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ぱんどら ー治外法権の島ー  作者: 星川宙
第四章ー誘拐事件ー
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ep29 独自捜査に行きましょう

 中原は集まった特対部のメンバーを見回した。そして情報源が吹雪からと言うのは伏せ、行方不明事件と能力者関係の連続誘拐事件に関しての説明を行う。

 各々が驚いた様子が見受けられる。ただの家出等だと思われていた行方不明者が実は誘拐されていた。能力者じゃなくても警察官として大問題だ。


「それは大問題っすけど、中原さん未遂を防いだって情報源はどこなんすか?」


 風見が後手を椅子の背もたれに回し、重心を後ろにかけた状態で疑問を口にする。


「またいつもの情報源っすか? あまりにも知りすぎてる気がするんすけど」


 言外にその情報源が関わっているのでは? と風見は疑う。それに対して周りが頷く。

 中原は聞かれると思っていた事を聞かれ、ため息をついた。


「お前らが疑うのはわかる。だが情報源は明かせない。それにこの件には関わっていないと断言出来る」


 強気な態度で中原は断言する。それに対して不満な声も聞かれたが、今まで中原の独自の情報源により早期解決できた事件も少なくない。それに、その情報源がなければ今回の件はまだ表沙汰になっていなかったかもしれない。それをわかっていても不信感を拭えない。中原もそれは理解していた。


「わかったす。とりあえず、まずは誘拐された被害者の行方と犯人の能力の分析が必要っすね。ここで来宮博士が行方不明な事が悔やまれる。能力者の分析であの人以上の天才いないっすから」


 風見はすぐに頭を切り替え、誘拐事件の方に重きを置く。そしてどこか納得していなさそうな奏に声をかけた。


「天宮ちゃんも今は事件解決が第一っしょ? 必要になれば中原さんも情報共有してくれるしきにするだけ時間の無駄っしょ」

「それはわかってるよ、風見君。でも中原さんに疑われない為にわざと失敗前提で情報を流した可能性もあるでしょう」


 奏は情報源が関わっているという可能性を捨てきれていない様子を隠しもしない。それに被害者が能力者だからか普段と比べて事件に対して消息的だ。周りもそれを理解していたが、特に口出しはしない。


「そうっすかねぇ、中原さんから聞いてる話からプロファイリングした事あるっすけどそんな面倒事はやらないと思うっすよ? それよりも月詠の巫女に今回の事件も共有するん?」

「勿論、能力者関連だから共有するわ。それに誘拐事件なんて島の秩序を乱しているもの」


 どこか瞳に仄暗い光を宿しながら奏は答える。それを見て風見は中原を見る。中原は風見の視線に気づいて頷く。


「今回は俺も同行していい? 今回の件、天宮ちゃん冷静に対応できないっしょ」

「……上の指示に従うわ」


 心当たりがあるのか奏はそういうと中原を見る。


「この事件に関わることによってつくよの安全も脅かされる可能性がある。警備も兼ねて風見を連れて行け」


 中原にそう指示され、奏頷く。風見は奏に気づかれない様に息を吐く。


「っで、天宮ちゃん。つくよちゃん達にはいつ話に行く予定?」

「今日は遅いし、緊急で動かないといけないわけじゃないから、明日よ」

「了解! 場所は?」

「月詠神社に月詠の巫女様の控室とは別にもう一つ宮があるの。そこで情報交換するつもりよ」

「なら、明日は俺と一緒に神社に行こうか」


 風見は奏に笑いかけると、真剣に前にあるホワイトボードを見た。そこには行方不明者10名の名前と写真が日付順に貼り付けられている。そして、下には白いバンと認識阻害能力? と書かれている。

 風見はだいたいの状況を頭に入れるとポケットからサングラスを取り出し、オッドアイの瞳を隠す。


「なら、俺ちょっと気になることあるんで調べてくるっすねー」


 軽口でそう言い、部屋から出ていく。周りはいつもの事かと気にせずにそれぞれで現状の情報交換をする。


「はぁー」


 中原は大きなため息をつき、部屋の者達をまとめながら事件に関しての情報共有を続けた。




 ♢♢♢♢




「あれ? 風見さんだ」


 風見は中原が関わった誘拐未遂の現場まで来ると周りを観察していた。すると後ろから声が聞こえてくる。振り返ると見慣れた少女が立っていた。


「翼の方か、どうした?」


 本島にいた時からの顔見知りである九条翼がそこにはいた。ニコニコといつもの笑顔を浮かべながら翼は風見に近づく。


「ん? 怖い顔してるけど何かあった? もしかして(れい)先輩関連?」

「いつも言ってるが、警察が情報漏らすわけないだろう。零……弟は関係ねぇ」

「わぁー元ヤンこわーい」

「思ってないだろ。ってかそのグループを小学生で潰した奴に怖いとか言われたくねぇぞ」


 零という名前に風見は微かに表情を変える。それに気づいた翼は楽しそうに挑発する様に話す。


「挑発しても言わねーぞ。ってかガキはとっととお家に帰りな」

「私がその辺のチンピラにやられると思ってるの? 普通に返り討ちにするけど」


 笑いながらもその目は鋭い。風見は昔を思い出して背筋に冷たい物を感じた。


「それ、弟泣かせたからやめたんじゃなかったのか」

「んー? 人間そう簡単に変わんないよ? それに風見さんのチャラ男のフリよりはましでーす」


 ニコニコと笑いながらも風見の神経を逆撫でするようにいう。風見は口元を引き攣らせながらも翼の頭の上に手のひらを乗せる。


「はぁー、まぁこれは言ってもいいか。今連続誘拐事件が起きてる可能性がある。だからとっとと帰れ」

「誘拐事件?」


 耳馴染みのない言葉に一瞬翼は首を傾げる。


「本当にこの島最近物騒だよね。零君も行方不明になってもう半年だよね。シージャックの時に姿見た気がしたんだけどさ」


 翼の何気ない呟きを聞き、風見は目を見開き、翼の両肩を掴んだ。


「あの時、零がいたのか!?」


 両肩を揺さぶられている翼は余裕のなくなった風見を見て変わらないなぁと笑う。


「先輩だと思ったんだけど、後から思い出すとどんどん自信がなくなってきて……」

「……そうか」


 翼の返事を聞き、風見はあからさまに落胆した。弟ーー風見零はつい半年前に寮をふらっと出て行方不明になった。風見は事件の合間に弟の捜索をしていた。今回の行方不明事件にも関係してるのではとわざやざ現場を探りにきたのだ。


「零君ほんとにどこに行っちゃったんだろうね、おかげで和希先輩の人使いが荒いってなんの」


 風見の様子を見て翼はわざとらしく明るい声を出した。


「明日は土曜日だし、時間あったら私ももう一度零君探してみるね」


 そう笑うと翼は帰るっと歩いていってしまった。


「本島にどこに行っちまったんだ、零……」


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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