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ぱんどら ー治外法権の島ー  作者: 星川宙
第三章ー再会ー
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個室は説得という名の脅しに丁度いいね

 嫌そうな詩織と当夜を無理やり連れて、翼の知り合いが経営してるという個室のあるカフェに移動した。

 そして、各々にメニューを見て注文を終えると静寂が空間を支配する。


「こんな店があったんだな、ずっとこの島に住んでるけど知らなかったよ」


 個室の中を見回しながら瑞稀が感心したようにいう。それを受け翼は笑う。


「ここの店主が隠れ家的なカフェに憧れててさ、店も一軒家みたいな雰囲気で一見様お断り! って感じだから仕方ないと思いますよ」

「あの、強面の店主さんか。九条さんはどうやって知り合ったの?」

「私、双子の弟がいるんだけど、その友達の家族が経営してるからそれ経由で」


 嬉しそうな顔で弟と告げると翼は普段とは違う愛おしそうな笑顔になる。


「へぇ、弟さんがいるんだ。同じ学校?」

「残念ながら違うんだ。私は一緒の学校が良かったんだけど、弟と両親から猛反対されて中学も別で、盆や正月以外会えないんだよね。本当は電話も毎日したいんだけど、着信拒否されちゃってるんですよ。酷くない? でもそこも可愛いところっていうか」


 詩織が兄弟と聞き少し興味深気に聞くと、よくぞ聞いてくれました! というように翼は一息で語る。まだまだ語ろうとする様子に翼違いの4人はブラコンだ……と若干表情が固まる。初めて詩織と当夜の意見も合致した瞬間だった。


 また口を開いて弟語りを始めようとした翼を瑞稀がやんわりと止める。


「素敵な弟さんだね。……それより親睦会もとい、詩織と結城君の険悪解消頑張ろうね会を始めようか」

「……瑞稀、何そのネーミングセンスの悪さ」


 思わず詩織はツッコミを入れる。


「でも、この会の目的としてはわかりやすいからいいと思います」


 純はそう言って隣にいるむくれている当夜を見る。


「とりあえず目標は当夜の月詠さんを見るこの視線の改善ですかね? ってわけで当夜、お前当事者だからな」

「そもそも俺はここにくるのを納得していない!」


 不機嫌なのを隠しもしない当夜の頭を純はパシリと叩く。


「月詠さんは割り切ってくれてるけど、お前が子供のように初対面の時のを根に持って、1人で雰囲気悪くさせてるんだよ。急に仲良くなれとは言わないけど、睨みつけたりと険悪さをだすのをやめろ」

「はぁ? 俺が悪いってのかよ」

「この会を開こうと初対面の若葉先輩となったぐらいに悪い雰囲気にしてたお前が100%悪いだろ! そんな態度じゃなければ、予定通り今日も島の探検に行けたんじゃないのか?」


 呆れたようにいう純に当夜は食ってかかる。


「お前が連れてこなけりゃ、行けてた!!」

「いや、お前ちょっと、山吹さんの立場になってみろよ。後ろから自分の前の人間に険悪な視線を向けてる奴に何時間も挟まれているんだぞ? それがなければ俺達もそこまで大事にはしないからな?」


 呆れながら諭すように純は告げる。翼もそれに追撃するように口を開く。


「あれ、周りを気にしない唯華だからこの程度で済んでるけど、普通の人だったら2人の間に挟まれてたら気になって授業に集中できなかったり、気にして精神にくる可能性もあると思うかな? そのうち席替えもあるだろうし、近くになった時に周りを巻き込まない程度には仲良くしたほうがいいよ。1年間は確実に同じ空間にいる時間が多いんだからさ」


「それは詩織にも言えるからな。関係ないようにそっぽを向くなよ」


 翼の考えに頷きながら、瑞稀は隣に座る詩織に話を振る。


「わかってるけど、そこの彼が態度変えない限り私はどうしようもできないから」


 一方的に睨まれてるのはこっちだよと吐き捨てるように詩織は言う。それもそうだと当夜以外は納得した。とりあえず、当夜の態度をなんとかさせるのが第一目標だ。しかし、詩織のこの態度が緩和されないと、当夜も折れない気がする。どうしたものかと自然と3人は近づき、相談する。

 出会ってまだそんなに経っていないが共通の議題があるからか瑞稀は純と翼とはかなり息があい、昔からの知り合いのように意思疎通ができるようになっていた。


 3人で相談し、当夜は付き合いの長い純が担当し、詩織は付き合いの長い瑞稀と同性の翼が担当することで話がつく。3人はそれぞれ頷くとターゲットへと近づく。


「月詠さん、私もそこまで付き合い長くないんだけど、結城君は単純の単細胞だと思うから、初対面の時に余所者って言ったことと後悔するって言葉の理由を説明するか、謝罪すればそれでとりあえず落ち着くと思うよ?」

「えっ、ちょっと待って九条さん、そんなに結城君あけすけに言っていいの?」

「でも、事実だと思いますよ?」


 開口一番結構当夜に対して毒を吐いた翼に瑞稀は驚く。それに対して不思議そうに何がいけないのかわからないと言う顔をしている翼を見て、あーだから唯華の親友になれたのかと瑞稀は何かを悟った。そして翼は止まらない。かなり当夜の事を辛辣に言う。聞いていた詩織が引き攣るほどには。


「えっと、九条さん……。わかりましたから、仲良くできるかは分かりませんが、話してみますから!」


 思わずと言った様子で叫ぶ詩織にそう? と嬉しそうに笑う翼。自覚がないのかかなりいい性格をしていると詩織と瑞稀は慄いた。


 一方当夜達はと言うと、当夜が一切純の話を聞こうとしなかった為、キレた純に当夜が羽交い締めされていた。


「言い訳して、正当化しようとするな!! 結局はお前がガキだから納得できないって小学生の喧嘩みたいに変な意地張ってるだけだろっ」

「ーーっ、痛い、痛いって純! ギブギブ」


 近くの机を叩きながら当夜は敗北を宣言する。家が道場という事もあり、純は空手の経験者で話が拗れるとよく肉体的指導をされていた事を思い出した。


「俺も悪かったっ! 謝る。きちんと話をするから! 仲良くなれるとは思えないけど、とりあえず睨むのはもうやめるから離してくれ!」


 悲鳴を上げながら謝罪をする。「本当だな?」と純に確認され、涙目で首をコクコクと縦に振る。そしてようやく解放された。


 こうして2人は話し合いとは? と言う純と翼の説得により、とりあえず表向きは険悪になるのをやめることにした。

 同じクラスで今後も同様な事が起こったら怖い。迷惑をかけないようにしよう。2人は別々の理由ではあるが利害が合致した。


 どちらもの説得という脅しに近いやり取りを見てるしかなかった瑞稀は今年の1年怖いと怯えながら、詩織達に同情したのだった。


「……悪かったっ」

「私の方こそ、すみませんでした」


  お互いに考えを改めたというよりは、説得の圧に負けて謝罪を口にしたのだった。そしてこの険悪騒動は終わりを迎え、頼んだメニューを食べ終えるとそれぞれ解散したのだった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は明日、20時に更新予定です。

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