十二話 迷宮なんて打ち壊せ
朝から永遠だけ浮かない様子だ。でも自分の力で解決させようとあえて口出しはしないでおいた。しかし夜寝ようとした時、永遠がいなくなったという知らせでDreaming Makerメンバーと世奈はどこかに逃げた永遠を探すことになった。
「おはようございます!今日は料理が得意な遠山くんが皆さんの朝ごはんを作ってくれましたよ!」「ぜひ残さず食べてくれ。」皆目を輝かせる。遠山くんも満足そうだ。…そんな中、まだ引きずっている様子の蔦屋くんだけが箸の進まない様子だった。また個人面談…とも思ったが、いい加減自分の力で解決してもらわないと、レベルアップに繋がらない。私だけがあれこれ手出しするのもしばらくやめにしようかと思ったので、蔦屋くんが立ち上がったタイミングを見計らって皆には蔦屋くんにあれこれ口出しはしないでおいてと耳打ちしておいた。
午前のレッスンが始まった。ここ数日見て思ったのは、個人の得意なスキル不得意なスキルがさらに明瞭になってきた、ということだ。色々手を伸ばしてみれば、粗も出てくるということか。一人でも欠けてはいけないと、再確認させられた。今路頭で迷っている蔦屋くんにも輝く原石がある。見えるのだ。君は誰よりも真面目でちょっと堅苦しいところもあるけど、誰かを笑わそうと一生懸命なんだ。まだ形にはなってなくても、その熱い気持ちが胸を打つ。君のことが嫌いな人がたくさんいても、私は、ここにいる皆は君を大切な仲間、欠けてはいけない存在だと認識してるはずだし君を嫌いになったりなんかしないよ。私もエールを送り続ける。今はこの気持ちをぎゅっと胸の奥に閉じ込めて、あとは蔦屋くん本人に任せよう。迷宮なんて打ち壊せ。その輝きがあればできるはず。
その日もレッスンを終え、今日は誰かを呼び出したりは特にしていないので早めに寝ようかと思っていた。が、私の部屋をノックする音が聞こえた。こんな時間に誰?
「誰です…」「マネージャー、大変だ。」緊迫した顔の7人。蔦屋くん以外のDreaming Makerメンバーが揃っていた。
「一体何事ですか?蔦屋くんは?」「その蔦屋がいないんだよ。どこ探してもいない。マネージャーも手伝ってくれ。次は外を探す。」緊急事態だ。まさか逃げ出した?こんな山奥からどうやって?命に危険が?とにかく考えている暇はない。私はスリッパを履いて急いで外に出た。
「花咲くんと明石くん、私と一緒にこっちを探しましょう!」「分かった!」「ツタ兄どこ〜!!ツタ兄〜!!」何手かに分かれて広大な山を探し回った。あまりにも広いから見つかるまで時間かかりそうだし、皆が立ち寄れない危険な場所に行っているかもしれない。そうなったら私が迷わず危険を顧みず進むしかない。怖いとか考えられない。私がこの子達の未来を守らなければいけないから。
「ここから先、急斜面で岩が尖ってる。花咲、俺に乗って。」「うん!」先の道はとても急斜面。岩が鋭く尖っている。この先に進むのは相当きつそうだけど、この先にいるのなら救い出すしかない。
「マネージャーも背負いたいところだけど…」「いいです、私は大人、これくらい平気…」と言いかけたところで足場の岩が欠けた。間一髪手は岩を掴んでおり落ちてはいないし、まだ登り始めたばかりだからそんなに地面と離れてもいない。ふぅ、と息を漏らした。そのまま先に進んだ。
「穴の空いた岩場だらけだ。ここならどこかに隠れてそうじゃないか?」「ツタ兄〜!!」
登り切ると穴が空いた洞窟のようなものがたくさんある場所。確かに隠れるなら絶好の場所だ。
「ここからは更に二手に分かれましょう。明石くんと花咲くんはそちら側から、私はあちらから見て回ります。」二手に分かれ捜索を開始した。
「ここもダメ、か…」あっちもこっちも洞窟だらけで全てを見て回りきれない気がする。次の場所に行くしかない。
「…んん?ここ、洞窟、だよね?」するとなんだか不思議な、不自然な洞窟を見つけた。入り口が岩で覆われているけど、小さい小石のような岩ばかり積み上げられてて、あと隙間も空いている。きっとここに隠れている。岩を取っ払うところから始めた。
「蔦屋くーん!ここにいるんでしょー!?」時折声をかけながら岩を払いのけた。しばらくして入れるくらい穴が空いたので先に進む。真っ暗で辺りが見えなかった。だが、気にせず前に進んだ。しばらく歩いていると、頭にぽたりと水滴が落ちてきた。夢中になって気がついていなかったが、耳を澄ましたら雨音がした。早くしないと風邪を引かせてしまう。その一心で走り出した。前が見えずに時折岩の壁にぶつかりながらも、どんどん先に向かって走っていった。すると、月明かりが見えてきた。出口か。この先にいたとしたら、もう頭の中ぐちゃぐちゃになりながら一歩踏み出した。すると、
「…ごめんなさい。」「ツタ兄…」「蔦屋、一番謝らなきゃいけない相手が来たぞ。」土砂降りに負けないくらい涙を流し、履いていたスリッパを手に持って思いっきり頭をひっぱたいた。
「バカ!ここで何してたの!皆のところに帰るよ!」皆に報告するために、蔦屋くんたちを連れて来た道を戻っていった。




