ep53 予期せぬ情報提供
当夜達に謎の着信がくる20分程前、特対部の部屋では瑞稀が必死に能力者のデータを探っていた。
近くでは中原が島の上層部と交渉をしており、怒声が室内に響く。
奏は御影警察署のトップに直談判に部屋を出ていき少し経過していた。
瑞稀はひたすらデータベースを見ながらしおりを攫った犯人の顔がないかと探していた。島の人口の2割程は能力者だ。そして瞬間移動系の能力者はそこそこの人数がいた。一人一人自分の記憶と写真の顔を照らし合わせるもなかなか見つからない。
チラリと時計を見る。詩織が攫われてもうじき30分が経とうとしている。幼馴染であり、妹の様に一緒に育ってきた詩織の命が危険にさらされている。それだけで瑞稀の体は冷水を浴びた様に冷え切っていた。
焦る心からか、タブレットをスワイプする手が震えて、余計に時間がかかる。1番怖い思いをしているのは詩織だ。早く見つけないといけない。そう思いながら画面をどんどん送っていく。
しかし、無情にも最後のページまで見たが、詩織を攫った男を見つけられなかった。
「……なんでだよっ」
思わず悪態をつく。確かに男はいきなり現れて、そして消えた。気配に敏感な武道家の2人が確実に気配がないと言い切っている。そうなると考えられる能力は瞬間移動としか考えられない。
「くそっ」
苛立ちから机を叩く。その音に驚いた様に中原が瑞稀を見た。瑞稀は謝りながら、他の可能性を考える。あと急に姿が消えるとなると透明化か? とも思うが姿だけでなく、気配までなくなるとも思えない。データベースを探れば前進すると思っていた。しかし、振り出しに戻ってしまった。
瑞稀はやるせなさから髪を掻きむしる。すると警察トップと話を終えたらしい奏が室内に戻ってきた。
「おい、待て……くそ、切りやがった」
近くで中原の舌打ちが聞こえた。すぐに電話に手をかけるも何かを考え込むと、瑞稀達に近づいてきた、
「天宮、どうだった」
「ダメでした。捜索は手伝うが、犯罪者に屈する事はないと門前払いで」
「こちらも同じだ。それどころか次の巫女の話をしやがった……!!」
苛立ちながら中原は吐き捨てる様に言った。状況は良くない。瑞稀も自分の成果を口にする。
「データベースの照合もダメでした。瞬間移動系の能力じゃないのかもしれません」
「……」
手詰まりになり無言が室内を支配する。瑞稀は握った拳に力を入れる。
「ダメ元で透明化の能力者も洗ってみます」
「わかった。俺は伝手の情報屋にあたってみる」
中原がそう言い、携帯を手にした瞬間に狙っていたかの様に瑞稀の携帯が鳴る。画面を確認すると詩織の名前が表示されていた。2人に画面を見せ、スピーカーにして電話に出る。
『よぉ、島を出る準備はできたか? あと30分だぞ』
どこか高揚した声がスピーカーから響く。
「今、上層部と交渉中だ。それより月詠は無事なんだろうな?」
『当たり前だろ? 人質はギリギリまで生かしとかないとなぁ』
げひた笑い声が響く。瑞稀は唇を噛み締めた。こんな奴に詩織が……と守れなかった後悔が押し寄せる。しかし反省するのは後だ。今は助けることだけを考えろ。中原と目が合う。
強い意志を持った中川の瞳が頷く。
「月詠の声を聞かせろ!」
『はっ、嫌だね。また10分前になったらまた連絡する。それまでに用意しておけよぉ』
言いたい事を一方的に言い電話は切れた。暗くなった画面を見つめ、内心で瑞稀は舌打ちをする。
「もう一度、上に掛け合ってきます」
奏は中原の返事を聞かずに部屋を飛び出した。中原は少し考えてから、携帯を持ち直す。先ほど言ってた伝手の情報屋に連絡を取るのだろう。
「あ?」
中原の不思議そうな声が響く。どうやら携帯に着信があった様だ。着信を取り、耳に当てている。
「このタイミングで何の用だ、来宮博士」
相手の声は聞こえないが、電話の相手は来宮のようだ。このタイミングで彼女から連絡が来る理由がわからず、瑞稀はデータベースを漁る手を止めて中原を注視する。
「は? どう言う事だ……あ?」
驚愕した中原の声が部屋に響く。まるで理解できない事を聞いた様なそんな表情をしている。
「待て、なんでお前がそんな事を知って……!! くそっ、切れた」
「博士がなんでしたか?」
「月詠を攫った奴の能力は透明化で姿だけでなく声や気配も消せるらしい。能力者暴走事件の実行犯で"サーカス"のメンバー、仲野博史だと今連絡が」
「はい?」
まさかの人物からの欲しかった情報の提供に瑞稀は頭が真っ白になった。しかしすぐに気を取り直し、データベースを確認する。すると先程中原が聞いた内容と全く同じ情報が、詩織を攫った男の顔写真と一緒にあった。
「中原さん、その人です。この顔で間違いありません!」
瑞稀が興奮した様に中原に伝える。中原はどこか腑に落ちない様子を見せながらも瑞稀の後ろに周りデータを確認する。
「こいつなんだな。……なんで博士はここまで知っていたんだ?」
中原は疑問を感じながらも今わかった事を特対の連絡網に回す。瑞稀は誰かの手の中で踊らされている様なそんな奇妙な感覚に襲われるもすぐに切り替え、その男の家の場所から隠れられそうな場所はないかと地図を広げて確認を始めた。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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