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ep58 救出

 翼は物置の扉と反対側に能力無効化の装置を設置して当夜達のもとに戻る。そして、物置の扉の前に待機している風見に向かって、頭上の上で腕を使って大きく丸を作る。

 風見が頷いたのを確認し、翼は魔女を見る。


「お姉さん、三好君と私を別々の位置に移動させることって可能ですか?」

「近ければ可能ですが、どうしてですの?」

「なら、三好君は予定通り仲野の後ろに、私は前方に移動させてください」

「……勝手に変えていいんですの?」

「私、勝ち試合にしか乗る気ないんです」


 不思議そうに聞く魔女に翼は不敵に笑う。そして純を見る。


「風見さんの囮からの突然目の前に現れる私で多分、仲野はかなり混乱すると思う。拳銃握ってたら私が蹴り飛ばすから、三好君は制圧をお願い」


 風見に内緒で翼は迷わずに計画を変更する。純はなんとも言えなそうに顔を顰めてるが翼はスルーする。

 風見の方を見ると、ちょうど彼が扉を蹴破ろうとしていた。ドンっと大きな音と共に風見が中に入る。風見がドアを蹴破ってくれたおかげで中の様子がよく見えた。銃を持った仲野が詩織に殴りかかろうとしているような体勢で風見を見て固まっている。


「無事か、月詠ちゃん」


 風も止み、静かな中に風見の冷静な声が響く。一瞬固まった仲野が殴ろうとした手を止めて、詩織を掴む。


「なんで、この場所がバレた!?」


 驚きながら能力を使用しようとしたのだろう。しかし、仲野の姿は消えない。混乱した様に仲野は自分の姿を見ていた。


「お姉さん、今飛ばしてください!」


 その様子を見て翼は今だと確信した。魔女にすぐに指示を出す。彼女はすぐに頷き、翼と純の腕に触れる。


「友達を助けに行ってらっしゃいませ」


 その声を聞いたと同時に一瞬の浮遊感を感じ、目の前に仲野がいた。仲野は突然現れた翼に驚いたのか、動きが止まる。右手に握っている拳銃の存在すら忘れている様だ。

 翼は迷わずに、その右手に回し蹴りをお見舞いする。その反動で男は拳銃を離す。床に落ちた拳銃を翼はすぐに風見の方へと蹴り飛ばす。

 そして仲野の後ろから、純が回し蹴りを炸裂させる。バランスを崩した男に全体重をかけ、倒すとそのまま関節技を決める。


「えっ?」

「は?」


 あまりにも一瞬の制圧に助けられた詩織だけでなく、風見さえもが唖然とする。


「三好君は優しいね。私なら迷わずに意識奪ってたよ」


 翼はいつもの笑顔で純に微笑みかける。純はというと慣れた手つきで関節を決めながら、中野から視線を外して詩織を見る。


「柔道も空手も相手の意識を奪うものじゃないからね?」

「でも、危険人物だよ?」


 そう言って、翼は拘束されている仲野の前に座り込む。


「どんな高尚な理由があったか知りませんけど、よくも私の友達に手を出してくださいましたね? 勿論手を出したという事は同じ目にあっても文句言えないってわかっての狼藉ですよね?」


 感情のない目で微笑みながら言う翼に恐怖を感じたのか、純は相手は顔を逸らせない様に関節をはめなおしてそっぽを向く。そして横にいる縛られた詩織に笑いかけた。


「月詠さん、大丈夫?」

「月詠、大丈夫か!?」


 純が尋ねると同時に当夜が外から駆け寄ってくる。そして、縛られている詩織を見て、表情を歪めるも、すぐに縄を解く。


「……ありがとう」


 自分が無事だと自覚したのか、詩織は震える声でお礼を言う。耐えていた恐怖と一緒に涙が溢れ出す。それをみて当夜が慌てる。その様子を見て翼は笑いながら仲野から視線を逸らして詩織に抱きついた。


「怖かったよね? 本物の拳銃なんて向けられる機会ないもん。頑張ったね、しーちゃん」


 詩織の頭を撫でながら安堵した様に翼は呟く。詩織は震えながら翼の背中に腕を回す。


「おい、ガキども! 作戦と違うだろうが!」


 風見が怒りながら4人の元に近づいてくる。少し離れた位置で魔女が微笑みながら状況を伺っていた。

 風見はまず純のところに行き、持っていた手錠と能力無効化の腕輪を仲野につける。


「離せ! 俺は島の外に出るんだ!」

「もう諦めろ。関係ねぇ奴ら巻き込んだ時点であんたは可哀想な能力者(被害者)じゃねぇ、ただの加害者(犯罪者)だ」


 それでも騒ぐ仲野に苛立った様で風見が彼の首に手刀をお見舞いし、意識を奪う。翼はその様子を詩織にしがみつかれながら、流石元ヤンと笑いながら見ていた。


「で、あんたはどうするんだ?」

「私ですか、あとは能力無効化の装置を吹雪に返して終わりですわ。まさか(特対)と協力する日が来るとは思いませんでしたわ」


 魔女はそう笑いながら、翼に抱きしめられている詩織を見る。


「でも、子どもが傷つく事がなくてよかったですわ。それは私達の信念に通じますもの。それでは外の装置はこちらで回収させていただきますわね?」


 そう言ってその場をさろうとした魔女に当夜が駆け寄る。


「あんたのおかげで、誰も怪我せずに済んだ! その能力、もっと人の役に立てればいいのに」

「そうですか。人間がみんな貴方みたいな方でしたら、良かったのですがね」


 悲しそうに言い、魔女はその場から忽然と消える。本人が言った通り外の装置を回収してこの場を後にするのだろう。翼は意識を自分の胸に顔を埋めて声を押し殺してなく詩織に戻した。

 本当に無事に助けられて良かった。翼は詩織の頭をよしよしと優しく撫でながら心からの笑みを浮かべた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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