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ep158 最悪なシナリオ

 蒼達は眞琴の待つ机に戻る。すると眞琴はつまらなそうに蒼達を見た。


「結論だけ先に言おう。完全一致とまでは言えないが、紙幣と盆栽の鉢に同じ指紋と思われる物はあった」

「……鉢にあった指紋は何人?」

「推定だが、2人」

「……作成した奴と店員か」


 蒼は、眞琴の答えを聞いて考える。人形に指紋があった。これは面倒なことになったなと蒼は内心で舌打ちする。


「それでさ、ダメ元で確認。データベースと照合して同じ人っていた?」

「残念ながら、犯罪者と能力者どちらも照合したが、いなかった」

「そっか……。となると、やっぱり春宮の指紋が必要だよね」


 蒼は、最悪なシナリオ(成り代わり)の可能性も考える。

 "サーカス"にいる春宮は本人なのか。すでに人形が成り変わってる可能性もある。


 ――カメラの映りに関しても、能力じゃなくて機械によるジャミングだった可能性すらある。


 ノアズ計画と人形を繋げるのは流石に疑すぎな気もする。でも少しでも可能性があるのなら、起こりうる問題はクリアしておきたい。それが蒼の考えだ。


「……とりあえず、隼斗に連絡して春宮の指紋入手を頼もうか」


 蒼と同じ可能性を考えたのか、琉架の表情は固い。

 

「そうだね。お願いしていい?」

「うん。……来宮さん、ここで1件、電話してもいいですか?」

「別にいいぞ」


 眞琴が頷くをの確認すると、琉架は携帯を取り出し蒼達から離れながら電話をかけ始めた。

 その姿を確認して、蒼は眞琴を見た。


 眞琴も蒼と同じだ。

 下手に半端な情報を与えると自分が納得するまで独自で調べる。

 それなら、情報共有をして一緒に調べたほうがいい。

 蒼は少し考えて、すぐに結論を出す。


「まこっさん、とりあえず今わかってる限りの情報を伝えるな? ミサンガ関連で少し話したノアズ計画から」

「ほう、それは面白そうだな」


 机に背中を預けながら、後ろ手をつく。

 そして、蒼は今まで知った内容や推測を必要なところだけ要点をまとめて伝えた。



 ◇◇◇◇



「なるほどな」


 眞琴は静かに話を聞き、頷いた。そして、ニヤリと楽しそうに笑った。


「そりゃ、吹雪が私じゃなく、昔馴染みを使っているわけだな」

「あっ、やっぱり?」

「私も別件で忙しかったからな」

「……吹雪は何を考えてるんでしょうか」


 蒼と眞琴の話に昴が入ってくる。

 蒼は何を言ってるんだと、首を傾げる。


「そんなの、金儲けに決まってるじゃん! もしくは、放置すると面倒になるか。……まぁ、どっちもの可能性も高いけどな」

「ノアズ計画だけでも、厄介な感じだが、禍月組に人と見間違うレベルに精巧な人形に、吹雪に匿われた人形使いの能力者……。春の無差別な能力者暴走計画よりも厄介だな」

「そうなんだよね。……っと、そうだ、まこっさん」


 蒼は指紋採取の結果前に考えていた、能力付与の話を思い出した。

 春宮の指紋はすぐには入手できない。となると、蒼達が次にすべきことは能力付与の能力者への接触だ。


「能力付与の能力者ってまだ連絡取れるか? さっき言ったこと確かめたくてさ」

「取れるが、吹雪に情報を聞いたことにしろ。私の名前は出さない。その条件で教えよう」

「別にいいけど、なんで?」

「……お前に入ってなかったか? 私は研究所から失踪したことになってるんだ。下手に情報が研究所に行くのは困る」


 眞琴が珍しく顔を歪めていた。

 珍しいなと思いながらも、蒼は頷く。


「それは全然、問題ないかな? とりあえず情報の出所知られたくない場合は、嘘でも吹雪の名を出すのはアリだな」

「そうだろう。私も知り合ってからは、そう思っている。相手がわかっているなら遠慮する必要もない。あちらも利用してるんだ。こちらも利用してはいけない道理はない」

「……それは、良心が痛みませんか?」


 話を大人しく聞いていた昴が流石に聞き捨てならなかったようで口を挟む。


「良心? 研究職にそんなものを求めるな」

「ないない! そもそもゆい相手に良心なんて単語使うの間違ってるし!」


 堂々と返す蒼達に昴はどこか顔を引き攣らせる。


「とりあえず、隼斗が動いてくれるみたいだから、報告待つことになったよ。天音も禍月への侵入何故かなくなったらしくて、合流してやるって……って、昴くん、どうしたの?」


 電話を終えた琉架が、3人に近付いてきた。引き攣った表情の昴を見て首を傾げる。


「いえ、常識や普通だと信じていたものが崩れ去っていきまして……」

「うん? あぁ、蒼さんといると今まで信じてたものが破壊されるよね」

「いえ、蒼さんだけでは……」


 勝手に納得している琉架に言いかけて、昴は言葉を止めた。

 今後も琉架と眞琴が繋がる可能性が少ないことに気付いたのだろう。余計な情報で琉架を混乱せないようにしたんだなと、蒼は琉架の言葉が少し腑に落ちないなと思いながらも推測する。


 ――常識や普通は生きてきた価値観で決まる。


 自分のものさしを自分が破壊したような言い方は違うんじゃないかと考えながら、眞琴を見る。

 眞琴は紙に何かをメモして蒼に渡してきた。


「これが、能力付与の持ち主の連絡先と情報だ。上手く使えよ?」

「ありがと、まこっさん! また、共有するな」


 蒼はメモを確認するとそのままポケットへとしまう。

 時間を確認すると昼はだいぶ過ぎていた。

 腹拵えをしてから、次に行くことを提案しようと蒼は琉架へと視線を移した。


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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