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ep59 再会と謎

 詩織の救出が無事に終わり、抱き合う詩織達を当夜と純は離れた位置で見守っていた。風見は仲野が持っていた拳銃を回収して、彼がいつ目覚めて暴れてもいい様に隣で待機している。

 意識は仲野に向けたままなのだろうが、ため息と共に当夜達を見た。


「翼だけかと、思ったらお前らも指示に従わないのか。類は友を呼ぶって言うがよぉ」

「でも、最短で救出できたんだし良かったんじゃねぇのか?」

「結果論だ。お前らに何かあったら俺の首が飛んでたよ」


 渋い顔をしながら伝える風見に当夜の隣で純は申し訳なさそうにする。


「本当にすみません。でも九条さん、こうと決めたら揺るがないみたいで……」

「あー、それもそうか。あいつに巻き込まれたんならどうしようもないな」


 風見は諦めた様に再度ため息をつく。しかし当夜は何故責められるかわからない。翼も純も怪我もなく秒で仲野の動きを封じていた。褒められるのはわかるが責められる理由が理解できない。首を傾げた当夜の考えを呼んだのか、純もため息をついた。


「当夜、俺達がこの件に関われたのは絶対に風見さんの指示に従う事だっただろ? 普通にそれを破ってんだよ」

「でも、無事だっただろ?」

「無限ループになるだろうが」


 また同じ事を繰り返す気かと風見が吠える。そして、再度ため息をつくと、携帯を取り出した。あまりにも事態が急速に動いたせいで連絡していなかった事を思い出したのだ。詩織を無事に救出したと特対部の連絡網に送信した瞬間、男の怒声が入口から聞こえてきた。


「風見! これはどういう状況だ!?」

「中原さん……」


 今の状態、抱き合っている女子高生2人。うち1人は泣いている。倒れて拘束されている男の横に警察官が1人と男子高校生2人。たしかにそう叫びたくなるのもわかると当夜は他人事の様に思う。風見は少し顔を青ざめながらも中原に説明する。


「ガキの携帯に吹雪と名乗る奴から連絡があったんすよ。で、拳銃は実弾一発の残りは空砲って情報提供があった。ガキどもからすでに一発撃ってるって話だったのでタイムリミットが迫ってる中、急いだ方がいいかと思ったんすよ」

「だからって、子どもに危険な真似をさせるな!」


 ごもっともな意見に風見は反論できずに視線を逸らす。普段なら口先八丁で丸め込もうとする天才の翼は詩織を慰めるのに忙しい。どうしたものかと風見は考えた。すると中原から少し遅れて2人の人物が物置の中に入ってきた。


「詩織!!」

「詩織ちゃん!!」


 瑞稀と奏だ。2人は安堵の表情で詩織に駆け寄る。翼は詩織の背中を撫でて、ポンポンと優しく背中を叩くと体を離した。詩織は驚いた様に顔を上げる。そして翼が体を少しずらした瞬間に瑞稀と奏の姿を捉えた。2人に駆け寄り3人で抱き合う。


「瑞稀、奏さん」


 泣きらした目で詩織は2人を見つめる。そこで詩織はやっと日常に戻って来れた事を再度実感する。

 しばらく3人で詩織の無事を喜び合う。


 その様子を離れて当夜達は見ていた。隣では中原の説教がまだ続いている。当夜と純の近くに移動した翼は風見に助け舟を出さずに抱き合う3人を微笑ましそうに見ている。


「終わったんだな」

「そうだな」

「誰も怪我しなくて本当によかったね」


 当夜の呟きを拾った純と翼が当夜に笑いかける。当夜は昨日寝る前に思った違和感の正体はこれだったんだと悟った。これで本当の意味での誘拐事件が終わったのだと直感が告げている。色々あった1日だが全員笑ってる。

 武道の心得のある2人と違って当夜は今回足手纏いだった。でも自分にできる精一杯はやったつもりだ。今日は満足して眠れると当夜は笑顔で詩織達を見た。


「それにしても、能力者と一括りにいっても、仲野みたいな自己中心的な人や他者に寄り添える人、普通の人と変わらずにいろんな性格の人がいるんだね」

「そうだな。差別さえなければあの女の人とは仲良くなれる気がしたな」


 翼と純がしみじみと話す。当夜は不思議だった。能力だって一つの才能だ。才能のある人間は能力者と違い差別されていない。何故、能力者は差別されるのだろうか、そう考えていると島に来た初日に聞いた歌声が風に乗って聞こえてきた。

 周りを見渡すも歌っている人はいない。


「当夜、どうした?」


 いきなり当たりを見回した当夜へ心配そうに純が聞く。当夜は少し言葉に詰まったが、聞くことにした。


「歌が聞こえないか?」

「歌? 聞こえないけど」


 純が不思議そうに耳を澄ます。隣で聞いていた翼も瞳を閉じ聴覚を集中させている様子だがすぐに瞼を上げる。


「私も聞こえないな。前も歌が聞こえるって言ってたよね、結城君」


 不思議そうに翼は首を傾げる。周りには聞こえない歌は寂しそうで、しかしどこか嬉しそうに歌詞のないメロディを奏でる。当夜はこの島の秘密に一つ触れた様な心地がした。

 不審そうに当夜を見る2人を無視して当夜はしばらくそのメロディに耳をすませていた。

 何か重大な秘密がこの歌に隠されている。そんな希望を胸に抱きながら、当夜は笑った。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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