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ep48 遊びへのお誘い

 教室は投稿してきた生徒達の話し声で賑わっていた。当夜の席の周りに純と詩織が集まっていた。当夜は机に肘を付き、純達の会話をボーと聞きていた。


「それにしても月詠さん大丈夫かな? 昨日本当に顔色悪かったけど」

「そうだね、今日は休みかもしれないね。唯華は休むって連絡あったけど」

「山吹さん、お休みなの?」

「まぁ、中学も出席日数計算して登校してたからね」


 いつもの事と言う様に翼は笑う。その言い方から付き合いの長さを感じさせる。


「今日、山吹いないってことは直接月詠の背中が見えるのかよ」

「当夜、その言い方はないだろ! それに可哀想なのは月詠さんだ」

「でも月詠さん今日来るのかな? 本当に体調良くなさそうだったし、心配だな」


 翼が本当に心配そうに詩織の席を見る。確かに昨日の詩織は顔色が悪かったが、お役目がと帰っていっていたのを思い出した。


「確かに、今日は休んでも不思議じゃないよな」

「誰の話をしているの?」


 当夜が同意すると後ろから声がかけられた。振り返るとそこには鞄を持った詩織がいた。翼がすぐに詩織に駆け寄る。


「月詠さん、体調は大丈夫? 無理していない?」


 本当に心配そうに聞く翼に詩織は何故そんな事を聞かれるかわからないという不思議そうな顔をしている。その様子に当夜は疑問に思った。クラスメイトに心配されるそんな当たり前のことが信じられないのか? そう思うとなんだか詩織が可哀想に感じた。しかし、彼女がいけすかない事実は変わらない。だなら当夜は自分の態度を変える気はないのだ。


「大丈夫。早めに寝て起きたら戻っていたから」

「ならよかったけど、無理しないでね?」

「確かに顔色は昨日と比べてかなりいいね。安心した」


 2人の様子を見守っていた純も安堵した様に伝える。


「なんで……」


 詩織が何か言おうとしたが小声すぎて教室の喧騒にかき消された。聞き返そうとする前に予鈴が響き、純達が「また!」と自分の席に戻っていく。詩織も当夜を一瞬見てから自分の席へと座る。

 すこしして本鈴がなり、担任が教室に入ってきた。




 ♢♢♢♢




「月詠さん、よかったら今日一緒に帰らない?」

「……? なんで?」


 放課後、詩織の席まで来た翼はいつも通りの笑顔で彼女に話しかけていた。詩織の不思議そうな声が聞こえる。


「ほら、色々事情はあるけど2日間一緒に同じ目的の為に動いた仲だしさ、私は仲良くなりたいって思ったの。ね、三好君」

「えっ? そこで俺に振るの、九条さん……。まぁ確かに当夜が迷惑かけたお詫びはしたいとは思うけど……」

「俺が迷惑かけたってどう言うことだ!!」


 純の言葉が聞き捨てならず、当夜は噛み付く。しかし純は当夜の言葉を無視する。


「あっ、予定とかあったら別に無理にではないよ? お役目……だったけ?」

「お役目の時間まではまだあるけど……」

「なら、よかったら少し遊ぼうよ。本調子じゃないならカフェとかで話すだけでもいいし」


 迷っている詩織に翼は畳み掛ける。


「若葉先輩も誘ってさ! あっ、もちろん結城君達もだよ?」


 詩織は当夜達の方に、笑顔を向ける。しかし、その顔は断らないよね? と書いてある気しかしなくて少し怖いと当夜は思った。チラリと純を見ると同じ気持ちだったのか目が合う。

 お互いに目で意見を合わす。そして代表して純が翼に向き直った。


「俺らはいいけど、若葉先輩は予定ないかな?」

「俺がどうした?」


 教室の後ろの扉から顔を出しながら瑞稀が教室に入ってくる。純はすぐに頭を下げる。


「若葉先輩、こんにちは」

「三好君は真面目だなぁ」


 挨拶をする純に瑞稀は片手をあげて返事をする。その顔は後輩の新鮮な反応を喜んでいる様に見えた。


「それで、どうした?」

「あっ、若葉先輩。この後予定ってありますか? みんなで遊びにいかないかと思いまして」

「みんなって、このみんな?」


 翼の言葉に、瑞稀は3人の顔をそれぞれ見る。それを見て当夜と純は頷く。


「詩織が参加するなら俺も参加しようかな」


 そう言いながら、瑞稀は詩織を見る。詩織はうっと顔を顰めた。判断を任された詩織は悩ましげにしている。それを見ながら当夜は思ったことを口にした。


「嫌ならいや、行きたいなら行きたいでいいだろ。何悩んでるんだ?」

「こら、当夜! お前みたいに全員単純じゃないんだよ!」

「は? 純、人を単純みたいに言うな!」

「単純バカだろ!」


 そのまま純と言い合いをしていると、翼がいつもの様にその様子を見て笑っているのが視界の隅で捉えた。


「……行ってみたいかも。瑞稀……いい?」


 控えめに言う詩織に瑞稀は満面の笑みで答える。


「当たり前だろ。九条さん、俺たち2人も参加でいいか?」

「はい。嬉しいです。やっぱり月詠さんの体調考慮して、カフェの方がいいかな? 前に行ったところは……」

「あそこはしばらく行きたくないです!」

「あそこは嫌だ!!」


 場所の提案をしようとした翼に詩織と純はほぼ同時に拒否をした。まだあの地獄の親睦会の記憶は新しい。同じメンバーで行くならもう少し時間を置きたい。


「そっか。仲良く否定されちゃったら仕方ないなぁ。どうしよう。若葉先輩はどこかいいところ知ってます?」

「そうだな、話すなら半個室とかの方が周りに迷惑かけなくていいよな……」


 そして翼と瑞稀の相談により、行き先は学校の近くにある学生御用達の創作カフェに決まった。

 そして鞄を持ち話しながらカフェへと向かった。当夜は心なしか詩織が嬉しそうな顔をしている様に感じ、自然と頬が緩むのに気づき、不思議に思った。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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