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ep41 誘拐事件の真相、そしてーー

「あの、俺はいつまでここにいればいいんでしょうか」


 少年ーー風見零はパソコンに向かい、キーボードを叩いている来宮に遠慮がちに聞いた。来宮はパソコンから視線を外さずに零に答える。


「また暴走する可能性はゼロじゃない。1ヶ月はここで様子観察だ」

「家族が心配してると思うので、連絡だけでも」


 この家からまだ離れられない事を確認し、せめて家族にだけでも安否を伝えたいと零は交渉する。しかし来宮にバッサリと切られる。


「駄目だ。暴走させた奴らに覚えられてた場合、お前だけじゃなく他の能力者にも影響が出る可能性がある。どこから情報が漏れるかわからない以上、このまま待機だ」


 零は何かを言いかけたが、この数日で来宮に口では勝てない事を思い出し、諦める。すると来宮の携帯が着信を知らせる。ちらりと着信者を確認した来宮はため息をつき、キーボードから手を離し、電話に出た。


「吹雪か、どうした」

『動きがあった。明日から能力者暴走計画は始まるようだ。最初の被害者は南麗華。能力は念動力の様な物だ』

「思ったより早かったな。私の失踪で焦ったか」

『どうだろうな。奴らは能力者に向けて特定の波動を脳に送る。そこから暴走まではタイムラグがあるんだったな?』

「そうだ、1時間程の猶予がある。その間に事情を話し、こちらに連れてきてくれ。そうすれば後はなんとかしよう」

『わかった。こちらの手のもので暴走の危険がある事を伝え、テレポーターを使ってそちらに送ろう。後の解除はそちらに任せたぞ』

「誰にものを言っている」


 来宮は吹雪と今後の計画を練る。能力者は島民全体だと少ないがそれでもかなりの数がいる。全員を退避させるのは難しい。だからこそ、暴走の解除方法を手に入れた来宮達は敢えて後手に回り、被害者を回収する計画を立てた。

 特対部がこの屋敷を訪れるまで、能力者は保護する。上層部に首謀者がいる以上、下手に警察に通報しても揉み消される可能性がある。だから、特対部の署員が気づくのを待った。


 その間に被害者は増え、最初は吹雪の手のものを借りて回収していた被害者は、また暴走させられるかもしれない危険から逃れる為に屋敷に留まり、同じ境遇の被害者を回収。そして来宮が能力の暴走を阻止する。そのシステムが出来上がっていた。


 転機は車を持っている結界を張れる能力者が被害者になった事だ。吹雪がその車のナンバーをデータベースからすぐには見つけられない様に細工した。そして零が後部座席に乗り込み、認識阻害にて車を見つかりづらくする。車で被害者のものに訪れ、何気ない素振りで近づき能力が暴走する可能性があることを伝える。そして一緒に来宮の元に来る。そんなサイクルができて1ヶ月経過していた。




 ♢♢♢♢




 静かに話を聞いていた風見は、弟の安否がいきなり判明したことに驚きながらも、表情には出さずに事件について真剣に聞く。話を聞き終えてからまず1番に気になった事を風見は聞いた


「でも、来宮博士。中原さんと知り合いっすよね? 中原さんに連絡すればよかったんじゃないんすか?」

「中原……そういえばそうだったな。だが、連絡先は知らん。それに特対に上層部のグルがいないとは限らない。下手にトップに伝えて情報漏洩するよりは、正義感のある奴がここまで辿り着くのを待っていた方が合理的だ」


 風見の質問に来宮は興味なさげに答える。説明はするが早く研究に戻りたかった。


「とりあえず、後はお前の仕事だ。とっとと実行犯と首謀者を捕まえろ」

「……とりあえず、極秘案件として中原さんと情報共有するっす。来宮博士、状況により協力は勿論してくださるっすよね?」


 有無を言わせない眼光の鋭さを向けられても来宮は飄々としている。

 風見は弟の無事を確認するよりもまずは中原と協力してこの事件の解決が先だと後ろ髪を引かれる思いはありながらも、携帯を取り出し、連絡をするのだった。




 ♢♢♢♢




 風見の話を盗聴器にて盗み聞いていた5人は沈黙し、車内は静寂に包まれていた。まず最初に沈黙を破ったのは翼の独り言だった。


「零先輩無事だったんだ。これで弟と和希先輩が安心する」


 安堵で自然と頬が緩む。事件の真相まで聞き終え、これ以上は流石にまずいかと判断した翼が、スマートフォンを操作し、盗聴を切る。


「とりあえず、そこまで凶悪犯じゃなったみたいだね」


 そしていつもの笑顔で後部座席を振り返り、その笑顔が固まる。そこには理解できない単語が出てきて首を傾げている当夜と純。顔を真っ青にしている詩織とそれを心配そうに見ている瑞稀の姿があった。


「能力者って、何かの隠語か?」


 純がうーんと唸りながら呟く。それにしては話は生々しく本当に能力者という存在がいる様に聞こえた。どういう事だと考える純の隣で、当夜は少し目を輝かせた。


「なんだ、この島には超能力者もいるのか! 本当に日本と違うな」


 その言葉を聞き、詩織と瑞稀が固まった。一般人への能力者の秘匿の優先順位は高い。しかし、内容に集中しており本来能力者の存在を知ってはいけない3人がガッツリと能力者絡みの話を聞いてしまったからだ。誤魔化すにしては盗聴の内容の中心の話題で難しい。


 お気楽な当夜以外は緊迫した空気が車内を支配していた。

本来の予定では当夜達が能力者について知るのはもっと先の予定でした。しかし気がついたら翼が盗聴器を使用していて、さらっとバレる展開になっており、作者は「どうしてこうなった」としばらく頭を抱えました。この先もキャラ達の暴走で続きがどうなるか作者自身がわかりません。そんな御影島の日常?を楽しんで頂けると幸いです。




今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

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