ep61 島と能力者
寂れた社を吹雪は眺めていた。耳は風の声を拾い、情報の収集は怠らない。不意にカツンと地面を蹴る音がした。吹雪は笑いを貼り付けながら振り向いた。そこにはピラミッド型の装置を持った魔女がいた。
「ご苦労様」
吹雪は魔女から装置とブレスレットを回収する。魔女は吹雪を睨むが何も言わずにその場をさった。
「嫌われてるな」
苦笑しながらも気にしていない様に吹雪は言う。そして、能力で詩織がお役目のために月詠神社の社に入った事を確認すると息を吐いた。
「これで、堕ち神の相手をせずに済んだ。全く、自分の穢れた一部を切り離して社に閉じ込めるのは月詠の勝手だが、自分の力だけで抑えきれなくなり、巫女の祝詞で力を貰ってなんとか毎日抑えてるとか神としていいのか?」
吹雪は呆れた様に独り言を言う。吹雪は視線を社から横の木々の間へと移動させる。そこには先程までなかった人1人通れる程の洞窟が現れており、中からは歌詞のないメロディが流れ出ている。
「はいはい、とりあえずこの島の崩壊が確実に予防されて嬉しいのはわかったから、歌はやめておきな。君らと波長の合う人間には聞こえるんだ。また人間が迷い込んできたら面倒だろ?」
吹雪の言葉で歌と共に洞窟も一緒に一瞬で消える。吹雪はため息をこぼす。
「……拗ねたか。また今度ご機嫌取りに出向かないといけないか、めんどいな」
そしてもう一度視線を社に戻す。まだ社からは禍々しい気配が漏れ出てくる。
「出れなくて残念だったな。神性を持ちながら堕ちて封印された神といえども、力をつけすぎてるな。これは早めに厳重に封印か浄化しないといけないんじゃないのか? まぁそのあたりは月詠がいつもの如く、勝手に導いてやるか」
そこで言葉を切り、吹雪は社を背にする。
「まっ、この島がなくなったらこちらの商売も出来なくなるからな。最低限の協力はしてやるよ」
誰に伝えるでもなく独りごちると寂れた神社を吹雪は後にした。
鳥居を抜けると前の道路に車が一台止まっており、近くで葵が待機している。吹雪はそれを見て微かに笑う。
「なんだ、迎えにでも来たのか?」
「今日は孤児院の方に行くんだろ、俺もそこに住んでいるからな、送っていく」
「珍しいな」
吹雪は笑いながら後部座席に乗り込む。葵も運転席に乗り込んで、エンジンをかけて車を出す。
しばらく車内は沈黙していた。吹雪頬杖をつきながら窓の外を眺めている。
少しためらう気配がした後、葵は口を開いた。
「結局この島と能力者の関係はなんなんだ?」
「なに、気になるのか?」
葵の疑問に吹雪は笑う。そして前を見て興味なさそうに語る。
「簡単に言えば能力者はこの島の人柱を成立させる為の贄であり、人類が罪人である証だ」
「は?」
「この島は人柱のもとに成り立っている。詳しい説明は省くが、この人柱を立てた事により、時折能力者が生まれる様になった。最初は御影島だけだったが、住人が本島に移住した事により、本島にも生まれる様になった」
訝しげにする葵を気にせずに吹雪は続ける。
「島民達は気づいたんだよ。能力者は人柱にされた者の怒りから生まれていると。そして怒りを鎮める為に能力者は御影島で一生を過ごす事になる」
「そこが繋がらない。なんでだ?」
「昔は今と違って信心深い人が多かったからな。それに普通に生贄文化があるんだぞ? 能力者が生まれるのは人柱にされた者の怒りだ。それを鎮める為には能力者は贄としてこの島で生涯を過ごすので怒りをおさめてください。始まりはそうだった」
吹雪はそこで言葉を切ると再び窓の外を見る。暗くなってきており窓ガラスに自分の顔が反射する。
「しかし、いつの間にか能力者が生まれる理由が曖昧になり、また普通とは違うものに恐怖した時のお偉いさんが、今の御影島のように能力者の監獄に仕立て上げた」
「理由が歪んだって事か」
「そうだな。長い歴史の中だとよく、ある話だろう。都合のいいように書き換えるなんてさ。勝てば官軍負ければ賊軍、勝ちさえすれば正義は自由に作れる。それだけ能力者は少数派だ」
吹雪はそこで言葉を切ると、歪んだ笑いを浮かべる。前らか唾を飲み込む音とがした。それを聞き、吹雪はさらに笑みを深くする。
「まぁ、御影島も万能じゃない。この島に自らの意思で来ている能力者やこの島で生まれた能力者、そしてまだ覚醒していない能力者に関しては把握していない。まぁ、上層部の探知能力者の近くを運悪く通って仕舞えば前2つはバレるんだがな」
「それであの孤児院か」
「そう、あそこは葵、お前や蒼みたいな例外もいるがな」
そう話しながらも車は目的地に向かって進む。
吹雪外を眺めながら、ポツリと呟く。
「人柱に能力者、こんなに歪んでいるのに神がいるというのは笑えるな。神とやらの存在がない方がまだ納得がいく。これが神の試練というのなら、こちらは全てを否定させてもらうよ」
葵には聞こえない様にそう呟くと今度こそ吹雪は口をつぐみ、流れる外の景色を何をすることもなく見つめていた。
車内はまた沈黙が支配する。
そしてしばらく車は進み、1つの屋敷の駐車場に車が停まった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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