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ep36 不良娘はどっちだ?

 授業が終わり、放課後。教室内はすぐに帰宅する生徒や近くに集まって話している生徒に分かれていた。

 詩織は後ろの席の唯華の方へ振り向く。


「唯華、今日は家に帰ってくる? 用事があるから私も瑞稀も帰りが遅くなるかも……」

「今日は元々家に帰らないつもりだったから心配ないよ」


 心配そうな詩織に唯華はそう伝えながら帰り支度を進める。


「山吹、家に帰ってないのか?」


 それに対して、唯華の後ろの席の当夜が尋ねる。唯華はどこか面倒臭そうに表情を一度歪めるも、すぐに笑顔を貼り付けて当夜の方を向こうとした。


「唯華は不良だからね、結城君」

「……翼」


 純と共に当夜の机に近づいてきた翼が笑いながら先に答える。唯華は笑顔の仮面を少し崩し、翼を見る。


「そうなのか!?」

「私よりも翼の方が不良だと思いますよ」


 感情を読ませない笑みを貼り付けて唯華は当夜を見る。


「こら、当夜!」

「わぁー、唯華ひどいなぁ」


 暴走しそうな当夜の肩を掴み、純は首を横に振る。その横で翼は白々しく笑った。

 そんな4人の様子を詩織はどこか眩しそうに見る。

 徐々にできたグループが教室から出ていき喧騒が小さくなる。


「よっ、待たせたか」

「学校で迷惑はかけていないだろうな」


 廊下から瑞稀と和希が教室に入ってくる。和希の姿を見ると翼があからさまに嫌そうな顔をする。


「人の顔を見てその顔はなんだ、九条に山吹」


 和希は翼と唯華の顔を見てため息をつく。寮長の顔を見て当夜は息を呑み純と共に気配を消す。


「如月先輩が1年の教室に来るのは珍しいと思いまして。用事があるなら基本的に翼に連絡入れてるじゃないですか」

「今日は瑞稀の付き添いだ。生徒会と部活は今日は休みだから校門まで一緒に行こうと思ってな」


 唯華の問いに和希はなんでもないことのように答える。和希は第2寮長であると共に2年にして圧倒的な支持で生徒会長を勤めていた。


「若葉先輩と仲良いんですね、如月先輩」

「如月先輩、詩織と若葉の知り合いだったんですか?」

「和希さん、お久しぶりです」


 瑞稀と和希の仲に微かに驚く翼と唯華。詩織は久しぶりに会った先輩に挨拶をする。


「つくよか、久しぶりだな。いいか、後輩とはこうするものだぞ、山吹」

「……えっと、ご自分に言われてます? 3年生敬わずに私刑執行したって翼に聞いたんですけど」

「お前は本当にあーいえばこーゆうな!」


 そんな話をしながらも帰り支度を終えた当夜と詩織を確認し、7人は昇降口に向かい、校門まで行く。

 その途中で和希は先生に呼び止められ別れた。


「はぁー、やっと寮長どっかいってくれた」

「当夜、気持ちはわかるが、声に出すなよ」


 疲れたように当夜は伸びをする。純は当夜を嗜めるもその顔は安堵に満ちていた。


「あはは。ここ数日結構絞られてたもんね、結城君」

「逆になんで九条はそんなに自然体で接しられるんだ」

「中1からの付き合いだからねー」

「もしかして、和希が言ってた使える1年って九条さん?」


 結城の質問に翼が答えると瑞稀が驚いたように翼を見る。


「多分そうだと思いますよ。時点で唯華」

「思いっきり翼に巻き込まれたからね」


 近くを少し離れて歩く唯華に翼は声をかける。唯華は嫌そうな顔をしながら続ける。


「それよりも聞こえた話から5人は用事あるんだよね? 私もう先に帰ってもいいよね?」


 もうすぐ校門というところでやや早歩きしながら離れようとする唯華。翼は笑いながら唯華の肩に手を回す。


「そうだけど、校門まで一緒でもいいじゃん。急ぎの用事でもないんでしょ?」

「……はぁ」


 グイグイ来る翼に思わずと言った形で唯華はため息を吐く。諦めた唯華を見て翼は満足気に笑った。


「ガキども遅いぞ」


 校門前でサングラスをかけて仁王立ちで待っていた風見は当夜達の姿を見つけると低い声で言う。


「風見さん、ずっとそれで待ってたの? 警察なのに不審者で通報されない?」

「ほぉ、待たせといて第一声がそれか翼、覚悟はできてるんだろうな」


 風見を揶揄うように翼は近づき、風見のこめかみがひくつく。それを横目に唯華はその集団から離れようとする。しかし、翼がそうはさせまいと腕を掴む。


「唯華に紹介したくてさ、この人風見さん。警察だけどちょろいから覚えておいて」

「……警察にその言い方はないでしょ」


 翼に唯華は呆れる。風見は唯華を見て、首を傾げた。


「翼の知り合いか? それにしてはドライだな」

「面倒事が嫌いなだけです。今から5人と何かやるみたいですけど、私は巻き込まないでくださいね」


 唯華は風見に対して有無を言わさない雰囲気で言うと、翼に「手を離して」と伝える。大人しく翼が手を離したのを確認し、詩織と瑞稀に向き直る。


「何しようとしてるかは興味ないけど、無理はしないようにね」


 そう伝えると今度こそ唯華はその場を去った。その後ろ姿を詩織と瑞稀は感動したように見つめる。


「唯華が心配してくれた!」


 2人で喜びを噛み締め合う。そんな様子を呆れた様子で見ていた風見は疲れた様子で自分の髪を掻き乱す。


「とりあえず、もう一度現場に移動するぞ。今日は車で来てるから、着いてこい」


 風見の号令に従い、5人は後に続いた。

 そして白いワゴン捜査2日目は幕を開けた。


 

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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