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ep70 後日談、そして新たな出会い

 詩織の誘拐事件から数日が経過した。翌日に風見から連絡があり直接記憶操作はしないと聞き、詩織達は盛大に喜んだ。そらからも変わらずに日常を過ごす。あの数日間は夢だったのではないかというぐらい、平和な日常が続いている。

 そんな休日の午後、詩織は翼と前から約束していた通り、2人で街へ遊びに来ていた。

 翼ときた大型ショッピングモールは、存在は知っていたが詩織は来たのが初めてだった。勝手がわからずに翼について回る。


「しーちゃん、この服似合いそう。試着して見て!」


 服屋に入った翼はこの調子で詩織に服を勧める。服やオシャレに興味のなかった詩織は翼に言われるがままに着せ替え人形とかしていた。


「翼ちゃん、着てみたけど、どう?」

「可愛い!! すごく似合ってるよ! 私も色違い買おうかなぁ。でもスカートは動きづらいんだよね」


 1時間程そんな時間を過ごす。お役目と学校以外は家で過ごすことが多かった詩織にとって、友達と買い物はとても新鮮で時間が過ぎるのが早く感じる。

 どうしてもお揃いの服を買いたいらしい翼に振り回されながらも楽しい時間を詩織は過ごしていた。


「ちょっと疲れたよね? この上にフードコートあるから少しお茶にしようか」


 翼は笑いながら詩織に言う。確かに少し歩き疲れた気がした詩織は笑顔で頷く。近くにあったエスカレーターに乗り、3階にあるフードコートに向かう。

 フードコートには様々な店が出店されていた。翼が甘いものの気分とチェーン店のドーナッツ屋にしようかなと笑う。詩織も同じのにしようと一緒に並ぶ。ショーケースには様々なドーナッツが並んでおり、何個かは瑞稀や奏から差し入れでもらって見覚えのあるものもあった。

 種類が多く、何にするか迷っていると翼が笑いながらトングをカチカチと鳴らした。


「沢山あって、迷うよね。私は中にクリームが入ってるのとかチョコがかかってるのが好きなんだ」


 そう笑いながら翼は言った2つのドーナッツを取る。すこし迷ってから、翼は以前もらって美味しかったシンプルなドーナッツと中にクリームの入っている物を選んでトレーに乗せる。

 後ろに人が並んでなかったこともあり翼は横でその様子を見ながら笑う。そして、それぞれ会計をする。翼はアイスカフェラテを、詩織はアイスコーヒーをそれぞれ頼み、空いている席を探す。


「あっ」


 隣で席を探していた翼がいきなり声を上げる。翼の視線を追うと、机に座り話をしている和希と零を発見した。


「しーちゃん、あの2人の横の席空いてるからそこでもいい?」

「いいよ」


  2人は笑い合って、空いてる席に向かう。そして席にトレーを置きながら、翼は笑顔で横を見る。


「零先輩、久しぶりです。如月先輩もこんにちは」

「あっ、翼」

「九条に、月詠か」


 和希と零は驚いた様に翼を見る。


「自由になったって風見さんから聞いていたけど、実際に会えて安心しました」


 嬉しそうな翼の様子に詩織も一緒に嬉しくなる。友達って気持ちの共有も出来るんだと感動した。そして、今まで話しかけてくれた人達への自分の冷たい態度を反省する。あの時、勇気を持って話しかけてたら何か変わったんだろうか。でもそうしたら翼と友達になれなかったかもしれないだから、これでよかったとしおりは思い直す。


「うん。和希に心配かけちゃったら、早めに会っとこうと思ってさ」

「全く、九条に2日のシージャック事件で姿を見たと聞いたり、無事だけど事情があってまだ連絡できないと聞いたり、散々心配かけさせやがって」

「ごめんって……ってあれ? 翼あの時あそこにいたの?」

「如月先輩の命令でね。気のせいかとも思ったけどやっぱりあれ零先輩だったんだ」

「近くにいて気になってついね」


 3人が楽しそうに話しているのを詩織は笑いながら見つめる。少し喉が渇き、コーヒーを1口飲む。程よい苦味に自然と顔が緩む。


「あっ、嬉しさのあまりについ話しちゃったけど、今日はしーちゃんとデートだった」


 不意に翼が話を中断して、詩織を見る。そして詩織の表情を見て嬉しそうに笑う。


「よかった、退屈させたらせっかくの初デートが台無しになるところだった。先輩達は無視して食べよっか?」

「自分から話しかけておいてその言い方はなんだ」

「ははは。さすが翼だね。……翼はこんな性格だけどいい奴ではあるから仲良くしてあげてね?」


 零は笑いながら詩織に語りかける。詩織は大きく頷いた。


「こんな性格ってなんですかー」


 やや不服そうな翼に詩織は笑いながらドーナッツを1口齧る。初めて自分で選んだドーナッツは甘くて特別に美味しく感じた。




 ♢♢♢♢



「おい、当夜!! 前見て歩け!」


 休日の日課の島の探索に巻き込まれた純はキョロキョロ周りを見渡しながら歩く当夜に後ろから注意する。

 しかし、当夜は聞く耳を持たない。


「別にいいだろ。確かこの辺だよな、九条が前に言ってた御影高校って」


 キョロキョロと周りを見渡して歩く当夜の前を1つの影が通過しようとした。しかし、タイミング悪く当夜と影がぶつかってしまう。お互いにふらつきながらも転倒は免れる。


「悪い、怪我はないか!?」

「大丈夫! 俺のほうこそ周りよく見て見てなくて、ごめんなさい」


 帽子を被った小学校低学年ぐらいの少年が礼儀正しく頭を下げる。活発な印象を抱かせる少年だ。


「当夜、だから前みろって言っただろ!」


 後ろから純が駆け寄りながら当夜に注意をする。そして、少年の方を向き、申し訳なさそうに眉を顰めた。


「ごめんね、このバカが。本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ! 俺も前見てなかったからお互い様」


 ニコッと太陽の様に笑いながら少年はピースサインを作る。


「おい、蒼! 早く行くぞ」

「あっ、待てって! それじゃ、親切なお兄さん達、またなー」


 少年ーー椎名蒼はそう言うと、その場を駆けて去っていった。



 

第一部最後までご愛読くださり、ありがとうございます。明日から第二部に突入します。

第二部は当夜達からカメラの視点が最後に出てきた蒼に移ります。当夜達も登場するかも!?

御影島の謎も少し明らかにできたらいいなと思っています。

第二部から読み始めても楽しめるように設計しています!

是非、お楽しみください。


第一部完結にあたり、これまでの経緯や『ぱんどら』の裏話、第二部について少し書かせていただきました。

よろしければこちらも覗いていただけると嬉しいです。


【第一部完結】ぱんどらを読んでくださった方々へ

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3684963/


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

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