ep34 パズルのピースはハマり始めた
御影警察署、特殊能力対策部署に割り振られた部屋に奏と風見は入る。中では署員が忙しそうに走り回ったり、資料の整理をしている。
「どうかしたの?」
奏は近くを通った部下に声をかける。
「お嬢! 昨日中原さんが助けたはずの能力者が誘拐されたって話は聞きましたか? さっき桜木直樹がいた商店街の防犯カメラをダメ元で漁っていたら、桜木がある人物と合流する瞬間の映像があったんです」
署員の発言に奏と風見は驚く。風見はすぐに署員に近づき、「映像はどこっすか?」と聞き出し、映像の確認に行く。残された奏はわずかに目を見開きながら、署員に聞く。
「その人物とは連絡が取れるの?」
「いえ、それが1ヶ月前に行方不明になっていた女ーー南麗華だったんです。行方不明届を出した家族に確認したんですが、帰ってきていないと……」
「この行方不明事件、ただの連続誘拐じゃなく何か裏がある可能性がある」
奥のデスクから中原が頭をかきながら近づいてくる。スーツの胸ポケットには乱雑に入れられたタバコの箱とライターがチラリと見えている。
「行方不明者が操られてる可能性もあるって事ですかね」
奏は顔色を変えて中原を見る。
「その可能性もある。だが、監視カメラの映像から桜木も拒否なく南についていっていた。何か事情があり行方不明者同士が協力して他の行方不明者を攫ってるなんて可能性すらある」
「それは流石に飛躍しすぎでは?」
疲れたように言う中原に奏は思った事を口にする。自由になったのに行方不明を続ける理由がわからないからだ。
「中原さん、今連絡があって来宮博士が行方不明になった際に持ち出した研究データが何かわかったす!」
タブレットを片手に風見が中原に近づく。そして、中原や奏に見えるようにタブレットの位置を調節する。
「1年程前に能力者の暴走事件があった事覚えてるっすか? 来宮博士はその暴走のメカニズムを調べて暴走を止める方法を研究してたらしいんすよ。で、消えた数日前に能力者を暴走させる方法まで判明させていたらしいっす。そこから暴走を止める要因を探そうとしていたら行方をくらませた」
風見はそこで言葉を切り、持っていたタブレットで右肩を叩く。
「これ、実は能力者が暴走する可能性の能力者を攫ってる説ないっすか? 能力者の暴走事件が多発したら、締め付けが強くなる。そして能力者は身内にも自分が特殊な能力を持っている事を隠す傾向がある。それを踏まえると可能性がグッと上がると思うんすよ」
オッドアイの目を鋭く光らせ風見はいつもに増して真剣な表情で言う。
中原はその仮説を聞き、頷いた。
「その可能性は否定できないな。また島の上層部に能力者の取り締まりを強化しろって奴らが増えてきた。仲間を増やすために来宮博士のデータを盗んで、意図的に能力を暴走させた? 博士はそれに気づいて閉じ込められたか、逃げたかのどちらかの可能性があるな」
徐々に事件の糸口が見えてきて中原の目にも生気が戻ってくる。拳を握りしめ、そんなことの為に人の人生を台無しにしようとするのかと怒りで震える。
「となると行方不明者の安全は確保されてる可能性が高いですね。逆に今普通に生活している能力者全員が能力暴走の危険があると」
奏は推測を語りながら唇を噛み締める。能力者の暴走、それは彼女の恩人を奪われた原因であり、警察として防がないといけない事だ。
「そうとわかったら、ガキどもどうするっすか? 変に関わると危険に巻き込む可能性があるっすよ?」
先ほど脅しのように捜査協力をすることになった翼達を思い浮かべながら風見は中原に指示を仰ぐ。
中原は少し考えるそぶりをしてから風見を見た。
「白いワゴン車を追えば、行方不明者達の居場所がわかるかもしれない。お前はその子ども達と協力してそっちを追え。逆に天宮、お前はこっちの捜査を手伝って、俺と行動を共にし、月詠の巫女達は風見に任せろ」
中原の指示に2人は絶句した。月詠の巫女第一の奏に詩織から離れ、代わりに風見がつけと言うのだ。
「なんでですか!!」
奏が強く中原に抗議する。
「能力者の暴走事件だからだ、それで現在の月詠の巫女の両親が巻き込まれて亡くなってお前も気を病んでるのを知っている。仮に暴走の能力者に出会した時にお前はまともな判断が出来るのか?」
中原の問いに奏は黙るしかなかった。両手の拳を握りしめ震える。そんな事できるわけがない。それは奏が1番よくわかっている事だった。
「それはわかったっすけどなんで俺がガキどものお守りを?」
奏が捜査に加わる代わりに自分がお守りになることに納得のいかない風見は中原に鋭い眼光を向ける。
すると中原は微かに笑い、部屋を出るぞと風見を連れて部屋を出た。
♢♢♢♢
喫煙所までくると中原はタバコに火をつける。タバコの香りを鬱陶しく思いながら風見は中原を見る。
煙を吐き出しながら中原も風見を見た。
「行方不明者を1ヶ月前以上前のも洗った結果、風見零って名前を見つけた。おまえの弟だな?」
断定するように言われ、風見は言葉を失った。特に話すこともなく弟がいるとは言ったことがない。しかし中原は確信したように言っていた。
「それも例の情報源からの情報っすか?」
「違う。この事件にお前がいつも以上にやる気だからだ。それで同じ苗字のやつが行方不明になってるってなれば、そりゃ疑うだろ。その反応は図星ってことだな」
タバコを咥えなおし、中原は紫煙をぼんやりと見つめる。
「天宮ちゃんとは逆の理由で俺が捜査を外されたわけっすね」
「そう言うな、行方不明者の居場所がわかればお前の弟が見つかるかもしれねぇ。それにガキのお守りは得意だろ?」
そう言って中原はニヤリと笑う。どこか有無を言わせない圧があり、風見は頷くしかできなかった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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