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ep56 魔女の手助け

 月詠神社から少し離れた場所にある寂れた名もなき神社に吹雪はいた。罰当たりにも社の拝殿の前に腰をかけて目の前にいるゴスロリの女に語りかける。


「もちろん、出来るよな。魔女さん?」


 どこか小馬鹿にした様な発言に魔女と呼ばれた女は拳を握りしめた。


「……私に拒否権はないのですよね?」

「まぁ、そうだな。君が"サーカス"の創始者を見捨てる選択をするなら拒否してもらっても構わないけど」

「そんな事、私がするわけないのもわかっていますよね!?」


 吹雪の軽口に女は怒鳴る。その様子を見て吹雪は愉快そうに笑う。そして、魔女に2つのアクセサリーを差し出した。


「さっき、説明したがシルバーのブレスレットが能力無効の装置をさらに無効化して能力が使える様になるもの。これは君がつけて。後で回収するから無くすなよ?」


 そこで吹雪は一度言葉を切る。そして楽しそうにもう一つのブレスレットを見る。


「で、こっちはお馴染みの能力無効化の腕輪だ。これは特対の風見透に渡して、犯人確保にでも役に立ててもらえ。とりあえず、月詠の巫女には今日中にお役目をしてもらわないとこっちが困る」


 本当に困るのか忌々しそうに吹雪の顔が歪む。しかしすぐに笑みを貼り付ける。そして揶揄う様に魔女を見る。


「特対や学生達に協力するかは君が決めろ。こっちはどっちに転んでも傍観者に徹するからさ」


 まるで娯楽を見るかの様な他人事の発言に魔女の顔が歪む。そして、吹雪の手からアクセサリーを2つとも奪い取り、ブレスレットを自分に装着する。


「どうするかわかった上で、あたかもこちらに選択肢があるように言わないでくださる? 私が協力するとしか思っていないのでしょう!?」


 魔女の言葉に吹雪は笑う。そして、魔女を見つめながら言葉を紡ぐ。


「そろそろ時間がなくなるぞ? 早く行ったらどうだ」


 興味なさげに紡がれる吹雪の言葉に魔女は舌打ちをし、その場から消えた。それを確認し、吹雪の口角が歪む。


「特対の刑事1人に学生が3人、テレポーターが1人か。役者としては十分だな」


 そして立ち上がると、拝殿から飛び降りる。そして先程まで背を向けていた社に目を向ける。


「さて、こちらも対策しないといけないな」


 面倒臭そうにそう呟くと、社の中を睨みつけた。どこからか強い風が吹き、吹雪の被っていたフードを揺らす。闇に紛れながら吹雪はただ、時を待つ。




 ♢♢♢♢




 詩織が囚われてると思われる物置を発見した当夜達は再度、突入時の打ち合わせをしていた。


「その装置で無効化できるってことは逃げられる事はない。本来なら必要な無効化の腕輪は中原さん達が持ってきてくれるはずだから、俺達の目的は制圧と人質の確保だ」


 風見は真剣な様子でそう言う。当夜達3人はそれを真剣な表情で聞く。


「まず、風見さんが突撃して犯人の注意を引く。その間に俺と九条さんが扉と反対にあった窓を破って侵入して、後ろから制圧するんですよね」

「ああ、本来だったらそんな危険な事をやらせたくないし、神社の建物を壊したくもないんだがな」

「でしたら、私が中まで運んで差し上げましょうか?」


 4人しかいないはずの空間に、後ろから聞き覚えのない女の声が混ざる。4人は驚いて振り返るとそこには黒と紫を基調としたゴスロリ姿の女性がいた。思わず叫びそうになった当夜の口を純が慌てて塞ぐ。


「テメェ、誰だ?」


 風見が低い声で女に尋ねる。女は気にした様子もなく微笑む。


「私は吹雪の使いですわ。刑事さんにこれを届けにきたついでに人質救出のお手伝いをしてあげようと思いまして」


 そう言いながら女は金の腕輪を風見に差し出す。


「!? これは能力無効用の……なんでテメェがこれを持ってる」

「吹雪に渡されたのですわ。私も入手経路はわかりません。先程の話を聞かせていただきました。そちらの2人を私のテレポートで安全にあちらの中にお送りする事ができますが、どうなさいます?」

「テメェ、能力者か。悪いが、計画実行中は能力は使えねぇぞ」


 風見の言葉に女は右腕につけているシルバーのブレスレットを見せる。


「こちら吹雪から預かっております能力無効の状態でも能力が使えるそうですわよ? 私も"サーカス"の裏切り者が月詠の巫女とはいえ、子どもを傷つけるのは許せません。それは本来の……"サーカス"の理念ではありません」


 女は忌々しそうにそう言い捨てる。状況はわからないが手伝ってくれる様だと当夜は純粋に喜んだが、残りの3人は明らかに警戒している。


「"サーカス"の人間か。信用しろと?」

「元々"サーカス"は創始者の元で差別を少しでも良くしよう、生きる自由を手にしよう。その為に一般人を巻き込む犯罪を犯すのは違うと結成されたものです。人数が増えすぎ、創始者が行方不明になった為、2日のシージャックの様に一般人を巻き込む事件を起こしてしまったのです。私はそれが許せません」


 女は嘘を言っている様子はない。風見は少し考えると、髪をかきむしる。


「あー、もう。次から次へと。なんだ吹雪ってのは情報の小出しをしないと気が済まないのか!?」


 全てを仕組んでいるとしか思えない吹雪への怒りを風見は小声で叫ぶ。純と翼もそれに頷く。話がまとまったところで、いい加減に離せと当夜は口を押さえる純の手を叩いた。


「あっ、悪い」


 純はすぐに手を離す。そして女を交えて再度侵入作戦を練る。

 翼が気配を消し、装置を設置後に風見が囮として最初に物置の中に入り、犯人の気を引く。その際に扉は開けっぱなしにし、犯人の後ろに翼と純を女が飛ばす。そして制圧できたタイミングで当夜と外で待機している女が、中にテレポートをし、詩織と純、翼を回収して当夜のもとに戻ってくるというものだ。

 当夜は実質足手纏いの待機と言われたが、自分が出ても足手纏いになる自覚はあった。安全に詩織を救出する為、見守る事に専念する。それがこの計画にとって大切だと純に言い聞かせられて納得した。自分の我よりも詩織の無事の方が大事だ。その天秤だけは間違えるわけにはいかないのだから。

 そして、静かに風見が物置に近づく。決行の時はきた。

不意に魔女さんの存在を思い出し、登場させてみました。流石にちょい役にするには意味深な言動してましたからね。でもそのおかげで、今後の展開にいい刺激になりそうです。プロットがない為、なんとなくのゴールに向かいキャラ達を自由に動かしていますが、魔女さんの登場のおかげで、思い描いていた以上に良い着地をしそうです。

ありがと、魔女さん。君の名前を教えてくれと名前が降ってくるのを待っております。




今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

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