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ep91 ブラコン少女

 商店街にある昔ながらの純喫茶カメリアは知る人ぞ知る名店だ。老齢の店主、椿(つばき)花代(かよ)が切り盛りしている。


「あら、圭哉ちゃんに蒼ちゃん。いらっしゃい」


 純がお詫びに奢ると言った店は蒼と圭哉の顔見知りの店だった。というよりも、この近くに家のある蒼達にとって、商店街は学校の遊び場で商店街で昔から店を経営している店主はほとんどが顔見知りだ。


「久しぶり、ばーちゃん」


 相変わらず年齢を感じさせない若々しい立ち振る舞いに元気そうだなと蒼は嬉しく思う。


「知り合いの店だったの?」

「うん、商店街(ここ)の店主はだいたい顔見知り!」


 純の疑問に蒼は笑顔で答える。それに捕捉するように圭哉が口を開く。


「だいたい商店街のみんなは蒼を餌付けしてるんからな」

「あー、確かに。前、八百屋の店主さんが新しく店を開く方に蒼は懐くまで時間のかかる猫だが、餌付けは効果的って話しているの偶然聞いたな」

「何、その聞きたくない情報!?」


 圭哉と清隆が捕捉するように呟く。清隆は明らかに面白がっている顔で蒼を見ていて、腹黒めと蒼は内心で悪態をつく。


「えっと……7名様でいいですか?」


 花代は人数を数えて微笑む。純が頷くと、空いている席に案内してくれた。4人がけのテーブル席2つをくっつけて蒼達と当夜達に別れて座る。いつもの事のように何故か清隆は蒼の前に陣取る。そんなに蒼の行動を楽しむ気かと蒼は少し納得がいかない。

 カウンターに戻っていた花代がメニューとお冷、おしぼりを持って戻ってきて、机の上に置く。


「ありがとうございます」


 翼がお礼を言い、それぞれの前にお冷とおしぼりを回していく。


「メニューが決まったらまた教えてください」

「俺はいつもの!」

「わかってるよ、蒼ちゃん」


 花代に蒼は元気に言う。花代もわかっているようで、微笑む。そして、蒼以外の6人はメニューを見てそれぞれ注文する。


「まず、自己紹介したほうがいいかな? 俺らは全員流星学園の1年で俺は、三好純。で、こっちのさっに君にぶつかった馬鹿は結城当夜」

「誰が馬鹿だ!」


純が自己紹介を開始する。するとやっと蒼と当夜達が話していた理由がわかったと言うように翼が笑う。


「あっ、そう言う流れだったんだ。私は九条翼っていうのよろしくね、でこっちのしーちゃんは」

「あの、もしかして月詠の巫女さんですか?」


 翼が詩織の紹介をしようとしたところ、少し遠慮しながら清隆が詩織を見ながら口を開く。


「あっ、はいそうです」

「やっぱりそうでしたか。月詠神社の祭りで神楽舞ってましたよね」

「はい」


 清隆はやっぱりそうだと笑顔だ。蒼は月詠の巫女ってなんか聞いた事があるなーと思いながら手を上げる。高校生組が自己紹介したのなら、次は自分だろと思った。


「俺は椎名蒼! 御影中学に一応? 嫌々? 通ってる」

「なんで、そこが疑問系なんだよ。本当に蒼が迷惑かけてすんません。俺は師崎圭哉です。俺も御影中の2年で、こっちが部活の先輩の雪村清隆先輩です」


 蒼が自分の言葉に首を傾げながら話すと圭哉がおいっとツッコミを入れる。間違ってないだろと蒼は不貞腐れる。そして圭哉は清隆の紹介もする。清隆はいつもの笑顔で頭を下げる。

 そして、翼を見て何かに気づいたように口を開いた。


「あの、もしかして九条さんは九条(たつみ)先輩と兄弟だったりしますか? 似てる気がしていて」

「えっ、雪村くん、巽知ってるの? 私、巽の双子の姉です」 


 巽という単語を聞いた瞬間に翼の目が輝いた。それを見た瞬間に当夜と純がギョッとした顔をした事に蒼は気付いた。しかし、清隆は気付かなかったようで話を続ける。


「やっぱりそうですか。巽先輩には委員会でお世話になったんです」

「そうなの?」


 懐かしそうに清隆が微笑む。その表情は巽を慕っているように見えた。珍しいなと蒼は清隆を盗み見る。普段は後輩や同輩と一緒にいることが多く、部長ということもあり裏の顔がどうであり、しっかり者のイメージがあった。

 蒼は普段楽しそうに揶揄ってくるがどこか大人びている巽が年相応に後輩をやっていたんだなと以外に思った。

 

「はい。巽先輩、いい人ですよね」

「そうなの! いい子で頭も良くて思いやりもあって、目に入れても痛くないというか!! 巽、私のこと何か言ってた?」


 テンション高く話す翼に圭哉以外の5人が呆気に取られる。さっきまで笑顔の怖い優しいお姉さんかなと蒼は思っていたが、これはすごいブラコンなのかもしれないと圭哉と目配せする。


「兄弟の話が出た時に1度話題に出ただけですが、性格は難があるけどすごく優秀で自慢の姉だと言ってましたよ」

「自慢の姉! 今日は記念日だよ。ありがとね」


 嬉しそうに光悦とした表情の翼を見て、蒼は隣に座る圭哉に小声で話しかけた。


「ねぇ、ゆきさん今性格に難はあるって言わなかった?」

「言ったな。多分部長のリップサービス少しは入ってるぞ」


 蒼達と同様に当夜達3人も同じように小声で何か話している様子を蒼は視界の隅で捉える。話している内容もきっと蒼達と同じ事だろうと勝手に当たりをつける。

 その間も笑顔の清隆が翼に暴走の燃料を注ぎ続け、注文した品が来るまでそれは続いた。


「お待たせしました」


 花代の声を聞いて、翼と清隆以外の5人は救いの声だと心を一つにしていた。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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