ep89 お好み焼きが出来るまで
お好み屋に到着した蒼達は適当に席に着く。蒼の隣に圭哉。蒼の前が清隆でその隣が夏生だ。
「あー、腹減った」
夏生はそう言いながらメニューを広げる。そして、元々何を食べるのか決めていたのか、すぐにメニューを蒼に渡してくれた。
「ありがと」
蒼はメニューを見る。店内に漂っているソースの焼ける匂いが鼻腔をくすぐり、空腹が訴えてくる。
蒼は真剣にメニューを見る。ミックスにするか、シーフードにするか。真剣に10分ほど考える。
圭哉達はもう一つのメニューを見て頼むものは決まったのか6つの目が蒼を見ているような気配を感じる。その気配で、よしっと蒼は決めた。ミックスにしようと。
メニューからガバッと顔を上げると目の前の清隆が笑いながら蒼を見ていた。
「何、ゆきさん」
「いや、食べ物に制約あるのに食べるの好きだよねと思って」
「当たり前じゃん、腹が減っては戦はできぬだぜ?」
「いや、お前はどこに戦に行くんだよ」
蒼のドヤ顔に隣にいた圭哉がつっこむ。しかし蒼はケロッと圭哉の方を見て胸を張る。
「強者探しは戦だよ? 本物ほど気配消してるから! 雑魚は強がっててうざい」
「いや、雑魚ってお前……」
「相変わらず、蒼はぶっ飛んでるよね」
蒼の発言に呆れる圭哉と楽しそうにする清隆。楽しそうな清隆の様子を横目で見ながら夏生が呆れたようにいう。
「清隆は本当に蒼の話好きだよな」
「いや、夏生。考えてみなよ、下手なお笑いやコメディより面白いでしょ?」
「いや、たまに不憫に思うわ。とりあえず、店員呼ぶぞ」
ニコニコと話す清隆に蒼のこめかみがピクつく。その様子を本当に不憫そうな瞳で夏生は見ながら、早く食べたい様子の夏生がベルで店員を呼ぶ。
それぞれが注文を終えると、店員が鉄板に火を入れて離れていった。
「さっきの話だけどさ、清隆はなに? 蒼を珍獣枠で見てんの?」
「ちょっと待って、なっさん! 俺は珍獣じゃない!」
「そうだよ、いくらなんでも蒼は一応女の子だし、珍獣に失礼じゃないかな?」
「ゆきさんは俺に失礼!!」
笑顔で毒を吐く清隆に蒼は吠える。しかし、清隆は気にした様子がない。笑いながら口を開く。圭哉と夏生はいつものじゃれあいかと放置して学校や部活の話を2人でし始め、蒼に助け舟を出してくれる様子はない。
「俺も流石にさ、初めて見た時にカラスと喧嘩してるの見た時は理解を超えたからね」
「待って!? なんでそれを知ってんの?」
さらっと言われた以前あった出来事に蒼は目を見開く。確かに以前カラスと喧嘩したことはある。でもそれは2年程前でまだ清隆と会う前の筈だ。
「たまたま見かけて、変な子いるなって思ってたら、後日圭哉の幼馴染って紹介されてびっくりしたんだよね。小学校低学年だと思ってたら、高学年だし、女の子だったし」
その時の様子を思い出しているのか清隆は楽しそうだ。しかし、カラスとの喧嘩の話は蒼は忘れて欲しい。人って頭を何回叩けば記憶が消えるんだっけ? とわりと真剣に考えてしまう。
実行しようかと腰を浮かそうとした瞬間、タイミングよく注文したお好み焼きの具材が届く。
「やり方はわかりますか?」
店員がニコニコと笑顔で尋ねる。
「はい、大丈夫です」
代表して清隆がそう答える。色々と思うところはあるが、とりあえずお好み焼きを作るのが先だ。蒼は思考を切り替えて、鼻歌を歌いながら、鉄板で肉を焼く。焼き終えた肉を一度器に戻して、生地と混ぜ合わせる。
そして、「ふふーん」と上機嫌に鉄板に生地を流し入れる。
圭哉達もそれぞれ自分のお好み焼きを調理している。焼けるまでの時間待ちに圭哉が清隆に声をかけた。
「だから部長、蒼を紹介した時に少し驚いてたんですね」
納得いったというように圭哉が頷く。蒼は思わず隣の圭哉を睨む。何を話を戻していると目で訴えるもの単純馬鹿の圭哉は気づかない。蒼は付き合いの長さから気づけよと念を送るも鈍いからか気づかない。
この野郎と脇腹を拳で殴る。鉄拳制裁で蒼はちょっとスッキリする。
「ーーっ! なにすんだよ、蒼」
「バカ哉が悪い!」
そんな幼馴染通りのやり取りを夏生は呆れたように、清隆は楽しそうに見ている。蒼は清隆の笑顔には全て裏があるような気がしてならない。
「本当に仲良いよね」
「物心つく前からの知り合いですからね」
「小学校からバカ哉に勉強教えてるしね」
清隆の言葉に蒼と圭哉は同時に発言する。
「あはは」
そんな様子を見てさらに清隆は楽しそうだ。夏生は呆れたように机に頬杖をつき、眺めている。
蒼は見てるぐらいなら助けてよと夏生を見る。すると目だけで楽しそうな清隆は止められないよと裏切られる。
「そういえば、今思えば涙目で帽子咥えた犬を追いかけてた女の子も蒼だったのかな?」
「ゆきさんは、俺をいじめて楽しいの?」
楽しそうに明らかに確信していることを言う清隆に蒼は泣きたくなった。
「お前ら、話もほどほどにしとけよ、焦げるぞ」
夏生はそう言いながらお好み焼きひっくり返している。そうだったと蒼は慌ててヘラを持ちひっくり返す。上手にひっくり返せて自然と顔が綻ぶ。
「ふふふ」
口から自然と声が溢れる。その様子を清隆が微笑ましそうに見ていることに蒼は気づかなかった。
それからそれぞれのお好み焼きを平らげ、解散となった。店の外に出ると空は赤みがかっている。
「蒼、今日はどうするんだ?」
「んー、師崎家に泊まるー」
口の中が幸せだと緩む口が抑えられない蒼は間延びしながら圭哉に答える。
「わかった。じゃ、先輩達俺らはこれで」
「おう、気をつけて帰れよ」
「またね」
そして清隆と夏生の2人と別れて、圭哉と話しながら師崎家へと向かった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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