また会おう、その時は絶対ナツ! 六十球目
六十
小想が間髪入れずに続ける。
「しかしそれはあくまで〝治療法が確立されている〟ケースでしょう。この世にはまだ原因が解明されていない難病が山ほどあります。その病を一つ一つ、何年もしかすると何十年と時間をかけて、たくさんの研究者の方が頭を悩ませながら試行錯誤を繰り返して、臨床試験、厳しい国の審査の突破。一つの病魔と戦う労力が果てしないです。あまつさえ、進捗状況、研究の見込みがないと判断されれば、問答無用で費用の削減、最悪打ち切られることもあるみたいです。現場にやる気があっても金銭面で停滞する、自腹を切って少人数で続ける現実もあると聞いたことも。数十年かかる理由はここなのかもしれません」
よくわからんまま、ただただ耳を傾ける僕。
それと同時に小想の知識のゾーンはどうなっているのか、と興味が出てくる。
ふと疑問に思う。もし、このまま僕が止めないで聞き手に回ったままでいると、小想は持論を延々展開していくのだろうか。
さすがにそれは、見えない誰かの負担が耐えられなくなる気がする。
ない頭を悩ませながら、付け焼き刃にも満たない知識を頼りに意味のわからない、検索で出てきた単語を羅列しただけの、医療業界の事情やらに土足で踏み込むような、間違っていたらどうしようとビクビクするの明後日の方向な気がした。
てなわけで可及的速やかに本筋に帰りたいところだ。
「そこまでやっても不治の病は存在しますし、病の種類はどんどん増えていく一方。中には希少だったり、後回しにされることも珍しくありません。それはまるで、迷宮入りした事件ファイルの行き着く先にある暗所の収蔵庫で、静かに眠りにつく眠り姫みたいな扱いを受けることになります。だからと次いつ起こされるかも不透明で、年月と共に忘れ去られる小さな存在になっていくことでしょう」
少し憂いを含ませた表情をする。
声のトーンから抑揚まで語り口が褒められるほど上手い。
謎の名残惜しさが生まれるが小想にストップをかける。
「ドラマや映画でこれらを題材にした作品がたまにありますが、現実はよほどのきっかけや類似した事件、カルテに遭遇しないかぎり再調査されることはほぼありません。天文学的な確率に懸けるなんてバカげている発想に過ぎません。それでも一縷の望みを信じる方がいて、可能性を捨て切れない方が関係者含めてもたくさんいらっしゃると思うと人類の進化とはなんだろう、って。必要なときに必要な分だけ投資するのが科学医学なのか、って疑問を感じざる得ないと言いますか――」
「――小想、そこまでにしようか」
「よ、夜夏さ――……あ、す、すみません……」
呼びかけが届いたようで正気(?)にすぐ戻った。しかし、小想はまだ語り足りないようで一瞬、僕の制止を振り払う言葉が出かかる。どうやら一度熱が入ると、アクセル全開で、右左確認をしなくなるレベルで突き進んでしまうみたいだ。
これが会話に限った話か、物事行動にも発動する性質なのか。気になるところだ。なんだか僕、小想に興味持ちすぎているような。いやまあ、面白い子たちだなー、とは思う。真卯雪華も入れて。
「脱線してしまったし、この話のオチまでを簡潔にはしないけど、手短にしよう」
「す、すみません……」
「いいよいいよ、僕も聞き入っちゃったし」
ヒメたちの勝負もそろそろ終わりそうだ。相変わらず莉乃の声が喧噪の中で目立って響いている。
「僕は視線を逸らした。Fさんが気づいたかは、このときの僕にはわからなかった」
次回から本筋に(本筋からズレた話からズレた話を修正した話)。
たまには一近について。
この先の展開として、まずこの夜夏と小想のトークを終わらせたあとは別に行われている対決にも多少なり、触れる。いや、だいぶ触れる感じになると思いますが、ここからさらにダイジェストにしたとしてもかなりの量と時間を使ってしまうのは過去の経験からしても明らか。
それをわかっておきながらそれ以上に脱線してしまいそうですが、その時はお付き合いください。多分、ヒメらの対決は残り一回とかに留めたいと思います(ネタバレ)。
次は、普通に夜夏とFさん(正体バレバレ)の続きです。もうできてます。
友城にい




