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ep49 初めての友達

 創作カフェ"ノアール"は流星学園の校門前の坂を降り切った場所にある。黒を基調とした建物で、内装もシックにまとまっている。学校の近くにある事からそれぞれの席の仕切りは高く儲けてあり、放課後は会話を楽しむ学生や勉強する学生などですでに混み合っていた。


「前は毎日通っていたけど、中はこんな風になってるんだな」


 席に着くと物珍しそうに当夜はまわりを物珍しそうに見回した。斜め前の席に座る詩織も当夜ほどにあからさまではないが物珍しそうに店内を見ていた。

 席には片側に当夜、純。向かいの席に瑞稀、詩織、翼の順で座っていた。翼が店員が持ってきたお冷を回しおえると、詩織にメニュー表を差し出した。


「ここのカフェ・オ・レ美味しいから、私のおすすめ。少し食べれるなら日替わりケーキセットも美味しいよ」


 もう一つのメニュー表を純に渡しながら翼は詩織に話しかける。当夜も純の横からメニュー表を覗き込む。そこにはおしゃれでわかりやすくメニューがまとまっていた。へぇーと興味深くみる。食事の写真を見て当夜は空腹を感じた。サンドイッチのセットをそれとなく眺めていると、純がメニュー表を当夜の前に移動させた。さすが純と内心で褒め称えながらじっくりとメニューを見る。


「三好君は決まった?」

「うん。ブレンドコーヒーにするよ。九条さんは?」

「んー、私はケーキセットでカフェ・オ・レかな。月詠さんや若葉先輩は決まりましたか?」

「えっと……まだ決まってない」

「俺は、サンドイッチセットにするよ。小腹が空いたし。ここのサンドイッチボリュームあって美味いんだよな」

「瑞稀はここ来た事あるの?」

「ああ、テスト終わりとかに良く和希とさ」

「あっ、若葉先輩も如月先輩経由なんですね。私もです。中3の時いきなりここに呼び出されたんですよね」


 純達の会話を聞きながら、メニューと睨めっこしていた当夜は顔を上げた。


「サンドイッチ悩んでるんだけど、美味いのか?」

「美味いよ。パンが少し焼いてあってホットサンドみたいになってるんだ。種類も豊富だしな」

「うーん、じゃぁ俺もサンドイッチにしよ。飲み物はオレンジかな」


 メニューが決まり、一仕事終えたと思うとさらにお腹が空いてくる。自然とまだ決まっていない詩織に視線を向ける。

 当夜が詩織に視線を向けている事に気づいた純が当夜の頭を軽く叩く。


「月詠さん、こいつの事は気にしないでゆっくり決めていいからね」

「……私、自分で選ぶの苦手で、前回は瑞稀と一緒のにしちゃったから」

「そうだったな。店に入るのもこれで2回目だし勝手も分かんないよな」

「そうだったの!? やっぱりいまいち分かってないけどお役目の影響? もし迷惑じゃなければまた誘っていい?」

「いいの? 私こんなに優柔不断なのに」

「人間、いろんな性格の人がいるからね。それに優柔不断なんてかわいいものだよ」


 詩織が不安げに言うのを聞き、翼は安心させる様に笑う。その笑みを見て詩織が決心したように翼を見た。


「せっかくオススメしてもらったから、私も九条さんと一緒のにしていい?」

「勿論いいよ! それと私の事は翼でいいよ。もう友達でしょ? 私もしーちゃんって呼んでいい?」

「えっ……しーちゃん?」

「うん。多分月詠さんにとっては私が初めての友達かもしれないと思ってさ、特別な呼び名で呼びたいなぁーって、ダメ?」


 首を傾げながら言う翼に、徐々に詩織の顔が赤くなる。そして、控えめに首を縦に振り小声で応える。


「……いいよ、翼ちゃん」


 名前を呼ばれて翼は嬉しそうに微笑む。その様子を見ながら、我慢ができず当夜は口を開く。


「なぁ、全員決まったんならとっとと頼まないか? 腹が減って仕方がねぇ」

「……このタイミングでお前は」


 純は呆れながらもこいつに言っても仕方がないかという諦めがありありと表情に表れている。


「あはは、そうだね。結城君のお腹が限界を迎える前に頼まないとね」


 そして、店員を呼んでそれぞれ注文する。注文後、料理が来るまで授業の話や部活動についてを瑞稀に聞いていく。あの先生は厳しいや、テストの傾向等の話で盛り上がっていると、すぐに料理が届いたように感じた。

 当夜の目の前に置かれたサンドイッチは竹籠に入り、クラフトペーパーに包まれている。ほんのり焼いたパンにはレタスとチーズ、トマトが挟まっており、食欲をそそる。

 不意に気になり、詩織の様子を盗み見る。そこには目の前に置かれたイチゴのショートケーキとカフェ・オ・レに目を輝かせている。


 詩織の隣に座っていた翼と目が合うと、余計な事は言わないでと瞳で当夜は釘を刺された。翼に頷き、オレンジジュースを一口飲む。そして、目の前のサンドイッチに齧り付いた。


「そういえば、もうすぐ部活見学始まるよな? 帰宅部って手もあるが何か入るのか?」

「俺は弓道部に入る予定です。島に来たから県大会とかには出れないけど、中学も弓道してて弓引くの好きなんですよね」


 瑞稀の疑問にすかさず純が答える。純は家が道場で小学生の頃から実家で空手、隣の道場で柔道を習っていた。しかし中学では物珍しさもあり弓道部に入り、どっぷりとハマった。当夜の誘いを断るぐらいには真剣に取り組んでおり、中学では全国大会にまでいっている。


「そーいや、お前が尊敬してる弓道の選手いたよな?」

「ああ、東條奏兎さんな。あの人の弓を引く姿がすごい綺麗なんだよな。顔もいいからか弓道雑誌にも取り上げられてる」


 熱く語り始めた純を見て、当夜は藪蛇を突いた事に気づく。

 そして翼の弟語りを聞いた時の親近感がなんだったのかを思い出した。普段はまともだから忘れていた。当夜はしまったと他の3人を見た。

 3人共珍しい純の様子に驚いた様子だった。


「なんか、三好君大人びてるイメージあったけど、年相応なところもあったんだね、安心した」


 翼が笑いながら眩しそうに純を見る。その言葉に詩織と瑞稀も頷いていた。


「結城君の保護者の苦労人って思ってた事謝らないといけないかな?」

「待って、九条さん。そのレッテル普通に嫌なんだけど?」


 翼の発言で現実に戻ってきた純は本当に嫌そうに顔を歪めていた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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