ep39 屋敷の中にいた者は?
車に戻った当夜は純にこってりと説教された。思いつきで危険な事をするんじゃない。何かあったらどうするんだ。脊髄反射で動くななどなど車の後部座席に座りながら隣で不服そうに座っている当夜を怒鳴る。
「おい、当夜聞いてるのか!」
「純、うるさい。アジトっぽいの発見できたんだからチャラだろ」
「そういう問題じゃない!」
まだまだ純の説教は続く。その様子を見ながら瑞稀は助手席で何かを考えるように座っている翼に声をかけた。
「九条さんは良かったのか? 結構強引にこの件に関わろうとしてる様子あったけど」
「若葉先輩にはそう見えました?」
返答にならない問いを返し翼は背もたれに体を預ける。そして一息つく。車内から純の説教以外の音が消える。
ジッと言葉の続きを待っている瑞稀に、翼は根負けした。
(流石に誤魔化されてはくれないか)
心の中で翼はため息をつく。そして助手席から後ろを振り向き、瑞稀の顔を真剣にみる。瑞稀の隣にいた詩織がその真剣な様子に息を呑む。
「風見さんとは付き合い長いですからね。色々あって子どもには甘いんですけど、本当にダメな時は譲らないんですよ。今回がそれだったので、諦めただけです」
「でも、それにしては簡単に折れていなかった?」
「あー……」
詩織の質問に翼は窓の外を遠い目でみる。そして、左耳からイヤホンを外す。
「今日会った時に、盗聴器を風見さんにつけていたんだよね」
「はっ?」
翼の発言に車内の空気が凍る。説教していたはずの純でさえ絶句していた。しかし翼は悪びれる様子もなく続ける。
「別に盗聴器使っちゃダメっていう法はないからさ、犯人候補とは絶対に対面させてくれないと思ったから、つい」
まるでいつも盗聴器を持ち歩いているかのような軽い調子で翼は笑いながら、またイヤホンを左耳に入れる。それを見て最後尾に座っていた当夜が身を乗り出す。
「マジか! 九条! イヤホン外して俺らにも聞かせろよ」
当夜の発言に詩織と瑞稀は真剣な顔で頷く。知れるのなら情報は多い方がいい。
純は頭を抑え、自分以外が盗聴を肯定している事実に何も言えなくなる。
翼は、少し考えてからイヤホンを外し、全員に盗聴の音声が聞こえるようにする。
スマートフォンからは風見の声が響いてきた。
♢♢♢♢
インターフォンを鳴らした風見は、真剣な面持ちで応答を待った。少しすると「はい……」と控えめな女性の機械を通した声がする。
「すみません、警察です。この近くに誘拐事件で目撃された車を発見してお話を伺いたいのですが」
少しの嘘を混ぜながら、インターフォンのカメラに自分の警察手帳をかざす。
機械を通して息を呑む音が聞こえ、背後で何かを話している声がする。
(複数人いるのか? )
聞こえてくる声から情報を多く得ようと風見は努めた。しばらくすると控えめに玄関の扉が開く。中から長い茶髪の女が出てくる。その姿を見て風見は目を見開いた。
しかしすぐに、冷静になり目の前の女を見つめて重たい口を開く。
「貴方は南麗華さんですね、1ヶ月程前に行方不明になった」
「……そうですね」
女ーー南麗華は少し申し訳なさそうに微笑み、肯定した。
「立ち話もなんですので、中へどうぞ。私たちの事情を話せる範囲でお話しします」
そう言って、風見を屋敷の中へと招き入れた。
風見は自分の腰に付いている拳銃を目で確認し、いつでも応戦できるようにと緊張感をもち、屋敷内へと足を踏み入れた。
♢♢♢♢
「なんだ、特対のチャラ男か」
応接間のような場所に案内された風見は上手側に座っていた白衣を着た女性を見て言葉を失った。
白衣の女は風見の顔見知りで、相手も風見を認知していた。
ソファに座り、足を組んだ状態で風見を興味なさそうにみる。
「なんで、ここにあんたがいるんっすか、来宮博士」
白衣の女ーー来宮眞琴はその問いにニヤリと笑う。そして、風見に自分の前のソファに座るように促す。警戒しながらも風見が座ったのを確認後、来宮は独り言のように呟く。
「これでやっと、研究に集中できる」
来宮は嬉しそうに口元を緩ませるものすぐに無表情へと変わる。
「さて、ここに来たってことは能力者行方不明の捜査だな? やっとここに来てくれて嬉しいよ」
「待ってほしいっす、なんであんたがここにいるかの質問にまず答えろ!」
「はぁ、せっかちな男は嫌われるぞ? 特対はどこまで掴んでるかまずは教えろ」
来宮は自分のペースを崩すことなく、言いたいことだけをいう。風見は一瞬言葉を詰まらせるが、現在の憶測についてを語った。
能力者誘拐事件の被害者は次の事件に協力しているのではないかという事を。
それを聞くと来宮はニヤリと笑う。
「そこまで辿り着いていたか。それは正解だ」
来宮はそう言い、この事件のきっかけを語り出した。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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