ep77 不幸?不憫?体質
蒼はロビーで仔猫と遊んでいた。すると客間に通じる廊下から唯華が歩いてくる。
「ゆい、用事終わったの?」
猫と戯れながら蒼は笑顔で唯華に問いかける。その様子を見ながら唯華は何かを考える。
「同族同士、仲がいいってわけか」
そう言って、納得したように玄関へと向かう。
「……? 同族って!? ゆいは俺を猫だと思ってるってことか!? ちょっと、待って!!」
言葉の意味に気づき、蒼は大声で叫ぶが唯華は無視していってしまった。
「俺のどこが猫なんだよなぁ?」
蒼は両腕で猫の両前足をそれぞれ持ち上げ、猫の顔を覗き込む。
「あら? 自分が猫だって気づいたんですの?」
「あっ、ひぃさん。その言い方はなんだよ。俺は猫じゃ……」
そう言って蒼が姫の方に一歩出ようとした瞬間に何故か蒼の足元にボールが転がってきて、下を見ていなかった蒼はボールに足を取られ、バランスを崩す。驚いて猫から両手を離す。
床に背中を強打したそしてその上に一回転して猫が蒼の胸に着地する。
「蒼? すごい音がしましたけどどうしました? いつもの不幸体質?」
盲目の姫は音から状況が掴めず困惑する。そんな姫に状況を説明する双子の声が響いた。
「蒼がこけたー」
「ボールにつまずいたー」
猫が胸の上からどいてから蒼は勢いをつけて起き上がる。そして自分が躓いたボールを掴む。
「双子かー!!」
蒼はボールを持った手で双子のところに行こうとした瞬間、今度は猫が蒼の前を横切った。踏み出しかけた足を止めたタイミングで何故か2階から何かが飛んできて蒼の顔に被さった。
「ーーぶっ」
片足でバランスを取らないといけないタイミングで視界も塞がれた事により再度バランスを崩した蒼は今度は前方に思いっきりこける。
「ーーっ!!」
手を出すタイミングをのがし、体を強打した蒼は声にならない悲鳴をあげる。
「すまん、蒼。いきなり手が滑った。でも窓開いてなくて風も吹いてないのに引っ張られるように蒼の顔に……ふっ」
2階の吹き抜けから顔を出した和泉が申し訳なさそうな顔をしていたが、すぐにコントみたいに転けた蒼を思い出して破顔した。
「ほんとに漫画みたいな不幸体質だな」
「いずさん、面白がるな!! 俺はこの体質治したいんだよ!!」
「お姉ちゃん、蒼にとっては死活問題なんだから笑わないの。それにしてもさっきゆいも似たような事言ってたし、ほんとに従姉妹なんだね」
「庇ってくれたと思ったのに、なんでみぃさんそんなにしみじみしてるの!?」
ロビーに来た美月が上を向きながら和泉に注意する。しかし、思っていたのと何か違うと蒼は泣きたくなった。
トテトテと双子が蒼に近づいてくる。
「蒼、ふこーなの?」
「ふこー、蒼?」
「慰めに来たと思ったら、とどめ刺しに来たのか!?」
双子の発言に立ちあがろうとした蒼はそのまま座り込む。その背中に双子が左右からそれぞれ慰めるように手を置く。
「遅いっ!!」
蒼のツッコミにある程度人が増えた事で音だけである程度の状況を把握した姫はため息をついた。
「朝から、なんのコントですの?」
「コントじゃない!!」
蒼の魂からの叫びは他の住人の笑い声でかき消された。
蒼が絶望を感じていると左右両方から肩を叩かれる。蒼が振り返ると双子が蒼の帽子を差し出していた。
「あっ、相棒!!」
蒼は帽子を受け取ると一度胸に抱き、すぐに帽子を被り直す。
「ふふふ、復活!」
「ふっかーつ」
「蒼、ふっかーつ」
蒼の真似をして双子も片手を天井にあげる。
「……なぁ、美月」
2階から階段を使い降りてきた和泉は蒼達を気にしながら声をかける。美月は神妙な顔をしている姉を見て首を傾げる。
「どうしたの、お姉ちゃん」
「復活と蒼は盛り上がってるが、最初の転倒からずっと帽子落ちてたのは突っ込まなくていいのか?」
「そうなの? 私2回目の転倒からしか見てないから……」
駿河姉妹がそんな話をしてるとは露とも知らない蒼は双子と一緒に盛り上がっている。
「おはようございます。朝から元気ですね」
2階の吹き抜けから今度は昴が顔を出す。昴を見て、蒼はすぐに帽子を被ってるか確認し、ブレスレットに触れる。昴の事は気に入ってる。でも他の住人のように帽子をとった姿を見せて正気を保てるか自信がない。
蒼はしっかりとお守りがある事を確認すると上を見上げる。
「すーさん、おはよ!」
「おはようございます、蒼さん。早いですね」
「ショートスリーパーだからな!」
さっきまでの絶望した様子は嘘のように蒼は元気に笑う。その様子を見ていた美月が、はっと思い出したように声を上げる。
「蒼のコントで忘れてたわ。朝ごはんの用意してくる」
「みぃさん、コントコント言わないで!」
「あれ? 五月蝿いと思ったら蒼のコントあったの? 見たかった」
自室から出てきた月陽がしまったという顔をする。
「つっきー、第一声がそれは酷くない?」
「だって、コメディ見てるみたいじゃん。外で帽子咥えた犬を涙目で追いかけていた時とカラスと喧嘩していたのは笑い堪えるの大変だったわ」
「待って!? あれ見てたなら手伝ってよ」
「……友達に知り合いって思われたくなくて」
「ひどっ」
蒼と月陽がそんなやりとりをしばらく続けていると、美月が朝ごはんが出来たと呼びにきた。
ぞろぞろと食堂兼リビングにそれぞれ向かったのだった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!




