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ep65 学生達の帰路

 物置は、すでに特対部の署員も撤退しており、当夜達と風見だけが残っていた。


「とりあえず、お疲れさん。帰るぞガキども」


 風見はそう言い、車の鍵を回しながら歩き出す。笑いながら翼が風見の隣に移動する。


「盛大に怒られてたましたね、風見さん。タイムリミットが迫ってるとまともな判断も出来なくなることもありますよ」

「テメェは自分のやりたかったことがやれて満足そうだなぁ?」


 風見の静かな怒りが翼に向けられるが翼はどこ吹く風だ。その様子を当夜と純は後ろを歩きながら見ていた。


「なんか、九条さん本当にすごいな。ここ2日でなんか印象が、がらっと変わったよ」

「確かに。たまに九条の笑顔が怖く感じることがある」

「わかる……」

「三好君に結城君、聞こえてるよー?」


 翼について小声で話していたはずだが、前方を歩いていた翼がくるりと首を後ろに回していつもの笑顔で言う。思わず純と共に当夜の足も止まる。

 その笑顔に恐怖を感じる。


「おい、翼。面白がって脅すな。可哀想だろうが」


 翼の横を歩いていた風見が翼の頭を軽く小突く。翼は風見の方を向き唇を尖らせる。


「ネタバラシ早いですよ、風見さん。もう少し遊べたのに」

「お前、本性バレたからって開き直りすぎだろ」

「そんなことないですよ。なんなら風見さんが元ヤーー」

「なーに、言おうとしてるんだ」


 何か言おうとした翼の口を風見が押さえる。そして後ろを向き当夜達に話しかける。


「こいつの話は話半分に聞いとけ。そして弱みは握られない様に気をつけろよ。嬉々として弱みを攻めてきやがる」

「その言い方は酷いですよ。私もちゃんと相手は選んでやってます!」

「そのやってる相手に堂々と言うなや」


 前々から思っていたが翼と風見は仲がいい様で軽快に言葉のキャッチボールをして遊んでいる様に当夜には思えた。隣の純を見ると何故か顔を青ざめていて不思議に思う。どこか怖いことでもあったのかと当夜は理解できずに首を傾げた。そうこう話しているうちに神社の前の階段を降り終わる。

 そのまま4人は風見の車に向かった。昨日から乗り慣れたおかげで車は風見に案内されなくてもわかる。


 風見が車のロックを解除すると翼がまるで特等席の様に助手席に座る。

 当夜達も少し乗り慣れた後部座席へと乗り込んだ。

 風見は全員が乗り込んだのを確認すると、エンジンをかけ、ゆっくりと車を発進させた。


「これで事件解決したって事でいいんだよね? 明日には零先輩自由になりますか?」

「そこはわからねぇ。早ければ明日だがもう一度身体のチェックを行う必要があるからな。まぁ解放されたら翼に会いにいく様に伝えとく」


 翼は知り合いの零の今後が気になった様ですぐに質問する。風真は少し考えてから弟の今後の憶測を伝える。


「本来なら来宮博士にも事情を聞きたかったんだが、失踪してな。身体チェックに博士がいないから時間がかかる可能性がある。ったく、島の上層部にも怪しい奴がいるかも知れねぇし今後忙しくなるわ」

「聞いといてなんですけど、そんなに捜査情報を一般人に漏らしていいの?」

「言わなかったら自分で調べるだろ、そんな危険犯させるぐらいなら先に言っといた方がプラマイ幾分かマイナスが少なくなる」

「あはは。そこはプラマイゼロではないんだ」

「ゼロになるわけねぇだろ」


 翼と風見は軽い調子で会話を続ける。当夜はその様子をボーと眺める。その隣では純がこれは自分達が聞いていい情報なのかと思っている様で顔色が悪い。


「なんか、長い1日が終わった感じだな」


 当夜はポツリと思ったことを呟く。隣で純が当夜の方を向く気配がした。しかし、気にせず当夜は続ける。


「いつも通りの学校の後に、月詠達とカフェに行って、攫われた月詠を救出して、この島に来なければこんな体験する事なかったよな」

「そうだな。月詠さんを無事に救出できて、それだけで本当によかった」


 当夜の言葉に純も頷く。当夜は純を見る。純の顔色は少し悪いが、今日の行動を後悔している様な様子はなかった。

 当夜も純は笑い合う。


 その様子をバックミラー越しに見ていたと思われる風見がため息をつく。


「今日はたまたま上手く行っただけだ。今度も上手くいくとはかぎらねぇ。危ない事に首を突っ込む前にまずは俺に連絡入れろ」

「わぁー、風見さん優しいですね」

「特に翼が暴走しそうな時は教えろ。寮に着いたら番号教えるから」

「その言い方は酷くないですか?」


 また風見と翼が軽快な会話を繰り広げる。風見は首を突っ込む前にと言った。それは関わるなと言われていない気がして当夜は嬉しく思った。認められている様に思えた。まだわからないが、能力者の記憶を消されなかった場合は特殊能力者対策部署への就職を真剣に考えようかなと思った。


 そのためには勉強と何か身を守れる体術を覚える必要があるだろう。しかし幼なじみであり親友でもある純は空手と柔道の達人だ。クラスメイトで同じ寮生の翼も武術の心得がある様に思う。近くに教えてくれそうな人はいる。あとは目標に向かって突き進むだけだ。


 そして車は寮に到着する。約束通り風見から電話番号を教えられ、解散となった。純達と夕食をとり別れる。

 寝支度を整え、ベッドに入る。昨日とは違い清々しい気分だ。今日は気持ちよく眠れると当夜は思った。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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