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ep54 電話の相手は?

『出るまで長かったな。どうだ、月詠の巫女の居場所を教えてやろうか? こちらとしても月詠の巫女が攫われたままだと商売にならない』

「お前は誰だ!? なんでこの番号を知ってる!!」


 当夜は電話口に向かって怒鳴る。只事じゃないと感じた純が当夜の肩を叩き、スピーカーにして全員に聞こえる様にしろと訴える。当夜は頷き、耳から電話を話してスピーカーモードにする。


『ふっ、もう喋っても大丈夫か? この番号を知ってる理由か。それは企業秘密だ。こちらはこの島で便利屋をしてるものさ』


 スピーカーから軽快な機械仕掛けの声が響く。その声は機械を通しているからか性別は判定できない。4人は静かに当夜のスピーカーを見つめる。


「貴方が都市伝説といわれてる吹雪? 生憎、こちらは時間がないんですよ。用がないなら今度にしてくれない?」


 どこか苛立った様に翼は電話に語りかける。しかし電話越しの相手は笑い、この状況を楽しんでる様に聞こえた。


『九条翼か。せっかく君達が探している月詠の巫女の情報をタダで教えてやろうと思ったんだが、必要なかった様だな』

「!?」


 吹雪の言葉にその場の空気が固まる。この状況ですこの甘い言葉を信じていいのか、そんな疑問が4人の間を駆け巡る。


「本当に月詠の居場所を知ってるのか」

『ああ、正直このタイミングで月詠の巫女の代替わりはこちらとしても遠慮したい。だから健気に探している君達に敬意を表して情報を与えてあげることにしたんだ』

「……その情報が嘘で、私たちを惑わせてる可能性があるよね?」

「悪いが、そんな怪しい取引にそうですかとはすぐには言えねぇ」


 吹雪に翼と風見が突っかかる。電話越しに笑い声が響く。


『風見透か。こちらはこの仕事に誇りはある。与える情報をわざと抜く事はあっても、嘘をつく気はない。それに証拠ではないが、もうじき君に特対の連絡網から犯人の名前と能力が届く。それを確認してみてくれ』

「はっ!?」


 風見が言葉を返そうとした瞬間に、彼の電話が鳴る。そして、画面を確認した風見の顔色が変わった。


「……テメェの言うとおりだ。なんでわかったんだ」

『全て知ってると言ってもいいが、今回は信頼してもらうために真実を語るか。こちらの手のものにその情報を特対トップに伝えてもらっただけさ。これで今回の件に関しては、こちらが敵ではないとわかってもらえたかな?』


 どこかこの状況を楽しんでいる、そんな楽しげな声で吹雪は語る。4人で目を合わせる。今は時間がない。ここは罠だとしても手がかりは手に入れたい。同じ思いだったのか翼と純は当夜を見て頷く。風見だけが、どこか不服そうな顔をしていたが、当夜は気にせずに吹雪に言う。


「わかった。今すぐに月詠の居場所を教えろ!!」

『賢い判断だな。……月詠の巫女の居場所は、月詠神社の境内にある古びた物置さ。あそこは鍵が壊れていて仲野博史がここ数日潜伏していた。まぁ灯台下暗しって話だな』


 そして吹雪は言いたい事は伝えたと言う様に一方的に電話を切る。少しの沈黙がその場を支配する。最初に沈黙を破ったのは当夜だった。


「月詠神社って言ってたよな、最初にいた場所が1番近かったのか……」

「あの吹雪って奴の言う事を信じればだけどね。鬱散くさいったらないよ」


 翼が気に入らない様子で吐き捨てる。風見が少し考えてから車に向かう。


「とりあえず、乗れ。時間がねぇから月詠神社に向かう。翼、携帯渡すから中原さんに今の情報共有しろ」


 風見はそう言いながら翼に自分の携帯を投げ渡す。携帯を受け取った翼は慣れた様子で携帯を触る。


「連絡するのは中原さん?」

「そっ、車に乗ったらすぐにかけろ」

「わかりました」


 2人の後を当夜と純も追いかける。そして車に乗るとすぐに風見に釘を刺された。


「時間がないから連れて行くが、危険な事はするなよ?」

「わかっています」


 純はすぐに頷くと当夜を睨む。その目はわかっているよな? とありありと伝えてくる。渋々と当夜も了承を伝える。

 助手席では翼が中原に吹雪からの情報を伝えている声がした。

 当夜は前を見据えた。もうじき詩織を助けられる。既に風見に釘を刺された事を忘れている。不安そうに純の視線を感じるが当夜はあえて無視をした。

 車が月詠神社に近づいた際にまた非通知で当夜に電話がかかってくる。

 また吹雪だろうと当夜は疑いもせずに電話を取る。


「なんだ?」


 となりで純がギョッとしているが気にせずに当夜は電話口に問いかける。


『素直に向かっている様だからサービスをあげようと思ってな。月詠神社の階段下の茂みに来宮博士作の能力無効の機械を置いておいた。物置の前に置いて起動するといい。それで仲野博史の透明化の能力は無効できる。拳銃に関してはそちらで頑張れ。健闘を祈っておいてやろう』

「はっ? 待て……って切れた」


 吹雪は先ほどと同様に言いたいことだけ伝えて電話を切る。すぐに当夜は今の話を車内で共有する。


「……何を考えてやがるんだ、吹雪ってやつは」


 車内の誰もが思っていた事を代表して風見が呟く。

 月詠神社の階段下の鳥居が見えてきた。犯人と対峙までもうすぐだ。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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