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ep82 用意された部屋

 美月は昴を勉強している八楽の元へ行く。


「八楽君、勉強中にごめんね」


 美月が声をかけると八楽は美月の後ろの昴を見て顔色を悪くした。昴は自分が何かしてしまったかと考えると、美月が申し訳なさそうに昴に理由を話した。


「ごめん、昴君。忘れてたわ。八楽君、人見知りなの」


 そう昴に伝えると美月は八楽の近くに寄って行った。そして少し屈んで目線を椅子に座っている八楽に合わせる。


「八楽君、今日から一緒に暮らす事になる昴君だよ。悪い人じゃないから大丈夫。ゆいが連れてきた人だから」

「……ゆいさんが?」


 八楽は唯華をだいぶ信頼している様子がその会話だけで伝わった。八楽は少しだけ考えてから顔色は悪いも椅子から立ち上がり、昴の前に来て頭を下げた。


「花巻八楽です。中3です。能力は透明になれます」

「八楽君、よろしくお願いします。私は日向昴です。能力は人の脳内に映像を流せます」


 八楽の自己紹介を真似するように昴が伝えると少し安心したのか八楽の顔色が少し良くなった。


「聞こえてました。姫さんに景色を見せてあげていたんですよね?」

「聞こえてましたか、お恥ずかしい」

「恥ずかしがる事じゃないです! 人の役に立つすごい能力です!」


 謙遜する昴に八楽が少し声を荒げる。それだけでこの屋敷の住人達が姫の盲目を気にしている事が伝わってくる。この家は温かいなと昴は感じた。


「ありがとうございます。私も姫さんの役に立てて嬉しかったので能力も褒めてもらえて嬉しいです」


 昴は笑った。それにつられたように八楽も笑った。


「あの、昴さんここに住むんですよね? 俺、人見知りで時間かかるかもしれないけど、仲良くして欲しいです。……男の人少ないから」

 

 八楽の照れたような発言に「勿論です」と昴も笑う。

 その時、1階の1つの部屋が開く。そこからは茶髪の女性が出てきた。


「ちょっと待ちなさい、ゆい。いきなり座標言われても……は? わかった、ちょっと待って」


 電話片手に女性は何かを言いながら、玄関に向かって歩く。


「私は宅配屋じゃないんだからね」

 

 そう言って玄関へ続く扉の横に置いてあった荷物に触れた。するとその荷物が消える。


「届いた? ……そう、よかっーーって、切れてるし!」


 女性は携帯を見ながら怒っている。


「月陽、新しい住人を紹介してもいい?」

「何、美月」


 月陽と言われた女性はそこで昴の存在に初めて気づいたようだ。愛想笑いを浮かべながら昴に近づいてくる。


「初めまして、間宮月陽です。貴方が新しい住人ね? 荷物を飛ばさせられてどんな人が来るのかと思ったけど、普通な人でよかったわ」


 ニコリと先ほどまで起こっていたのが嘘のように微笑む。そして昴に瞳で自己紹介を促してきた。


「あっ、日向昴です。荷物運んでくれたんですか?」

「そう、いきなりゆいから電話があって、この座標から部屋に荷物遅れってさ、私は宅配屋じゃないのに……って、初対面の人に愚痴る事じゃないね、ごめんなさい」

「もしかして、テレポーターですか?」

「あっ、そうです」


 月陽はそう言うと、昴の目の前から消えた。


「こういう事もやれるんですよ」


 そして次の瞬間、後ろから声が聞こえた。振り向くといたずらっ子の顔をした月陽がいた。


「月陽ちゃん、そういうの好きだよね」


 すると月陽の後ろから1人の少女が歩いてきた。少女は昴を見ると微笑む。


「新しい住人だよね!? 私、高梨(たかなし)朝陽(あさひ)! よろしくね」


 笑顔でそう言いながら、手を差し伸べてくる。昴は手を握り返して名乗る。


「日向昴です。よろしくお願いします」

「顔綺麗! すごい」


 活発そうな朝陽が昴の顔をジロジロ見る。


「朝陽、昴君が困ってるからやめなさい」

「はーい、ごめんね?」


 美月に止められ、朝陽は昴をジロジロ見るのをやめて、上目遣いで謝ってきた。


「大丈夫です。少し驚いただけで」

「昴さん、迷惑ならそう言わないと朝陽は調子に乗りますよ?」


 月陽が呆れたように言う。朝陽は誰にでもこのテンションで話すようだ。


「ここに住むってことは能力者だよね!? 私、遠視能力者! よく月陽ちゃんとセットでゆいちゃんにこき使われてます」


 ウィンクにピースをしながら楽しそうに言う朝陽の隣まで歩いてきた月陽が肘でこずく。


「昴さん、本当に気にしなくていいから」

「あー、なんというか元気な方ですね」

「元気だけが取り柄でっす!」

 

 楽しそうに笑う朝陽と呆れた様子の月陽に自分の能力を伝える。


「まだ住人はいるけど、一旦落ち着きたいですよね? お部屋に案内しますね」


 美月はそう言って、居住区に昴を案内した。


 先ほどいた客間に通じる道の横に2部屋ずつ4部屋1階にあった。しかし、美月はそこを通過し、壁際にある階段に向かう。

階段を上がり、玄関側と客間側にそれぞれ5部屋ずつ並んでいる。美月は真ん中が吹き抜けになっている廊下を玄関側に向けて歩く。そして左の突き当たり。そこが昴に振り分けられた部屋だった。


「ここが昴君の部屋になるよ。ゆいが以前の家からさらっと朝陽と月陽を使って荷物運び入れたみたいなんだけど、足りないものがあったら、教えてね。残りの住人は5人いるんだけど、また食事の時に紹介するわ」


 美月はそういうと、笑う。


「食事の時間になったら呼びに来きますから、それまでゆっくりしていてください」


 美月はそう伝えて、昴の部屋から出て行った。昴は部屋を見回す。そこそこの広さのある部屋に、屋敷を見た時に大きいとは思ったが、ここまでとはと驚く。

 そして、刑務所に入る前に使用していた荷物が当たり前のように置いてある事に唯華の恐ろしさを感じた。隠れ家までバレていたのかと自分はどこから唯華ーー吹雪の手の中だったんだろうと怖くなる。


 生活しやすいように荷物を少し整理して、疲れたためベッドに寝転がる。久しぶりのふかふかのベッドは気持ちよく、色々と状況が動いた気疲れもあり、ゆっくりと昴の意識は沈んでいった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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