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ep42 そうだ、屋敷に乗り込もう!

 風見のワンボックスカーの中を緊張した空気が駆け巡る。

 当夜は盗聴器から聞こえた内容にワクワクしていた。この島は治外法権っていうだけでなく他でも本島での自分の常識を覆してくれる。それが嬉しくて仕方がない。しかし、隣の純は何かを考え込んでいるし、詩織たちの顔色は悪い。

 不思議に思っていると普段よりも笑顔の硬い翼と目が合った。

 当夜止めがあったことに気づいた彼女はニコッと笑う。そして少し考えてから予想外の発言をする。


「よし、別荘に乗り込もう!」

「は?」


 翼以外の4人の声が重なる。しかし翼はいいことが思いついたという様に口笛を吹きそうな勢いに見える。


「なんか能力者による能力者の自演誘拐事件とかいうどこの漫画ですか? って感じの話が聞こえたから、とりあえず風見さんに真相を確かめに行こう。話を聞いていた感じだと、屋敷に危険はなさそうだし」

「えっ、九条さん待って。風見刑事は待ってる様に支持したんだよ?」


 翼の提案に年長者の瑞稀がまず異を唱える。それに続く様に純と詩織も頷いた。


「若葉先輩と同じ意見です。危険はないかもしれないけど、これは俺らが関わっていい内容じゃない」

「私もそう思う。九条さん、面白半分で首を突っ込まないで」

「なら、月詠さんか若葉先輩が説明してくれますか? 本当にいるかはまだ信じられないけど、この島がまるでその能力者の監獄みたいに言われていた件について。聞いた時の反応から、2人は知ってますよね?」


 止める詩織たちに翼は何食わぬ顔で深く突っ込んだ。話を聞いた以上は聞かなかったふりはしないとその真剣な瞳が語っている。

 当夜も同意だと大きく頷いて、口を開こうとするが察しられた様で隣にいた純に口を塞がれる。


「当夜、お前が口を挟むとさらに面倒な事になる予感しかないから大人しくしていてくれ」


 純に体の自由を奪われながら言われ、当夜は頷くしかなかった。ここで反応したら、そのまま締められるのが目に見えていた。


「何を言ってるの? 九条さん」

「私、結構こういうの気づくんだけどさ、能力者って単語が出た時の月詠さんの顔怖かったよ? まるで親の仇を見るような顔してた」

「……」


 翼の言葉に詩織は黙る。後ろからだと詩織や瑞稀がどんな表情をしているかわからない。しかし、普段と同じ笑顔を浮かべながらも有無を言わさずに真実を聞き出そうとする翼に恐怖を感じる。純も同じ様で、自分を抑える手が恐怖からか少し震えている。


「話したくないならいいよ? もう、私は風見さんに聞くって決めてるから止められても私1人で行く」

「……でも!!」

「詩織、諦めよう。多分九条さんには口では勝てない。それに俺達は説明をできない。だから……屋敷に行こう」

「!? 若葉先輩?」


 味方だと思っていた瑞稀が折れた事に純は驚きが隠せない様子で当夜の口を押さえていた手が離れる。

 それをチャンスだと思い、当夜は純から少し距離を取る。


「ここにいても埒があかない、とっとと行こうぜ」


 当夜の場違いな明るい声に押される様に全員で車から降りた。

 瑞稀が車がロックされた事を確認してから、5人は屋敷に向かって歩き出す。屋敷への道中、みんな無言で重たい空気が流れている。まだ春先だから冷たい風が吹き抜けていき、当夜は少しだけ肌寒さを感じた。これは寒いからなのか、この空気がそう感じさせるのかどちらだろうか。

 数分ほど歩き、屋敷に到着する。

 代表して瑞稀がインターフォンを鳴らす。するとすぐに扉が開いた。


「あれ? 翼? それに若葉も……」


 中から出てきた少年は翼を見て不思議そうにしている。


「零先輩、お久しぶりです」

「え? 風見なんでここにいるんだ?」


 翼は嬉しそうに微笑み、瑞稀は驚きで目を見開いている。


「知り合い?」


 その様子を見て純が不思議そうに尋ねる。その横で当夜も興味深そうに3人を見た。


「翼とは幼馴染みたいなものかな? 若葉とは共通の知人がいてね」

 

 穏やかにニコニコと笑う零に瑞稀がやや驚いた様に声を絞り出すように口を開いた。


「お前がここにいるってことは……」

「あー、お前月詠の巫女の関係者だったけ? なら知ってて当然か。その予想通りだよ」

「……そうか」


 瑞稀の表情が先ほどよりも険しくなった事を当夜は不思議に思いながらも零の背後ーー屋敷の中を覗き込もうとする。


「あっ、立ち話もなんなだね。とりあえず中に入る?」

「ありがとうございます!」


 その言葉を待っていました! とばかりに当夜は元気にお礼をいい、中に入る。


「すげぇー、広いな」


 当夜は中に入り玄関ホールを見渡す。すぐに純が駆け寄ってきて当夜を止める。


「待て待て待て、なんでこの状態でお前はそんなに呑気なんだ?」

「ん? この状態ってなんだ?」


 純の質問に当夜は首を傾げる。本当に純の言っている意味がわからない。その様子に当夜の考えを察したのか純はため息をつく。


「おい、ガキどもなんで此処にいやがるんだ!?」


 その時、屋敷の奥から怒り心頭の様子の風見が当夜達に詰め寄ってきた。

 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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