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ep45 本島と能力者

  聞きたい事はある程度聞け、頭の中で整理を行なっていた翼は当夜の発言に一瞬言っている意味がわからなかった。

 どんなスタンスで今までの話を聞いてたのか? というか盗聴してた内容と、その後の詩織達の反応でほぼ確定していたと思うんだけど、と思わず当夜を見て、キラキラに輝く瞳を見て悟った。


(結城君、何一つ理解していなかったんだ。ことの重要性もわかってない可能性あるのかな? )


 少し当夜を心配したが、すぐに翼は切り替えた。何かあれば純がなんとかするだろう。純に全てを投げることに決めた翼は視線を当夜から来宮に戻す。そして彼女の口角が上がっていることに気づく。


「ふっ、馬鹿は話の理解がなかなか追いつかないとは聞いたことあったが、このレベルだとはな。面白い」


 この空間で唯一この状況を楽しんでいる。翼はそう感じた。


「今、人のことをバカって言ったか!?」

「褒め言葉だよ」


 噛みつこうとする当夜に来宮は微かに笑いながら言う。そして、当夜から翼に視線を移す。


「先程の話だが、本島に住んでいて能力者が気づかれるのは運が悪かったというケースが多い。主に能力の暴走か、本人も無自覚の状態で探知能力者の近くを通ってしまったかの二択だ」

「でも、能力者は島からでれないのでは?」

「一般的にはな。さっき言った上層部にいる能力者一族だが、何故か能力者は双子ないし、近い歳で必ず生まれる。だから、記憶捜査と能力探索この能力者はそれぞれ1人ずつ島と本島に別れているんだ」


 そこで来宮は言葉を切る。そして組んでいた足を入れ替え、手の甲に顎を乗せた。そして口角を上げながら、真実を口にする。


「本島で能力暴走が起こった場合は、すぐに封鎖され見た人間全てに記憶操作が行われている」

「それで本島では、いや日本では能力者という存在はフィクションだと思われていたってことですね?」

「ああ、そしてそれは能力探知に見つかってしまった能力者の家族にもされることがある」


 来宮は淡々とこの島の、日本の能力者に関しての真実を話す。時々、風見や詩織達の止める声が聞こえるが翼は無視した。危険を冒してでも、誰を巻き込んでもこの先の真実が自分が1番知りたかった事だと予感する。


 部屋の空気は緊張に張り詰めていた。隣の当夜がまた首を傾げているが翼は気にしない。必死に止める声(雑音)は聞こえないフリをする。来宮の一挙手一投足を見逃さない様に、瞬きすら惜しんで見つめる。


「本人が納得しないとまずは家族に説得させようと他言無用と前置きをして能力者の存在をバラす。そして納得し協力した場合は記憶の操作を行わない。だから他言無用さえすれば、能力者の事を知っていても問題はないはずなんなだ」


 後半の言葉は風見達に聞かせている様にも聞こえた。しかしこれで納得した。何故急に翼だけを置いて御影島に移住の話が出たのか。何故、弟との距離を取らせようとしているのか。しかし知ったことか。弟が能力者? そんなのは関係ない。私の双子の弟(片割れ)だ。そんなくだらないことで引き離されてたまるか。

 翼は新たな決意を人知れず胸に秘めた。何があってもこの事実を忘れはしない。記憶操作なんて能力に私の気持ちを操作なんてさせないと。


「家族だけが知らされる。それは特殊例だ」

「その恩恵で能力者の存在を知っているお前はなんなんだ?」


 来宮の発言に食ってかかる風見だが、すぐに彼女に切られる。微かに視線を風見に向けると彼は拳を握りしめて、なんとも言えない表情をしている。様々な葛藤を感じさせる表情を見ながら、長い付き合いでこんな表情をしているのを見たことがあっただろうかと翼は思った。色々と恩もある。島の裏に片足を突っ込むだけで済んだのも風見の存在は大きいし、恩もある。しかし天秤は迷わずに家族に傾く。


「それは……」

「反論できないなら黙っていろ。私は科学者だ。知りたいという若者に真実を話すのをやめるぐらいなら、謎の探究なぞする資格がない」


 来宮は風見から興味をなくした様にその後は視線を向けることすらしない。


「それがこの島の上層部が隠している真実ですか?」

「ああ、上層部のな。月詠側に関しては私も知らん」


 そう言葉を切り、詩織達の方を来宮は見た。詩織の顔は心配になるぐらいに真っ青で、体を瑞稀が後ろから支えている状態だ。

 流石の翼もこの状態の詩織を詰める気にはならなかった。しかし、隣にいた当夜は違った様だ。詩織達の様子に気づくと迷わずに椅子から立ち上がり、そちらに向かった。近くにいた純が一拍遅れて気づき止めようとしたが遅かった。


「一切話はわかんなかったが、お前も何か隠してることがあるならこのタイミングで言っとけ」

「当夜!! 月詠さん、このバカの言ってることは気にしなくて大丈夫だから!!」


 少し遅れて純が当夜に追いつき、口を塞ぐ。その様子を見ながら翼は考える。


(ここまで聞いても本島はともかく御影島まで能力者の存在を秘匿するのはなんで? 風見さんも月詠さん達も必死に止めているけど、上層部の話を除くとそこまでして隠すことには思えない。逆に能力者の為の島と銘打てば迫害されないと自然と能力を隠し持っている人が来るんじゃないのかな? 島から出さない理由も説得力が少しない)


 自分の疑問を脳内で整理しながらも、情報はもらおうと当夜に詰め寄られている詩織を見た。

 チラリと周りの様子を伺うと興味深そうに詩織達を見ている来宮と頭を抱えている風見を視界にとらえた。

 そして、部屋の窓から風が強いのか葉っぱが宙に舞っているのが見えた。すでに空は月明かりが照らしており、夜になっていた。

本日より毎週水曜日20時より『月と陽』という作品を更新します。初回は序章3話更新です。こちらの作品は本作と同世界同時間軸の話です。よろしければ合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

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