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ep83 歓迎会と顔合わせ

 「……るさん、昴さん」


 誰かに名前を呼ばれてる事に気づき、昴の意識は浮上した。瞳を開ける。そこで昴は自分がいつの間にか寝ていた事を自覚した。


「あっ、おはよう。昴さん」

「起こしてくださり、ありがとうございます」


 ニコリと笑う理人に昴もお礼を言う。ベッドから立ち上がる。


「もうすぐ夕飯だから呼びにきたよ、疲れてるならもう少し休む?」

「いえ、大丈夫です」


 心配そうな理人に昴は笑いかける。そして、昴の案内で食堂へと向かう。階段を降り、客間に続く廊下を進む。突き当たりが食堂のようだ。

 理人がニコニコと扉を開けて中に入るように促す。

 

 不思議に思いながらも昴は扉を開ける。


 パンっとクラッカーが鳴る音がした。


 昴は一瞬何が起きたかわからなかった。目をパチパチとなんどか瞬きをする。後から理人の笑い声が聞こえてきた。


「昴さんは、歓迎会とか初めてだった?」


 その声を聞き、もう一度食堂内を見る。クラッカーを鳴らしているこの屋敷の住人に、向かいの壁には


 《昴さんようこそ》


 と書かれた横断幕が掛かっている。自分がこの屋敷に厄介になる。そう決まってから準備してくれたのだろう。この屋敷が能力者達の集まり以前に温かい家族のような場所だと言うのに昴は気づいた。


「わざわざ、準備までしていただき、ありがとうございます」


 胸から何かが込み上げてくるのを感じた。以前はそんな温かさを"サーカス"に感じていた。しかし、人が触れるにつれ、過激な考えを持つものの相手をする度に何かがすり減っていっており、こんな温かさを居場所に感じることはなかった。


 中原がこの家にいれば何かがわかると言っていた、それはこう言う事だったのかと昴は思った。昴の憧れていた能力者が御影島で普通に暮らす生活。それが駿河家(ここ)にはあった。


「あれ、昴君どうした? ……もしかしてこうゆうの苦手だった?」


 心配そうに美月が駆け寄ってきて尋ねてくる。周りを見ると住人は全員心配そうな顔をしている。この場所は温かいなと改めて昴は思った。


「いえ、久しぶりに心から穏やかな気持ちになれたのが、嬉しくて。皆さん、素敵な歓迎ありがとうございます」


 昴がそう言い、笑うと周りに笑顔が咲く。


「よかった。これ、昔ゆいちゃんの誕生日にやったら、睨まれた事思い出して、ちょっと焦ったよ」

「あれはどっちかって言うと蒼の悪ノリにキレてただけだと思うけど」


 朝陽と月陽がそんな会話をしている。


「おー、お前が新入りかぁ」


 酒瓶片手に女性が昴に近づく。彼女からは既にお酒の匂いがぷんぷんとした。


「お姉ちゃん、もう飲んでるの? 自己紹介まで待っててって言ったじゃない」

「ふふふ、美月、それを言うなら朝から飲んでるから関係ないよ」


 既に出来上がっている女性は昴に近づく。


「よぉ、私は駿河和泉だ。一応この隣の病院で医師をしてる。美月の姉でここの責任者だ」


 酔っ払いは楽しそうに笑いながら自己紹介をする。


「昴だったかぁ? お前は呑める口か? ここじゃ空いていなくて寂しくてよぉ、葵は相手してくれないし」

「和泉、絡み酒はやめろ」

「は? 私は酔ってないんだが?」

「それは知ってる。初対面の人に対してその絡みはやめろ」


 和泉と名乗った女性は後からきた青年に止められる。青年は慣れた様子で和泉を離した。

 そして呆気に取られている昴に謝った。


「酔っ払いがすまない。俺は朽梨葵。能力者じゃないが訳あってここに厄介になってる」


 葵と名乗った青年は和泉を片手で捕まえながら昴に名乗る。


「ここは、能力者以外も暮らしているんですか?」


 昴は驚いた。ここは能力者だけが住んでると思い込んでいた。能力者が普通の人間と共存している。それは昴の目指した形の一つだった。


「ああ、俺は……吹雪の従者的な感じでな、あいつが色々迷惑かけたみたいで、悪かった」


 自らを吹雪の従者と名乗った葵は少し、居心地が悪そうに謝る。きっと、隠れ家のものを勝手に移動させた事などを気にしている様子だ。あの吹雪の従者なのにまともな人だと昴は思った。


「いえ、葵さんが悪い訳じゃありませんから」

「しかし、俺は止めれなかった」

「いやぁ、葵さん。ゆいを止めれるのなんて暴走して別事やり始める蒼ぐらいだった」


 さっきから何度か聞いてる名前が気になった昴は素直に尋ねる事にした。


「先程から思っていたのですが、蒼さんって?」

「蒼は今いないのでまた紹介します。ここを居候先の1つにしている小学生で能力者じゃないけど、能力者以上に滅茶苦茶な子なんです」


 美月が少し遠い目で伝える。すると朝陽が楽しそうに笑いながら言った。


「蒼は暴走特急みたいなやつだよ! 天上天下唯我独尊を具現化したみたいな子! あっ、悪口じゃなくて褒め言葉だよ?」


 どうしても褒め言葉には聞こえず、昴はほのかに恐ろしさを感じた、無能力者で能力者以上に滅茶苦茶ってどういう事だ?

 会うのが怖いと感じる。昴の背中に冷たいものが走る。


「新入りさん?」

「新入りさんだ!」


 不意に昴の腰の辺りから声が聞こえる。視線を下ろす。そこには同じ顔をした双子の女の子がいた。それぞれピンクと赤の髪飾りをつけた2人は昴の周りを回る。


「2人共、驚いてるよ」


 2人の後から同い年ぐらいの男の子がついてくる。美月があと5人紹介すると言っていたな、と思い出した。

 

「こら、双子に大地、自己紹介からでしょ!」


 月陽が声をかけると3人は背筋を伸ばす。


「わたしは神楽美智」

「わたしが神楽千智」


 双子が交互に自己紹介をして頭を下げる。赤い髪飾りの子が美智、ピンクの髪飾りの子が千智と言うようだ。忘れないように覚えておこうと昴は思った。


「僕は大地! 笠田大地です! よろしく、です!」


 大地は元気に挨拶した。美月による部屋への案内の際にあと5人いると言っていた。これでここの住人全員とあった事になる。5歳〜30代ぐらいまでの幅広い人達がこの屋敷で暮らしている。


 そして話を聞いてると何人かは唯華が拾ったと言っていた。唯華はどんな人間なんだ?と昴は考える。しかし、すぐに席に座るように案内されて昴の歓迎会が始まった。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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