおうかな。
「皆、部屋に戻ったらもう一回お風呂入って、髪をしっかり洗って寝るんだよ。おやすみ。」そう言って皆と別れ、私もお風呂に入ろう、と思ったが服を脱いで下着になったまま、布団に倒れこんでしまった。その先の記憶は残っていない。
…時計を見た。朝7時?もうご飯だ、急がなきゃ!と立ち上がろうとしたところ足に力が入らない。頭もボーッとして…顔が熱い?ぐったりした倦怠感もあり、その場から動けない。
「マネージャーさん?ご飯だよ?」「寝てんのかー?起こしに来てやったぞー。」御影くんと、織くん?今すぐ出て行きたいけど、体が動かず、声も出せずに、それでもなんとか立ち上がってドアを開けた。
「あ、マネージャーさん。」「おせーぞ、一体何して…っ!?」二人は顔を手で覆い隠し後ろを向いた。え?どうしたの?…あ。下着のままだ。それすらボーッとして考えていなかった。
「ああ、ごめん、ちゃんと着替えて…着替えて…」そう言って部屋に戻ろうとした時、耐えきれず倒れこんでしまった。
「マネージャー!?おい、起きろ!あと服着ろ!!」「伶奈さんと灯さん呼んでくるね。ここで見張ってて。」「おいっ、逃げんな!こんなすっぽんぽんの病人見張ってろってかー!?」そんなやりとりが聞こえた。そこから先は何も聞こえなかった。
しばらくして目を覚ました。今度は服をちゃんと着ている。おでこには冷えピタ、ってここ病室?外を眺めてみると山。ちゃんと宿泊施設内だ。
「目を覚ましましたか?」声の方を振り向くと、大地とRock'in Heartの二人。反対側を見ると看護師さん。
「私、何して?」「熱を出して倒れていたので、一旦病室に運び込みました。」「昨日の夜、蔦屋を探して全員で外出たんだろ?あたしたちは『これ以上人数が増えてもしょうがないから待っていてくれ』って言われて足止めされて、外には出なかったけど。それで雨に濡れて、熱出したんだろ。」灯ちゃんの言葉になるほど、と納得した。
「それでなんですが、合宿期間を明日までに縮めることにしました。明日の早朝に帰ります。今日一日は、Dreaming Makerさんも僕が面倒を見ますので、病室から出ないでください。」え?それはちょっと…昨日せっかく頑張るって皆で結束しあったのに…
「嫌、それは嫌。なんとしてでも私が面倒…ゴホッ、ゴホッ…」「病人は無理すんな!明日帰ってからもしばらくは休養とって、メンバーに心配かけんなよ!」それはそうだけど…
「まだ何か言いたげな顔をしていますけど、ダメなものはダメです。メンバーのためを思ってくださいね。」そう言って三人は病室を後にした。…そ、そんなぁ〜!!




