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ep69 記憶操作の行方は?

 特殊能力者対策部署に割り振られた部屋の会議室には中原、風見、奏の3人がいた。

 議題は昨日捕まえた仲野博史の起こした能力者を暴走させる計画、その黒幕と能力者の存在を知ってしまった3人の高校生の今後の対応についてだ。


「仲野は上層部の人間に、島外への脱出を餌に操られてたってのは間違いないんすよね?」

「そうだな、そもそも1能力者がこんな計画を立てる意味がないからな。暴走事件なんて起きようものならさらに自分達の首絞める様なものだ」


 風見の言葉に中原は頷く。そこまではわかっている。しかし、仲野をそそのかした黒幕はボイスチェンジャーを使い、電話のみで仲野と直接接触していない。能力者を暴走させる装置も、指示された場所(ロッカー)で回収したとの事でかなりの慎重派な事が伺える。


「能力者の取り締まりを強化するのは私は賛成です。でも、わざと能力者を暴走させるって考えは賛同できません。一般人に被害が出ないとも限らない」


 奏は自分がお世話になった詩織の母親を敬愛していた。そして彼女の命は暴走した能力者により奪われたのだ。一般人に混ざって平然と生きている能力者を奏は許せないのだ。


「取り締まり云々は置いといて、暴走させようなんて危険思考を持った奴が上層部にいるのが問題だな。しかも来宮博士の研究を盗んでこの装置を完成させている。協力している研究員もいるはずだ」


 中原は机の上に置かれている、ペン程の大きさの棒を示す。これを能力者に向ける事により、暴走させる脳波を出す仕組みになっている。研究データを盗んだだけでは、この装置は完成しない。来宮もそんな装置は作ってないと言っていた以上、能力者研究所の研究員が少なくとも1人は黒幕と通じている可能性が高い。だから、来宮は事件解決と共に姿をくらました。


 その行動は、研究結果を利用させる気がないと言外に示していた。特対としても再び研究所に戻って、研究データを利用されるよりは行方をくらまされていた方が、安心感はある。しかし、居場所はこっそり教えて欲しかった。それは特対すらも来宮は信用していないと察するには十分な行動だった。


「これは今後も調べていくことになるな。……で本題だが、高校生3人の記憶についてだ」


 前置きは終わったという様に中原は言葉を一度きり、真剣な表情で自分の考えを言葉にした。


「俺としては、もう1週間の猶予もなくしてこのままでいい気がしてる。月詠の巫女の誘拐事件で奴らは自分達の有用性を示した。それに月詠達との信頼関係を昨日の件で築いたようにも見えた。口外しない約束さえ取り付け、俺達も口を噤めば、上層部にもバレずにそのまま記憶保持させてやれるんじゃないのか?」

「同感っすね。問題はあるっすけど、翼は有能っす。こっちである程度動きを制御する必要はあるっすけど、情報は持たせといた方が、いいと思うっす」

「あー、あいつな。本当に将来特対に欲しいぐらいには有能だったな」

「そうなんすよね、裏社会にも片足突っ込んでるから度胸もあるんすよ……」


 中原の言葉に風見は遠い目をしながら答える。その様子を見て奏は不思議そうにする。


「翼さんって、詩織ちゃんを抱きしめていた女の子ですか? そんな子には見えなかったけれど」

「人の指示をさらっと変更したりしやがってたっすよ。天宮ちゃんは実働している翼を見てないからそう言えるんすよ」

「俺もそこは見てないが、仲野の指が引き金から離れたのを確認してたり、観察眼はすでに素人じゃねぇよな。月詠の巫女の助けになる即戦力にも感じたぞ」


 奏は活発そうだがニコニコと笑顔を崩していなかった少女を思い出しながら首を傾げた。そんな子には見えなかったと顔に書かれている。

 その時、奏の電話が着信を知らせる。奏は2人に断って、電話に出る。電話の主は瑞稀だった。


「瑞稀君、どうしたの?」

『あっ、奏さん。今大丈夫?』

「許可をもらったから大丈夫よ」

『それならよかった。九条さん達の記憶の件なんですけど、俺も詩織も記憶操作してほしくないと思っていますと伝えておこうと思って。3人が能力者の事を知っていたから、詩織を無事に助け出せたと俺は思ってるので、一応伝えておこうと思いまして。それだけです。休み時間終わるので、俺はこれで』


 言いたいことだけいい、電話は切れる。奏は今の瑞稀の意見を頭の中で反芻する。2人とも記憶を消す事に反対している。月詠の巫女の補佐役として選ぶ答えは決まった様なものだ。

 奏では小さく息を吐く。あの2人には幸せになって欲しい。だからほとんど言わない我儘は叶えてあげたいと思うのだ。


「今、電話で詩織ちゃん達も記憶操作は反対だと言われました。なので、私も記憶を消す必要はないと意見を変えます。勿論、他言無用の約束を守れるからですけど」


 真剣な表情で奏は自分の変わった意見を伝える。中原と風見は一瞬変な顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻る。


「風見、あいつらと連絡先交換したって言ってたな。今回の結果、直接伝えてくれ。他言無用の釘を刺すのは忘れるなよ?」

「わかったっす。後で会えないか連絡入れて、今日中に伝えときます」


 中原の指示に風見は頷く。それを確認して中原は会議室にいる2人を見回す。


「とりあえず、この件についてはこれで終わりだ。上層部の件はとりあえず俺達3人だけの情報共有だ。裏切り者がいないとも限らない」


 中原の言葉に2人は頷く。そのまま、情報交換を少ししてこの会議はお開きとなった。

エピローグも佳境です。明日の70話で第一部が完結します。

是非とも御影島で過ごす人々の日常を一緒に見届けてください。


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!


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